必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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41★

41★ 8・葉璃の周りは賑やかです。

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 アキラさん達の身長を測る前に、カルテを確認した看護師さんが葉璃に笑顔を向けた。


「倉田さん、三ヶ月前より三センチも伸びてるよ」
「え、三センチですか?  えぇー……」


 やっぱり、もっと伸びててほしかったらしい葉璃は落胆しながら靴を履いている。

 三ヶ月で三センチも伸びたのなら、看護師さんの笑顔の通り良い事だと思ったんだけどな。


「すごいじゃんハル!」
「ハル君、元々何センチだったんすか?」
「百六十から、百六三ね」
「可愛いー!  ハル君百六十三センチになったのかぁ」


 葉璃の落胆ぶりを見たセナさんが宥めるように頭を撫でてやっているのを横目に、ケイタさんは嬉しそうに身長計に乗った。


「ケイタさんは……百八十、かな」
「変わらずか……」
「百八十センチ……いいなぁケイタさん……」


 セナさんに寄り添う葉璃が呟くと、今度はアキラさんも「じゃ俺も」と言いながら身長計へと乗っている。

 ここはさながら男子校の保健室みたいになっていた。


「アキラさんは……百七十八ね」
「あとニセンチが遠い壁だわ……」
「いいじゃないですか!  百七十八も百八十も見た目ほとんど変わらないですよっ」


 高身長故のアキラさんの呟きに葉璃はムッと下唇を出して怒っていて、それを見たセナさんはとうとう笑いをこらえきれなかった。

 可愛い怒りだと、俺もこっそり思っていた。


「恭也は?  せっかくだし、測ってもらったら?」


 さっきまで視線を合わせてくれなかった葉璃がやっと俺を見てくれて、葉璃がそう言うならと思って立ち上がった。

 ちょっと俺も気になってたから、いい機会だ。


「恭也くんって言うの?  君もすごくかっこいいね~!  ……んーと、百七十五ね」
「あーやっぱ恭也、去年より伸びてるー」
「すみません、ありがとうございました。  ……そう、だっけ?」
「うん。  俺とちょうど十センチ差だったもん」


 どこでそれを知ったのか、ついにほっぺたを膨らませた葉璃に苦笑を返すと、皆の視線がセナさんに集中した。

 この中で一番背の高いセナさんは一体いくつなんだろうと、俺もこっそり気になっている。


「聖南さんも、ぜひ」


 葉璃が皆の気持ちを代弁してセナさんを見上げた事で、大して興味のなさそうに苦笑しながらもショートブーツを脱いで身長計へ上がった。


「セナさんは……百八十六ね。  つま先立ちしてなきゃ届かないわ。 素敵~♡」
「え!?  そんなにあるんですか!」
「ん?  セナ、事務所のプロフィールより伸びてね?」
「ずりぃ~なんで二十歳越えても成長できんの~」


 葉璃は目を瞬かせて驚き、アキラさんは首を傾げ、ケイタさんは「ちぇっ」と唇を尖らせている。

 セナさん百八十六センチもあるのか。 すごいな。


「あ、あざっす。  ……自分の身長がいくつかなんて覚えてねぇよ」
「プロフィール書き直さないとな」
「めんどくせぇからそのままでいい」


 看護師さんの、「テレビで見るよりみんなかっこいいね」とのべた褒めに、アキラさんとケイタさんはしばらく無邪気に対応していた。

 みんなで学生気分を味わった束の間のひと時に、セナさんに密着されてる葉璃もいくらか気が紛れたようだった。

 ……良かった。




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