253 / 541
41★
41★ 8・葉璃の周りは賑やかです。
しおりを挟むアキラさん達の身長を測る前に、カルテを確認した看護師さんが葉璃に笑顔を向けた。
「倉田さん、三ヶ月前より三センチも伸びてるよ」
「え、三センチですか? えぇー……」
やっぱり、もっと伸びててほしかったらしい葉璃は落胆しながら靴を履いている。
三ヶ月で三センチも伸びたのなら、看護師さんの笑顔の通り良い事だと思ったんだけどな。
「すごいじゃんハル!」
「ハル君、元々何センチだったんすか?」
「百六十から、百六三ね」
「可愛いー! ハル君百六十三センチになったのかぁ」
葉璃の落胆ぶりを見たセナさんが宥めるように頭を撫でてやっているのを横目に、ケイタさんは嬉しそうに身長計に乗った。
「ケイタさんは……百八十、かな」
「変わらずか……」
「百八十センチ……いいなぁケイタさん……」
セナさんに寄り添う葉璃が呟くと、今度はアキラさんも「じゃ俺も」と言いながら身長計へと乗っている。
ここはさながら男子校の保健室みたいになっていた。
「アキラさんは……百七十八ね」
「あとニセンチが遠い壁だわ……」
「いいじゃないですか! 百七十八も百八十も見た目ほとんど変わらないですよっ」
高身長故のアキラさんの呟きに葉璃はムッと下唇を出して怒っていて、それを見たセナさんはとうとう笑いをこらえきれなかった。
可愛い怒りだと、俺もこっそり思っていた。
「恭也は? せっかくだし、測ってもらったら?」
さっきまで視線を合わせてくれなかった葉璃がやっと俺を見てくれて、葉璃がそう言うならと思って立ち上がった。
ちょっと俺も気になってたから、いい機会だ。
「恭也くんって言うの? 君もすごくかっこいいね~! ……んーと、百七十五ね」
「あーやっぱ恭也、去年より伸びてるー」
「すみません、ありがとうございました。 ……そう、だっけ?」
「うん。 俺とちょうど十センチ差だったもん」
どこでそれを知ったのか、ついにほっぺたを膨らませた葉璃に苦笑を返すと、皆の視線がセナさんに集中した。
この中で一番背の高いセナさんは一体いくつなんだろうと、俺もこっそり気になっている。
「聖南さんも、ぜひ」
葉璃が皆の気持ちを代弁してセナさんを見上げた事で、大して興味のなさそうに苦笑しながらもショートブーツを脱いで身長計へ上がった。
「セナさんは……百八十六ね。 つま先立ちしてなきゃ届かないわ。 素敵~♡」
「え!? そんなにあるんですか!」
「ん? セナ、事務所のプロフィールより伸びてね?」
「ずりぃ~なんで二十歳越えても成長できんの~」
葉璃は目を瞬かせて驚き、アキラさんは首を傾げ、ケイタさんは「ちぇっ」と唇を尖らせている。
セナさん百八十六センチもあるのか。 すごいな。
「あ、あざっす。 ……自分の身長がいくつかなんて覚えてねぇよ」
「プロフィール書き直さないとな」
「めんどくせぇからそのままでいい」
看護師さんの、「テレビで見るよりみんなかっこいいね」とのべた褒めに、アキラさんとケイタさんはしばらく無邪気に対応していた。
みんなで学生気分を味わった束の間のひと時に、セナさんに密着されてる葉璃もいくらか気が紛れたようだった。
……良かった。
11
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる