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しおりを挟むそれから望まないうちに勝手にライバルにされてしまった私は、頻繁ではないけどブランディス様や殿下、その他側近候補の上級貴族の方たちと言葉を交わすようになりランチも時々ご一緒することになってしまった。
当然、周りのご令嬢の方々は面白くないわけで……。
教科書を破かれたり、私物を捨てられていたりと嫌がらせされるようになってしまった。寮の部屋にも入られて何もかもめちゃくちゃにされたりもした。
寮の部屋は鍵がかけられるようになっている。鍵が壊された形跡はないからスペアキーを使って入ったことになる。スペアキーは管理人が持っているから管理人に確認したら「知りません。貴女の自作自演なのでは?」と言われて愕然とした。
おそらく犯人は上級貴族の方なのだろう。管理人を買収して鍵を受け取り部屋へ入った。そうとしか考えられない。
悔しいけど私は犯人を捜すことも弁償してもらうことも出来ない。泣き寝入りするしかないのだ。
「くっそ~! これ全部買いなおしたら一体いくらかかると思ってんのよ!! うちはただでさえ貧乏で無駄な出費は抑えたいのに!」
めちゃくちゃにされた部屋を掃除しながら悔しくて泣いてしまった。これも全部ブランディス様がライバル宣言なんてするから周りのご令嬢の反感を買ってしまった。
ランチだって本当は行きたくない。別にあの方達と仲良くなりたいなんて思ってない。だけど誘われたら貴族の底辺である男爵家の私には断るなんてことは出来ない。それなのに……。
次の試験はもうすぐそこ。ここでブランディス様が1位になればライバルになんてならないと放ってくれるかもしれない。そうなればもう私はあの方達と言葉を交わすことも、ランチをご一緒することもしなくてよくなる。
私は別に1位を取り続ける必要なんてない。上位の成績を収めていれば就職には有利なはずだから。
うん、そうしよう。次の試験は8割ほどの力を出せばいい。そしてブランディス様に1位になっていただこう。
もうこんな目に遭うのは辛すぎるもの。
そして次の試験は決めた通り8割ほどの力で提出した。
後日その結果を張り出された掲示板に確認に行けば。
私は5位だった。1位はもちろんブランディス様。
その結果を見てほっとした。これでもう関わらなくてよくなる。嫌がらせもされなくなる。そう考えていた。
「べティーナ・アルタマン!!」
大きな声で私の名前を呼ぶ声がした。声の方へ顔を向けると怒った顔のブランディス様が。
え? なんで? なんで怒ってるの!? 1位に返り咲いたのになんで!?
私の目の前まで来るとバン! と壁に手を当てて睨みつけてきた。これって噂に聞く「壁ドン」てやつですか!?
「どういうことですか? なんですかあの成績は! あれが貴女の実力ですか!!」
ひぃっ! こ、怖い!! なんでそんなに怒ってるの!?
「…まさか貴女、わざと手を抜いたんじゃないでしょうね」
そう言われてびくっと体が震えてしまった。冷えた声が、私の心に突き刺さる。
「……なんてことを」
そっとブランディス様を窺うと俯きフルフルと震えていた。と思った瞬間ガバッと顔を上げて、バン! と私の真横の壁を殴ってきた。
あまりのことにびくっと震えあがるしか出来ない。体は恐怖でカタカタと震えている。怖すぎるっ!
「貴女は……貴女は私を侮辱する気ですか!? こんなことをされて私が喜ぶとでも!? なぜ手を抜いたりしたんだ!? 貴女は私を嘗めすぎだ!」
「あ…ごめ……な、さ…」
あまりの恐怖と申し訳なさと不甲斐なさで思わず涙がぽろっとこぼれてしまった。
「あ……」
私が泣いたことでびっくりしたのか、ブランディス様の手が壁から離れた瞬間私はまた逃げ出した。
そのまま学園の奥にある庭園へと来てしまった。はぁはぁと息を整えるも、あふれる涙が止まらなくて嗚咽がもれてうまく息が吸えない。
『貴女は……貴女は私を侮辱する気ですか!? こんなことをされて私が喜ぶとでも!? なぜ手を抜いたりしたんだ!? 貴女は私を嘗めすぎだ!』
そんなつもりじゃなかった。1位になったら喜んでくれると思った。そしたらもうライバル視されなくて済むんじゃないかって思ってた。
だけど……。
それは間違いだったんだ。私が手を抜いたことで侮辱されたと思わせてしまった。正々堂々と戦わなかったことで怒らせてしまった。あんなに感情を昂らせて怒鳴るなんて思わなかった。
「ごめん、なさい……ごめ…なさ……」
その言葉を伝える人はいないけど、私の口はその言葉しか出てこなかった。
やがて私の気持ちを表すかのように雨が降り出した。濡れることも構わず私はそのままそこで泣いていた。雨に打たれていれば私の涙もわからなくなるから。
いつまでそうしていたのかわからないけど、ここにずっといてもしょうがない。重い足を引きずって寮へ戻ると、入り口に名前も知らないご令嬢が5人待ち受けていた。
「あら、やっとお戻りなのね。ずいぶんずぶ濡れでお似合いだわ」
「ブランディス様に怒鳴られていたのを見た時、いい気味と思いましたわ。貴女が近づいて良い相手ではありませんのよ。これでご自分のお立場がお分かりかしら?」
「男爵家風情がいい気になるとこうなるのよ。勉強になってよかったわね」
本当にね、くすくすっと笑いながら彼女たちは去っていった。
わかってるわよ、そんなこと。私が近づいてはいけない人なんだってことくらい。
でも私から近づいたわけじゃないのにどうすればいいのよ!? だったら逆に教えてよ!
部屋に戻ってからも悔しくて悲しくて濡れた体をそのままに、床にうずくまり泣いていた。泣きつかれた私はいつの間にか眠ってしまったようだった。
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