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最終章【ハーゴンズパレス−試される7日間】
解決編1 違和感を探せ
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フレヤを殺した犯人は誰だろう?
私、オーキス、リーラ、この3人がフレヤを殺すはずがない。
「推理時間は1時間となっています。映像に関しても、お見せできません」
「え、なんでですか!? 魔導具による映像なのだから、もう一度最初から見せて下さい!」
「ネルマ様、通常時間を戻せません。1度見たあの映像だけで、犯人を推理して下さい」
ルクスさんは、ネルマの猛抗議を即却下する。
彼女の言う通りかもしれないけど、あの情報だけで犯人を特定するのは厳しい。
そういえば、ルクスさんは『犯人を推理してください』と言ったけど、それが合格の有無に関わるのかなんて一言も言っていない。
そうなると、合格の判定基準は何だろうか?
もしかしたら、私達が《どんな討論をするのか》《どういった推論で犯人を見つけ出すのか》、そういった犯人に辿り着くまでのプロセスが合否に関わるのかもしれない。
サスペンスドラマというか昼ドラのようなあの展開、時間が30分と制限されている以上、あの後オトギさんが犯人を突き止めるに違いない。そして、犯人が犯行動機を語り、最後連行されていくところでエンディングとなれば、時間的にもギリギリ間に合うと思う。
尺の観点から推理すると、やはり私・リーラ・オーキスのいずれかかな?
とにかく、今はネルマを宥めて、ゆっくりと2人で推理していこう。
「ネルマ、これは試験なんだよ。試験官に無理を言ってはダメ。私達2人だけで、真犯人を推理しよう。ルクスさん、ペンや紙はありますか?」
ルクスさんは、すぐに筆記用具とノートを用意してくれた。それと同時に飲み物とお菓子をテーブルに置く。私は、自分の知る現在の友人関係と、映像で見た未来の友人関係の情報をノートに書き出す。
フレヤ :
聖女代理
オトギさんと恋人関係であったものの、何者かにより殺される。
私の構造解析でも、犯人はわからない。
未来の私 :
聖女でオーキスの婚約者
オーキスの件で、何かを隠している。
オーキス :
未来の私の婚約者
不貞こそ犯してはいないけど、フレヤを好きになり私との関係で悩むものの、最終的に私を選ぶ。
リーラ :
オーキスの幼馴染み
オーキスがフレヤへの思いを暴露した時、大きく動揺する。
明らかに、何かを隠している。
ドラマとかなら聞き込み調査などで証拠やアリバイを揃えていくのだけど、これだけの情報で推理しても、犯人を言い当てることは困難だ。何処から切り崩していこうか?
「はい、わかりました! 犯人は《オトギさん》だと思います!」
ネルマ、まさかの発言だね。
「その根拠は?」
「昨日の夜、転移事件からフレヤ様誘拐事件のことまでを全て聞きました。オトギさんは、強いです。フレヤ様から認識もされず、殺すことも可能です。そして………彼はカッコイイ! 絶対、他にも女がいます! それを知ったフレヤ様から別れ話を切り出され口論となり、その後頃合いを見計らい何処かで誰にも認識されることなく殺したんです!」
う~ん、一応考えられる要因の1つとなりえるけど、その推理はどうだろう?
「多分、オトギさんは犯人じゃない。未来の私は容疑者となる全ての人達を構造解析しているはず。そんな有力情報があるのなら、オトギさんが真っ先に疑われ葬儀にも出席出来ないと思う」
自分の推理を一蹴されたからか、ネルマも不服顔だ。
「え~、それじゃあシャーロット様は、誰が犯人だと思いますか?」
犯人を絞っていくと《リーラ》になるのかな?
あの映像の動揺さは、普通じゃない。
成長したリーラが、オトギさんに好意を持つ。
でも、フレヤという恋人がいる以上、下手に踏み込めない。
だから、邪魔となる彼女を殺した。
………う~ん、成長したリーラがそんな短絡的な行動をとるかな?
何かを見落としている気がする。
この映像のタイトルの副題が、《悲しき恋の結末》。
・構造解析スキルでも、成果はなし。
・オトギさんの憎しみの籠もった目、オーキスの心からの主張。
・ドア越しによるオーキスの告白
・私とリーラの隠し事
私的な事情を捨てろ。
何の関係もない第三者の意見だけで考えるんだ。
そうなると………
「犯人は………《私》………かもしれない」
「ええ!? 聖女でもあるシャーロット様が、フレヤ様を殺すはずありません!」
普通ならそう考える。
聖女は、【清廉潔白】というイメージが強いからね。
「きちんとした根拠もあるよ。オトギさんの言った考えは、いわば構造解析スキルの抜け道となるね。でもね、このスキル自体に、大きな弱点が1つだけあるの」
「弱点? ガーランド様が与えてくれたユニークスキルですよ?」
昨日の時点で、私のスキルの関してもネルマに説明している。
優秀なスキルだからこそ、気づきにくい盲点もある。
「スキル所持者の私自身が、《嘘》を言えばいいんだよ。私は聖女でこれまでの功績を考慮したら、みんなは普通に信じてしまうでしょ?」
「あ!?」
構造解析の内容を正しく伝えるかは、全て私の判断に委ねられる。
嘘発見器のような魔導具やスキルがあっても、私であればいくらでも回避可能だ。
《私自身が犯人なのか?》
《私が誰かを庇っているのか?》
多分、このどちらかだと思うけど、状況を考えたら、《私が犯人》という説が有力かな?
「多分、私はオーキスのことを本気で好きになっていたんだね。だからこそ、オーキスの異変を感じとり、その理由を構造解析スキルで調査した。過程はわからないけど、フレヤとの話し合いの末、《殺す》という最悪の手段をとってしまう。私が犯人ならば、皆も私の強さを恐れているだろうから、下手に口を挟めない。だからこの3日間、何の進展も得られない」
でも、この推理にも無理があるんだよね。
《フレヤを殺す》という最悪な手段をとる前に、きちんと彼女と話し合えば簡単に解決しそうな気もする。未来における私とフレヤの関係がわからない。今と同じであるのなら、尚更こんな愚かな手段をとらない。
それに…あのオープニングの出現方法、誰がアレを編集したの?
《遺跡の主人》は転生者じゃないけど、何らかの方法で地球の知識を得ている。
でも、私の試験に対して、あんな緊張感を無くすようなタイトルを普通出すかな?
あんなものを入れずにそのまま皆を登場させていけば、私もネルマも緊張感をもって映像を見れただろう。昨日の試験のことを考慮すると、どうも違和感を感じるんだよね。
【この試験、殺人事件を解決させる以外にも、何か裏がある気がする】
○○○
誰が犯人であれば今の状況になりえるのか、私は制限時間をフル活用しネルマと話し合った。その結果…
「ルクスさん、フレヤを殺した犯人は《私》……だと思います」
危ない危ない。
アリバイや証拠が一切ない以上、ここで断定する言い方を言ってはいけない。
「え…その根拠をお伺いしても宜しいでしょうか?」
彼女も、私が《未来の私》を指名すると思わなかったのか、小さく動揺する。
その動揺が何を意味するのか、私としても気になる。
「構造解析スキルで何の情報も得られないのは、極めて不自然です。3日もあれば王都全土の人達を構造解析し、膨大な情報量からフレヤを殺した犯人を見つけ出すことも可能なはずです。それにスキル【簡易神具制作】を利用すれば、容易に犯人を割り出せることも可能。それを実行しないということは………未来の私が嘘をついているとしか思えません」
そう、私には【簡易神人化】と【簡易神具制作】があるのだから、容易に犯人を特定できるはずだ。私の事情を知る者達全員が、何故かそこを主張しない。オトギさんの追求、何か裏がある気がする。
「………お見事、正解です。先入観や偏見を持たず、自分自身を容疑者に入れていたことは好ましいですね」
やった、正解だ!
でも、正直嬉しくない。
どうして、私はそんな愚かな行為に走ったのかな?
「聖女が本当に殺人を犯すなんて………シャーロット様、よく自分を選択出来ましたね」
「ネルマ、聖女だって人間だよ。どうしてこんな最低な行為に走ったのかは、私にもわからない。何らかのすれ違いがあって、フレヤを殺したんだと思う」
まあ、1番冷静でいられた理由は、《サスペンスドラマのようなタイトル出現》と《昼ドラ》のような展開であったため、現実感があの映像を見ても全然湧かなかったことだけど。
「それでは、映像を再開させます。これで、全ての謎が解けますよ。(さっきのタイトル、あの方から何も聞いていないわ。この後の映像で、何か起こる気がする)」
映像を見て以降、ルクスさんの様子が少しおかしい。
解決編の映像に何か隠されているのかな?
私、オーキス、リーラ、この3人がフレヤを殺すはずがない。
「推理時間は1時間となっています。映像に関しても、お見せできません」
「え、なんでですか!? 魔導具による映像なのだから、もう一度最初から見せて下さい!」
「ネルマ様、通常時間を戻せません。1度見たあの映像だけで、犯人を推理して下さい」
ルクスさんは、ネルマの猛抗議を即却下する。
彼女の言う通りかもしれないけど、あの情報だけで犯人を特定するのは厳しい。
そういえば、ルクスさんは『犯人を推理してください』と言ったけど、それが合格の有無に関わるのかなんて一言も言っていない。
そうなると、合格の判定基準は何だろうか?
もしかしたら、私達が《どんな討論をするのか》《どういった推論で犯人を見つけ出すのか》、そういった犯人に辿り着くまでのプロセスが合否に関わるのかもしれない。
サスペンスドラマというか昼ドラのようなあの展開、時間が30分と制限されている以上、あの後オトギさんが犯人を突き止めるに違いない。そして、犯人が犯行動機を語り、最後連行されていくところでエンディングとなれば、時間的にもギリギリ間に合うと思う。
尺の観点から推理すると、やはり私・リーラ・オーキスのいずれかかな?
とにかく、今はネルマを宥めて、ゆっくりと2人で推理していこう。
「ネルマ、これは試験なんだよ。試験官に無理を言ってはダメ。私達2人だけで、真犯人を推理しよう。ルクスさん、ペンや紙はありますか?」
ルクスさんは、すぐに筆記用具とノートを用意してくれた。それと同時に飲み物とお菓子をテーブルに置く。私は、自分の知る現在の友人関係と、映像で見た未来の友人関係の情報をノートに書き出す。
フレヤ :
聖女代理
オトギさんと恋人関係であったものの、何者かにより殺される。
私の構造解析でも、犯人はわからない。
未来の私 :
聖女でオーキスの婚約者
オーキスの件で、何かを隠している。
オーキス :
未来の私の婚約者
不貞こそ犯してはいないけど、フレヤを好きになり私との関係で悩むものの、最終的に私を選ぶ。
リーラ :
オーキスの幼馴染み
オーキスがフレヤへの思いを暴露した時、大きく動揺する。
明らかに、何かを隠している。
ドラマとかなら聞き込み調査などで証拠やアリバイを揃えていくのだけど、これだけの情報で推理しても、犯人を言い当てることは困難だ。何処から切り崩していこうか?
「はい、わかりました! 犯人は《オトギさん》だと思います!」
ネルマ、まさかの発言だね。
「その根拠は?」
「昨日の夜、転移事件からフレヤ様誘拐事件のことまでを全て聞きました。オトギさんは、強いです。フレヤ様から認識もされず、殺すことも可能です。そして………彼はカッコイイ! 絶対、他にも女がいます! それを知ったフレヤ様から別れ話を切り出され口論となり、その後頃合いを見計らい何処かで誰にも認識されることなく殺したんです!」
う~ん、一応考えられる要因の1つとなりえるけど、その推理はどうだろう?
「多分、オトギさんは犯人じゃない。未来の私は容疑者となる全ての人達を構造解析しているはず。そんな有力情報があるのなら、オトギさんが真っ先に疑われ葬儀にも出席出来ないと思う」
自分の推理を一蹴されたからか、ネルマも不服顔だ。
「え~、それじゃあシャーロット様は、誰が犯人だと思いますか?」
犯人を絞っていくと《リーラ》になるのかな?
あの映像の動揺さは、普通じゃない。
成長したリーラが、オトギさんに好意を持つ。
でも、フレヤという恋人がいる以上、下手に踏み込めない。
だから、邪魔となる彼女を殺した。
………う~ん、成長したリーラがそんな短絡的な行動をとるかな?
何かを見落としている気がする。
この映像のタイトルの副題が、《悲しき恋の結末》。
・構造解析スキルでも、成果はなし。
・オトギさんの憎しみの籠もった目、オーキスの心からの主張。
・ドア越しによるオーキスの告白
・私とリーラの隠し事
私的な事情を捨てろ。
何の関係もない第三者の意見だけで考えるんだ。
そうなると………
「犯人は………《私》………かもしれない」
「ええ!? 聖女でもあるシャーロット様が、フレヤ様を殺すはずありません!」
普通ならそう考える。
聖女は、【清廉潔白】というイメージが強いからね。
「きちんとした根拠もあるよ。オトギさんの言った考えは、いわば構造解析スキルの抜け道となるね。でもね、このスキル自体に、大きな弱点が1つだけあるの」
「弱点? ガーランド様が与えてくれたユニークスキルですよ?」
昨日の時点で、私のスキルの関してもネルマに説明している。
優秀なスキルだからこそ、気づきにくい盲点もある。
「スキル所持者の私自身が、《嘘》を言えばいいんだよ。私は聖女でこれまでの功績を考慮したら、みんなは普通に信じてしまうでしょ?」
「あ!?」
構造解析の内容を正しく伝えるかは、全て私の判断に委ねられる。
嘘発見器のような魔導具やスキルがあっても、私であればいくらでも回避可能だ。
《私自身が犯人なのか?》
《私が誰かを庇っているのか?》
多分、このどちらかだと思うけど、状況を考えたら、《私が犯人》という説が有力かな?
「多分、私はオーキスのことを本気で好きになっていたんだね。だからこそ、オーキスの異変を感じとり、その理由を構造解析スキルで調査した。過程はわからないけど、フレヤとの話し合いの末、《殺す》という最悪の手段をとってしまう。私が犯人ならば、皆も私の強さを恐れているだろうから、下手に口を挟めない。だからこの3日間、何の進展も得られない」
でも、この推理にも無理があるんだよね。
《フレヤを殺す》という最悪な手段をとる前に、きちんと彼女と話し合えば簡単に解決しそうな気もする。未来における私とフレヤの関係がわからない。今と同じであるのなら、尚更こんな愚かな手段をとらない。
それに…あのオープニングの出現方法、誰がアレを編集したの?
《遺跡の主人》は転生者じゃないけど、何らかの方法で地球の知識を得ている。
でも、私の試験に対して、あんな緊張感を無くすようなタイトルを普通出すかな?
あんなものを入れずにそのまま皆を登場させていけば、私もネルマも緊張感をもって映像を見れただろう。昨日の試験のことを考慮すると、どうも違和感を感じるんだよね。
【この試験、殺人事件を解決させる以外にも、何か裏がある気がする】
○○○
誰が犯人であれば今の状況になりえるのか、私は制限時間をフル活用しネルマと話し合った。その結果…
「ルクスさん、フレヤを殺した犯人は《私》……だと思います」
危ない危ない。
アリバイや証拠が一切ない以上、ここで断定する言い方を言ってはいけない。
「え…その根拠をお伺いしても宜しいでしょうか?」
彼女も、私が《未来の私》を指名すると思わなかったのか、小さく動揺する。
その動揺が何を意味するのか、私としても気になる。
「構造解析スキルで何の情報も得られないのは、極めて不自然です。3日もあれば王都全土の人達を構造解析し、膨大な情報量からフレヤを殺した犯人を見つけ出すことも可能なはずです。それにスキル【簡易神具制作】を利用すれば、容易に犯人を割り出せることも可能。それを実行しないということは………未来の私が嘘をついているとしか思えません」
そう、私には【簡易神人化】と【簡易神具制作】があるのだから、容易に犯人を特定できるはずだ。私の事情を知る者達全員が、何故かそこを主張しない。オトギさんの追求、何か裏がある気がする。
「………お見事、正解です。先入観や偏見を持たず、自分自身を容疑者に入れていたことは好ましいですね」
やった、正解だ!
でも、正直嬉しくない。
どうして、私はそんな愚かな行為に走ったのかな?
「聖女が本当に殺人を犯すなんて………シャーロット様、よく自分を選択出来ましたね」
「ネルマ、聖女だって人間だよ。どうしてこんな最低な行為に走ったのかは、私にもわからない。何らかのすれ違いがあって、フレヤを殺したんだと思う」
まあ、1番冷静でいられた理由は、《サスペンスドラマのようなタイトル出現》と《昼ドラ》のような展開であったため、現実感があの映像を見ても全然湧かなかったことだけど。
「それでは、映像を再開させます。これで、全ての謎が解けますよ。(さっきのタイトル、あの方から何も聞いていないわ。この後の映像で、何か起こる気がする)」
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