下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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調べ物とペンダント

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「痛っ……」

「おい、首元見せろ」

那智に見せると二本の線に増えており、周りが赤く腫れていて、刺青を彫った後のようになっていると言われ、「その例えがわからないけど、チクチクとして熱い」

「冷やしたらどうでしょう?」と三郎が言うと、すぐさま周太郎がタオルを濡らして持ってきて、首に当ててくれる。

「ありがとう、周太郎さん」

「とんでもないです。それより、もっと冷やした方がいいのであれば、氷を使いますが」

「いいよこれで。でも、お腹はすいた」

「もう出来るからね」

紫狐も椅子に座り、四人で遅いお昼ご飯を食べる。
キノコのグラタンと、パンにスープ。
他のみんなも同じご飯だったようで、スープが足りなくて作っていたらしい。

「温まるね」

「そうですねぇ。夜はどうしましょう?」

「材料見たらお肉もあったしこの人数なので、お鍋にしようかなと思ってるんですけど」

「良いですねぇ。私の分も取っておいてください。下宿はたまにはビーフシチューでいいですかねぇ?」

祖母が下宿の方も手伝うと言ったので、三郎たちにも手伝いに行って貰い、家の方はゆっくりしてろと言われたので、部屋で航平にテスト勉強を見てもらい、キリのいいところまでしてから、散歩に行きたいと祖父に声をかける。

「危ないじゃろう?」

「檪もいるし、誰かに付いてきてもらうから!」

「じゃがのぅ、冬弥も下宿じゃし、家も守らねばならんしのぅ」

「叔父上、俺が見てますから、雪翔と行ってあげてください。ほら、航平もついてってちゃんと守れよ!」

「もう、分かってるって!口うるさくなったなぁ」

「それなら周太郎、お主が一緒に付いてきなさい。三郎と四郎は分かれて下宿と家を頼む」

そのまま久しぶりに公園の方まで向かい、涼しくなったなぁと思いながら、色が変わり始めた銀杏並木を見る。

「なかなかに見事じゃの」

「あと一月もしたら金色だよ!すっごく綺麗なんだ。お婆ちゃんにも見せたいなぁ」

「落ち着いたらまたみんなで来たら良いではないか」

「だってこの時期が一番綺麗なんだもん。金色の絨毯みたいなんだよ?僕、初めて見た時感動しちゃって、違う日に写真撮ろうと思ってきたんだけど、前の日とはまた全然違う感じだったから撮らなかったんだ」

「そうじゃのぅ、今は交代でしか来れんから、次は婆さんじゃな。侑弥にはまだ散歩は早いと栞さんが言うておったから、来年じゃのぅ」

「桜並木は反対側にあるよ?広いからお花見する人もいるし、出店も出るんだ。なんで秋は出店でないのかなぁ?」

「祭りくらいだろ?出店って」

「うん、春祭りがあるから、それにあわせて出てるって聞いたけど、秋彪さんのお社はまだなのかな?」

「そう言えばわんぱく坊主が姿を見せんな」

「冬弥さんが、それぞれの季節に祭りがあるって言ってたよ?そろそろなのかもね。行けるかな?」

「儂等が居る間ならばなんとか行けるようにもできるが、帰ってからはやはり心配じゃし……」
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