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勉強が始まってから5年。僕は10歳になった。ライリーは8歳。

ライリーも5歳の時に魔力量を測ったんだけど、そんなに多くなかった。でも僕と違って運動が得意。お父さんとよく剣の稽古をしてる。僕とは真逆だ。

ライリーは見た目がお父さんに似てる。髪色はお父さんと同じ茶色で、目はお母さんと同じ紫色。お婆ちゃまは「こんなにも上手く産み分けられるなんて不思議だね。」って言ってた。


僕は魔法の訓練も始めた。魔法って面白くってどんどん覚えていった。12歳になったら冒険者になれるからその時は一緒に行こうって言ってくれた。

お母さんは僕たちが大きくなったからって言って、仕事に復帰した。といってもたまにだけど。その時は僕たちはギルドマスターの奥さんのケリーさんに預けられてる。たくさんの宿題と一緒に。


「よし、今日の訓練はここまでにしよう。うん、アシェルはやっぱり飲み込みが早いな。ライリーもどんどん成長してるし、お前達は自慢の子供達だよ。」

お父さんもお母さんも、いつも僕たちを褒めてくれる。だからもっと上手になりたくて2人して頑張ってるんだ。


「そういえば、明日でしたね。旦那様方がいらっしゃるのは。」

「そう。またたっくさん子供達の服やらなんやら持ってくるぞ。もういっぱいありすぎて使いきれないって言ってるのに。」

「相変わらずですね、お2人は。」

明日お爺ちゃまとお婆ちゃまが来る。すごく久しぶりだ。
お爺ちゃま達は隣の国、クリステン王国って所に住んでるからたまにしか会えない。お爺ちゃま達の所に行かないの?って聞いたら行けないんだって言ってた。なんでかは教えてくれなかったけど。

「そうだ。アシェル、ライリー。明日は伯父さんと伯母さん、それにカイルもローレンスも来るぞ。」

「え!本当に!?」

うわぁ!ランドルフ伯父様達にも会えるんだ!楽しみ!

「カイル兄上とローレンス兄上、また僕たちと遊んでくれるかな。」

「大丈夫だよ、ライリー!また4人で一緒に遊ぼ!」

僕達はカイル兄上もローレンス兄上も大好きだ。すごく久しぶりだから本当に嬉しい!





「アシェル!ライリー!久しぶりだな!お爺ちゃまだよー!」

「「お爺ちゃま、お婆ちゃまお久しぶりです!」」

「おや、ちゃんとご挨拶できるようになったんだね。2人とも偉い偉い!」

「「伯父様と伯母様、カイル兄上とローレンス兄上もお久しぶりです!」」

「ああ、久しぶりだな2人とも。元気にしてたか?」

カイル兄上もローレンス兄上もすごく背が高くなってる!
カイル兄上は僕の3つ上の13歳。ローレンス兄上は1つ上の11歳。

「アシェル、ライリー久しぶりだね!会えて嬉しいよ。」

お爺ちゃま達は皆貴族だ。それも公爵家。貴族の中で1番上の貴族。でもお母さんは平民になった。
なんで平民になったのかは詳しく教えてくれなかったけど、昔悪いことしたから罰を受けたんだって。だからクリステン王国に行けないし、皆となかなか会えないからごめんねって謝ってた。

お母さんが悪いことしてたなんて想像つかないけど、お爺ちゃま達はお母さんのこと大好きみたいだから僕は別に気にしてない。


「ライアス叔父さん!また剣の稽古をつけてください!」

「あ、ずるい!俺も!」

カイル兄上もローレンス兄上も、お父さんと剣の稽古をしたがる。お父さん、めちゃくちゃ強いから2人ともお父さんに鍛えてもらいたいんだ。

「わかりました。明日にでもやりましょうか。アシェルとライリーも一緒にな。」

明日は剣の稽古になっちゃった。僕苦手だからな…。カッコ悪い所見せちゃう…。

「どうしたのアシェル?」 

「僕…剣が苦手で…。というか運動が苦手なので、カッコ悪いところ見せちゃうなって…。」

「そんな事気にしてたの?大丈夫だよ。それにアシェルは魔法が得意なんでしょ?…そうですよね、エレン叔母さん。」

「そうだよ。アシェルは凄いんだ。俺なんかより魔法の才能がある。このままいけば、冒険者になってもSランクまでいっちゃうかもな。」

「……カイル、アシェルとカイリーと久しぶりに会うのだから4人で向こうでお茶でも飲んでお話して来なさい。」

「はい、母上。…じゃあ行こうか。」

それから僕たちは4人で簡単なお茶会をした。カイル兄上達がどんな勉強をしているのか、とか今好きな事は何か、とか教えてもらった。久しぶりに会ったから話が止まらなかった。




* * * * * *

~ライアス視点~

「エレン、アシェルの事で話がある。」

旦那様が真面目な顔をしてエレンに声をかける。子供達を遠ざけたのは何かあるかと思ったがアシェルの事だったか。

大人達で応接間へと移動する。普段使う事はあまりないが、こういう時は何かと助かる。

「子供達を遠ざけたのはそれが理由ですか、父上。」

「…アシェルは貴族学園へ入れた方が良さそうだ。あの魔力量と魔法の才能を聞くにあたり、その方が良いだろうと思ってな。」

「リッヒハイム王国の貴族学園、ですよね。平民でも入学が可能な事は知っていますが、その場合後ろ盾となる貴族が必要です。僕達は貴族との関わりは一切ありません。父上達は国が違いますから難しいでしょうし、僕との関係もありますし…。」

貴族学園。エレンも昔はクリステン王国の貴族学園に通っていた。そこであの殿下と男爵令息の一件があったからいい思い出はないが。

エレンは普段砕けた口調と、一人称は『俺』だが、旦那様方には転生者である事を明かしていない。こんな風に話すエレンも久々だ。懐かしさが込み上げる。

「まあ、お前との関係は表面上だけのことだがな。だが我がフィンバー家が後ろ盾になるのは、あまり良くないだろう。」

「そこでね、旦那様の友人がこの国の侯爵家の当主なんだよ。」

「え、父上この国にご友人がいらっしゃったんですか?」

それは俺も初耳だ。

「ああ。実は私が学園に通っていた時の友人でな。アレクシス・メリフィールド侯爵。珍しくクリステン王国へ留学へ来ていたんだ。」

「それはまた、なぜ?」

「クリステン王国の貴族との縁を結ぶ為。メリフィールド家は魔道具の発明、販売も行なっている。その販路を広げるためにわざわざ留学に来たと言うわけだ。」

なるほど。…もしかしたら、以前エレンが攫われそうになった時に使われた魔道具も、そこのメリフィールド家の魔道具だったかもな。

「そこで、アレクシスにアシェルの事を相談してみたんだ。そしたら後ろ盾になる事を約束してくれてな。だからアシェルが貴族学園に入る事は可能だ。」

「カイルはクリステン王国の貴族学園に入ることになるが、ローレンスはこちらのリッヒハイム王国の貴族学園に入ることになる。」

「え!? 兄上、本当ですか!?」

「ローレンスはいずれ当主となるカイルの補佐となる。その時に隣国での繋がりがあると何かと便利だからな。ローレンスもその事は承知しているし、アシェルを助けると自ら言っている。」

「アシェルはこれから、より目立つ存在になるだろう。見た目もそうだが、何より魔法の才能がある。平民でいると、何かと問題に巻き込まれる可能性も高い。だが、貴族の後ろ盾があれば対処は可能だ。」

「…確かに僕たちだけではアシェルを守れるかわかりません。今はなんの権力もない平民ですから。…父上、兄上、ありがとうございます。」

俺とエレンは揃って頭を下げた。あとはアシェルの気持ち一つだが、おそらく魔法をもっと勉強できる場だと知れば行きたいと言うだろう。危険だといって、アシェルの可能性を潰したくない。

旦那様方のお気持ちをありがたく受け取ろう。
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