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44話 危機一髪
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「なんだ、あの人の形をした闇の魔物は?」
「あれは、憎悪の塊に支配されたタルパの成れの果てさ」
前世の世界では、怨霊と呼ばれているものだ。魂が憎悪、怨恨といったあらゆる負の感情に支配されることで、その根源となる人物を殺しても成仏できす、半永久的に現世を漂い続ける悲惨な幽霊さんだ。
「あれがタルパだと?」
どうやら、ヒライデン伯爵にとって、初めての出会いのようだ。あれが出現したとなると、あそこにいるメンバーだけでは倒せそうにない。
「伯爵、あれを見ても共闘しないと?」
「ふん、知らんな。あんなもの、神官や巫女に任せればいい。私は、自分の目的を果たすまでだ」
同調してわかったけど、伯爵はあの怨霊の正体を知っている。それなら、この事件の真相を知るためにも、ここで怨霊を討伐させるわけにはいかない。
どうやら、攻撃を始めたようだ。あれは、僕の魔術[暴食]と似ている。あ~あ、神官たちは判断に遅れたせいで、奴の餌になってしまったか。
「なら、もう何も言いません。伯爵は、ここで見ていて下さい。僕が、奴と戦います」
「は? お前が?」
僕は窓を開けて、庭へと降り立つ。すると、怨霊がルティナ目掛けて、闇の球を放った。
「配置転換、僕と結界の位置を転換する」
配置転換の隠し機能、それは自分や掌握したもの同士の位置を転換させることが可能というもの。この場合、僕とサンクチュアリだ。魔法範囲内に人がいる場合は、それらも転換対象となる。
そのためギフトを発動させた途端、僕の目の前には、直径50センチほどの闇の球が迫っていた。この敷地に入った時から、不可視の暴食を皮膚に張り付かせて発動させているので、球が膜に触れた途端、暴食に食われ消滅した。僕の力の方が優っているけど、それでも相手はかなり強い部類に入る。
「リョウトさん?」
「リノア、安心しろ。2人は君の後方にいる」
僕の降り立った場所に結界があり、その中にルティナとジェイコブ神官がいる。2人は突然だったこともあり、何が起きたのか理解していない。
「やっと、黒幕の登場か。負の感情に囚われ、自我を完全に無くしたか」
魔力を黒幕のいる場所へ散布し、怨恨の関係で同調に時間を要したけど、あれが何者なのかも分かった。この地に到達するまで、黒幕は心に怨みを募らせながら、ここへ目指し歩いてきたが、怨恨が深いが故に心が耐えきれず、自我を失った。そして、目的地に到達すると、今度は大量のタルパ共を誘引し食していき、時には利用して神官や巫女たちを誘き寄せ、タルパを使い弱らせてから、身体そのものや魔力だけを食していったことで、ここまでの力を身につけたと推測できる。
「あれって、私と同じタルパ?」
この世界に、怨霊という言葉はない。
「一応、タルパに分類されるよ。あいつには、自我を取り戻してもらう必要があるから、奴を覆う漆黒のベールを全て排除しよう。おっと、ここじゃあ色々と問題があるから、それは邸内でやろう」
「そっちの方が問題になるんじゃあ?」
「いいや、これから起こる面倒を一気に引き受けてくれる人が書庫にいるから、そこに運ぶ。暴食!!」
僕は黒い輪っかを奴の真上に出現させ、輪を通し、輪の内側全てに棘を作成させてから、お腹付近でぐっと絞る。棘がお腹まわりに突き刺さる。輪っかには黒い紐が付いており、僕がその先端を持っている。突き刺さった瞬間、暴れようとするが無駄な足掻きだ。
「捕縛完了。悪いようにはしないから、僕についてこい」
奴は僕を視認すると、数えきれないほどの漆黒の槍を宙に出現させ、それらを僕目がけて飛ばしてくる。
「君さ、さっきの見てなかったの?」
僕は、前面に暴食の膜を形成させ、全弾を食い尽くす。
「命令を聞けないのなら、内部を攻撃させてもらおう」
奴の内部には、僕の魔力が混入しているので、内から怨念の根源を砕いていき、ジュースを吸うように、輪っかの棘から力を吸い出し食べていく。う~ん、初めて食べたタルパと比較すると、恨みも深いせいか、ブルーベリージュースを飲んでいるかのような濃厚さを感じる。奴は異変を感じ取ったようで、自我がなくとも力の差に気づいたのか、観念し僕についてくるようになった。
「リノアは、ルティナやジェイコブ先生のところへ行って、マクレミーサをどう扱うか話し合うといい。神官たちの溶かされた瞬間を目の前で目撃したから、戦意も喪失している。下手な抵抗もしないだろう」
「わ、わかった。気をつけて」
僕はルティナにも声をかけておく。
「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう。そいつ、どうするの? 食べるの?」
「恨みに関しては美味しく戴くけど、こいつを成仏させるために、今から邸内に入って、侵入者と話し合ってくる」
「侵入者?」
「そ、こいつはその侵入者の知り合いなんだ。ジェイコブ神官、自己紹介が遅れました。僕はルティナとリノアの保護者で、リョウトと言います。この黒幕に関しては、解決次第説明しますので、それまではマクレミーサを見張っておいてください」
彼はこの事態に追いついていないのか、反応がかなり遅れてやって来る。
「あ…ああ…君が保護者で2人の師匠なのか…あれを押さえつけるなんて…わかった…君を信じよう」
さてと、あとはこの黒幕と、ヒライデン伯爵を引き合わせるだけでいい。怨みを除去すれば、自我を取り戻し、真実を話してくれるだろう。
「あれは、憎悪の塊に支配されたタルパの成れの果てさ」
前世の世界では、怨霊と呼ばれているものだ。魂が憎悪、怨恨といったあらゆる負の感情に支配されることで、その根源となる人物を殺しても成仏できす、半永久的に現世を漂い続ける悲惨な幽霊さんだ。
「あれがタルパだと?」
どうやら、ヒライデン伯爵にとって、初めての出会いのようだ。あれが出現したとなると、あそこにいるメンバーだけでは倒せそうにない。
「伯爵、あれを見ても共闘しないと?」
「ふん、知らんな。あんなもの、神官や巫女に任せればいい。私は、自分の目的を果たすまでだ」
同調してわかったけど、伯爵はあの怨霊の正体を知っている。それなら、この事件の真相を知るためにも、ここで怨霊を討伐させるわけにはいかない。
どうやら、攻撃を始めたようだ。あれは、僕の魔術[暴食]と似ている。あ~あ、神官たちは判断に遅れたせいで、奴の餌になってしまったか。
「なら、もう何も言いません。伯爵は、ここで見ていて下さい。僕が、奴と戦います」
「は? お前が?」
僕は窓を開けて、庭へと降り立つ。すると、怨霊がルティナ目掛けて、闇の球を放った。
「配置転換、僕と結界の位置を転換する」
配置転換の隠し機能、それは自分や掌握したもの同士の位置を転換させることが可能というもの。この場合、僕とサンクチュアリだ。魔法範囲内に人がいる場合は、それらも転換対象となる。
そのためギフトを発動させた途端、僕の目の前には、直径50センチほどの闇の球が迫っていた。この敷地に入った時から、不可視の暴食を皮膚に張り付かせて発動させているので、球が膜に触れた途端、暴食に食われ消滅した。僕の力の方が優っているけど、それでも相手はかなり強い部類に入る。
「リョウトさん?」
「リノア、安心しろ。2人は君の後方にいる」
僕の降り立った場所に結界があり、その中にルティナとジェイコブ神官がいる。2人は突然だったこともあり、何が起きたのか理解していない。
「やっと、黒幕の登場か。負の感情に囚われ、自我を完全に無くしたか」
魔力を黒幕のいる場所へ散布し、怨恨の関係で同調に時間を要したけど、あれが何者なのかも分かった。この地に到達するまで、黒幕は心に怨みを募らせながら、ここへ目指し歩いてきたが、怨恨が深いが故に心が耐えきれず、自我を失った。そして、目的地に到達すると、今度は大量のタルパ共を誘引し食していき、時には利用して神官や巫女たちを誘き寄せ、タルパを使い弱らせてから、身体そのものや魔力だけを食していったことで、ここまでの力を身につけたと推測できる。
「あれって、私と同じタルパ?」
この世界に、怨霊という言葉はない。
「一応、タルパに分類されるよ。あいつには、自我を取り戻してもらう必要があるから、奴を覆う漆黒のベールを全て排除しよう。おっと、ここじゃあ色々と問題があるから、それは邸内でやろう」
「そっちの方が問題になるんじゃあ?」
「いいや、これから起こる面倒を一気に引き受けてくれる人が書庫にいるから、そこに運ぶ。暴食!!」
僕は黒い輪っかを奴の真上に出現させ、輪を通し、輪の内側全てに棘を作成させてから、お腹付近でぐっと絞る。棘がお腹まわりに突き刺さる。輪っかには黒い紐が付いており、僕がその先端を持っている。突き刺さった瞬間、暴れようとするが無駄な足掻きだ。
「捕縛完了。悪いようにはしないから、僕についてこい」
奴は僕を視認すると、数えきれないほどの漆黒の槍を宙に出現させ、それらを僕目がけて飛ばしてくる。
「君さ、さっきの見てなかったの?」
僕は、前面に暴食の膜を形成させ、全弾を食い尽くす。
「命令を聞けないのなら、内部を攻撃させてもらおう」
奴の内部には、僕の魔力が混入しているので、内から怨念の根源を砕いていき、ジュースを吸うように、輪っかの棘から力を吸い出し食べていく。う~ん、初めて食べたタルパと比較すると、恨みも深いせいか、ブルーベリージュースを飲んでいるかのような濃厚さを感じる。奴は異変を感じ取ったようで、自我がなくとも力の差に気づいたのか、観念し僕についてくるようになった。
「リノアは、ルティナやジェイコブ先生のところへ行って、マクレミーサをどう扱うか話し合うといい。神官たちの溶かされた瞬間を目の前で目撃したから、戦意も喪失している。下手な抵抗もしないだろう」
「わ、わかった。気をつけて」
僕はルティナにも声をかけておく。
「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう。そいつ、どうするの? 食べるの?」
「恨みに関しては美味しく戴くけど、こいつを成仏させるために、今から邸内に入って、侵入者と話し合ってくる」
「侵入者?」
「そ、こいつはその侵入者の知り合いなんだ。ジェイコブ神官、自己紹介が遅れました。僕はルティナとリノアの保護者で、リョウトと言います。この黒幕に関しては、解決次第説明しますので、それまではマクレミーサを見張っておいてください」
彼はこの事態に追いついていないのか、反応がかなり遅れてやって来る。
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