下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
32 / 87
調べ物とペンダント

.

しおりを挟む
一日じゃ無理だよと言いながら、床に座って手元にある本からパラパラとめくっていく。

「雪翔、捲れる本は除外です……あ、雪翔は捲れるんでした……」

「どこまで見たやつなの?」

「この一角です。那智が片付けてくれなかったので私が今から片付けます。四郎、持てる分ずつ雪翔の前に出してください」

「はい。坊ちゃん、前に置いていきますから違ったら避けてください。また私が戻しますから」

「うん、分かった」

四郎が前に出してくれたのから見ていくが、普通の古い本にしか見えず、ポイポイと横に避けていくと、「ちゃんと見てくださいよ?」と冬弥に言われてしまう。

「だって……全部一緒に見えるんだもん」

「坊ちゃん……触った時に嫌な感じがしたり、ピリピリするものを選ぶと良いかと……」

「そっか!そうしてみるね」

紫狐は違うと言った本をせっせと棚に整理し始め、四郎も負担にならない程度に渡してくれる。

何の位作業していたのか、時折水を飲みながら分けていたが、汗が止まらずにタオルで拭きながら見ていったが、すべて見終わり目的のものはないと首を振る。

「やはり浮遊城でしょうか?」

「あっちにはもっとあるんでしょ?」

「ここの何十倍といった感じですねぇ。一月はかかると思いますよ?まだ整理してませんから」

「えー!そんなの無理だよー」

「ちょっと休憩がてら戻ります?」

「うん、お腹もすいたし……」

そう言って奥の整理されている方を見ると、首筋がザワっとしたのでつい手を当ててしまう。

「どうしました?」

「今、ザワって……」

「どの辺ですか?」

奥を指さすと、あっちは骨董品しかないと言われたが、一応見たいと言って連れて行ってもらい、並べてある箱のうち一つの小さな箱に手を伸ばす。

「これ……」

「それ、何でしたかねぇ?開けてみますからちょっと待ってください」

冬弥が箱を開けると、中には小さなロケットのペンダントが入っていて、かなり古いものだとわかる。

「たしか壊れてますよ?開かないんです……」

「触ってもいい?」

どうぞと言われて手に取り、開く部分を指で押すと、パカッと蓋が開いて、中には小さな紙が入っていた。

「これだ……」

「まさか本ではないとは参りましたねぇ」

「えっと、本は壺の中って書いてあるけど」

「他には?」

「数字が書いてある。三だって。後はペンダントが鍵って書いてあるけど何のことだろう?」

「今手に持っていてどんな感じですか?」

「特に何も無いよ?普通のペンダントみたい」

「一応箱に入れておきましょうか。それよりも壺でそれと同じくらいの年代のもの……この箱に入ってますけど……」

冬弥が木の蓋を開けてくれ、少し倒してくれたので手を入れると、指先になにか当たったので、それを引っ張り出す。

「小冊子みたい」

「中はどうです?」

「古い文字みたいだけど、『破』『滅』『修』とか沢山書いてある。ここでは……イテッ」

また首がチクチクっとしたので冬弥に見てもらうと、二本目の筋ができており、当たりですねと言われ、それも箱にしまおうということになり、そのままみんなでリビングに戻る。

「遅い!」

戻ってすぐに那智に言われたが、ちゃんと見つけたことを伝えると、何故か頭を撫で撫でと撫でられる。

「心配しましたよ?お爺さんなんて熊みたいにウロウロしててもう邪魔で邪魔で……それより、お昼もすぎてますから交代でお風呂に入ってきなさいな」

「じゃあ、私は二階のお風呂を使いますから雪翔は下のお風呂でちゃんと洗ってくださいね。四郎は雪翔の後に入ってください」

「でも二階のお風呂は狭いよ?」

「構いませんよ」

冬弥が二階へお風呂に行ったので、シャワーでいいかと服を脱いで丁寧に洗ってから出て、四郎と交代する。

「いい匂いがする!」

キッチンでは栞がご飯を作ってくれており、四郎が出てくる頃にはできると言われたので椅子に座って待っていると、みんなから見つけたものを見せてくれと言われ、箱に入れに行った紫狐に持ってきてと頼んで影から出してもらう。

「今度は本とペンダント?」

「それが鍵なんだって」

「鍵ですか?」と三郎も不思議そうに見ていて、改めて本を開くとやはり近くにいた人にしか見えないようで、本を閉じるといくつか頭の中に本の内容が流れ込んでくる。
しおりを挟む

処理中です...