美人の流儀【R18】

RiTa

文字の大きさ
上 下
14 / 16

14

しおりを挟む
「貴方が華に持っていた怒りはね、嫉妬って言うの」
「藍が華に嫉妬なんてする訳ないじゃんw!」
ゆっくり話すハナさんと、唾を飛ばしながら叫ぶ藍
美しい方を判断するには簡単過ぎる

「醜い者ってどうして美しい者を嫌うんだろうね。藍ちゃん」
「は?知る訳ねーしっ!きっと美人は性格悪いからでしょw」
「ふふっ美しい人を非難する人って、そう言うよね…その人の方が性格悪いからそう言ってるのに気付いてないの」
「は?意味分かんねー事言ってんじゃねーよ!早く離せ!」

ハナさんが言っているのは正論だ
それを藍は認めない
認めたら自分が勝てないから

美人でもなくて性格も悪いなんて救いようがない
それを藍は分かっているから認められないんだ

正直、そんな奴ばっかだ
だから藍に異論を言えないんだ
藍の気持ちが分かるから


「美しいから、多少悪口を言われるくらい我慢しろって思ってるの?
美しくても、そうじゃなくても悪口は悪口なのに…」
「うるさいうるさいうるさい!早く解放してよ!藍は何も悪い事してないんだからっ!」

「みんな勘違いしてるみたいだけど、嫉妬をしてる人は負けではないの」
「え?」

嫉妬は明らかに負けの感情だと思っていた敦も驚いた

「その気持ちを自分に向けて努力したら、もっと納得のいく自分になれるチャンスなのに
多くの人は人のせいにして相手に負の感情をぶつけるんだよね。
それで勝った気になってるの。自分は何も変わってないのに…ううん。以前より醜い表情になっている事にも気づいてない」

最もだ。他人を蹴落として順位が変わる事もあるかもしれないが、自分自身は何も成長していないのだから

「1度でも嫉妬の感情を人に向けてしまうとね、醜くなっていくだけなのに、変えられないみたい
楽だから…」

ハナさんは遠くを見るようにそう言った

「何なの?おばさん。娘がバスケ部辞めて狂っちゃってんじゃん!付き合ってらんない!早く解放してよっ!」
「藍!」
「ふふっ。そうかもね。いっぱい話し過ぎちゃった」


ハナさんはどうしたいんだろう
藍が華にした事を認めて謝罪させたいのかと思っていた
でもそうしない事を知っているようだ
それでも腹を立てる訳でもなくて

「じゃ…ここから本題ね」
「は?藍が悪くないんだから離せよっ!」
「藍が喋るから進まないんだろ」
「敦!なんなの?助けてよ!藍悪くないって分かったでしょ!」
「おまえは悪いよ。華を追い詰めたのは、おまえだって、オレでも分かるし
オレが華にフラれたのだって気に入らなかったんだろ…それがあったから、自分が彼女になれたのに、勘違いしてんだよ…多分」
「はぁ?敦が華にフラれ無かったら藍と付き合ってないって事っ?あり得なくない?」
「どう考えてもそうだろ。って言うか、それが分かってたから、華を気に入らなかったんじゃないのか?」

「申し訳ないけど…本題に入らせてもらって良いかな?」
「あ!すみません。つい…」
「敦!後で見てろよっ!今の言葉絶対後悔させてやるから!」
「ふふっ後があると良いけど…」
「え?」
「は?」

ハナさんはしゃがんで藍と目線を合わせた

「華はね、一生貴方の気持ちが分からないの。
だって、貴方の気持ちって嫉妬でしかないから
嫉妬って、持ってる者は持てない感情なの。
持てない者しか知らない感情。」
「は?何言ってんの?ww」
「華はおまえの欲しい物を沢山持ってるんだろ。だから嫉妬なんて気持ち分からないんだよ
おまえは欲しくて欲しくて欲しくて華を追い詰めたんだよ。嫉妬以外の何物でもない」
「藍の方がいっぱい持ってるに決まってんじゃん!彼氏も友達もいるんだから!嫉妬してるのは華の方じゃね?」
「力ずくで作った偽物ばっかだろ。華はそんなモン欲しくねーんだよ。だから助けを求めて断られても、相手を責めるような事しなかったんだ…」

言って敦は泣いていた。どんなに辛かったんだろう
そして華の心の強さが、あまりにも眩しく思えた

「敦くん、ありがとう。
それで、華はね、藍ちゃんに辛い思いさせたいとも思っていないの」
「!」

嘘だろ?自分を追い込んだ奴を恨んでもいないのか?

「藍ちゃんには全く分からないでしょ?だって人を傷つけないと生きていけないんだもの。心が醜い貴方には、美し過ぎる華の心は一生分からない」

藍は華に敵うはずないんだ
見た目だけじゃなく、心だけでも圧倒的に敵わない

「じゃ…なんで……」

「だから貴方にはね、私の気持ちなら分かってもらえるかもしれないと思って………」

真っ直ぐ藍を見て微笑んだハナさんは美しかった
怖いはずなのに、そこには母親の愛情が見えたからかもしれない






でもきっとこの先は恐ろしい事が待ってる気がして、敦は固唾を飲んでゆっくり一歩後退った









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

RoomNunmber「000」

誠奈
ミステリー
ある日突然届いた一通のメール。 そこには、報酬を与える代わりに、ある人物を誘拐するよう書かれていて…… 丁度金に困っていた翔真は、訝しみつつも依頼を受け入れ、幼馴染の智樹を誘い、実行に移す……が、そこである事件に巻き込まれてしまう。 二人は密室となった部屋から出ることは出来るのだろうか? ※この作品は、以前別サイトにて公開していた物を、作者名及び、登場人物の名称等加筆修正を加えた上で公開しております。 ※BL要素かなり薄いですが、匂わせ程度にはありますのでご注意を。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

おもらしの想い出

吉野のりこ
大衆娯楽
高校生にもなって、おもらし、そんな想い出の連続です。

処理中です...