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しおりを挟むハナさんは敦に向き直り
敦はビクッと大きく驚いた後、動きを止めた
「敦くん、藍ちゃんをママにしてあげてくれないかな?」
「え………?」
「勝手な事言ってんなよっ!まだJKなんだからムリに決まってんだろ!」
藍が叫び暴れている
でも向き合ったハナさんと敦には全く影響は無かった
ハナさんは藍を完全にスルーしている
「藍ちゃんの彼氏でしょ?藍ちゃんも敦くんを大好きなんだから、きっと良いママになると思うの」
「いや…でも…」
ムリだ絶対ムリだ
だって別れる気でいるし、こんな女と子どもを作ったらそれこそ…
「ふふっごめんね。これは命令じゃなくて提案だから、敦くんの本心を教えて?
間違っても、強要するつもりはないの」
敦の焦った表情に気付いたのか、ハナさんはいつもよりゆっくり話してくれた
でも恐怖は治らない
「すみません…もう藍とは別れるつもりです」
「そっか…残念」
ハナさんは本当に残念そうに俯いて再び藍に向き合った
敦はやっと大きく呼吸を吐く
「藍ちゃん残念だったね。私は藍ちゃんが喜ぶと思って敦くんに頼んだんだけど…フラれちゃったみたい」
「はぁ?別れる?藍こんなんなってるのに、助けもしねーで!こっちから別れてやるわっ!」
藍のプライドはどこまで高いのか…
結果敦は救われた
「藍ちゃん、華の次で納得いかなかったのに、ババアの華ママにも抜かされて…結局敦くんの何番手なの?」
「うるさい!うるさい!うるさい!」
「それで良く華と張り合えてると思えたね?その思い込みはどこから来るの?」
「黙れっ!黙れーっ!」
「あ!思い込みたくて、現実を圧力で捻じ曲げたのか…」
「うるさいっ!勝手な事言ってんなっ!全然違うからっ!」
ハナさんの目的はコレだったのか
藍に現実を突きつけて、心を折るまでやる気なのかも知れない
「それじゃ…藍ちゃんをママにしてあげて」
「!」
ハナさんは、火傷の男性の方に向き迷いなく言い放つた
男は一度頷いてゆっくり藍へと向かう
嘘だろ?それはやり過ぎじゃ…
「止めろっ!来るなっ!絶対ムリだからぁぁっ!」
藍が泣き叫び始めた
「ほとんど地下だから、聞こえないよ?
あ!それと、彼はババアよりJKを選ぶおっさんだから、藍ちゃんが選ばれるべき人でもあるの。そのくらい配慮してあげないとね。藍ちゃんが良いって言う人となら、嫉妬もないし、多少は気分が良いでしょう?」
「止めろっ!来るなぁぁっ!」
「JKも残り僅かなんだから、期間限定のブランド使っちゃったら良いじゃない?だってJKじゃ無くなったら、藍ちゃんもっと厳しくなると思うの」
「ハナ…さん…」
「え?」
思わず言っていた
どうしてもハナさんを止めたい
これはもう犯罪だ
振り返ったハナさんの目は見た事無い程強い力を放ってる
これが子供を傷つけられた母親の姿なんだ
「敦くん。警察に行っても良いよ?そうすれば、動画をネットに流す罪悪感も無くなるから…ふふふっ」
ネットに動画が流れれば
ハナさんが逮捕されたとしても
藍のダメージは最大になる
もう立ち直れないかもしれない
もうムリなのか…
ベルトを外しかけている火傷の男は何を考えているんだろう
ハナさんの言いなりで…
もしかしたら、逮捕されるとしても、この男が罪を被るつもりなのでは…?
「あ!ちょっと待って!」
ハナさんのその一言で止まった
流石にそうだよな…
敦は息をするのを忘れていたようで、やっと大きく酸素を吸い込む事が出来た
「敦くん…そっか。」
「え?」
「流石にコレは藍ちゃんが可哀想だよね…」
「…はい…と思います。それに…ハナさんにそれ以上……」
「ふふっ…醜くなって欲しくない?」
敦は真っ直ぐハナさんを見て
「はい」
「じゃ、やっぱり敦くんがママにしてあげようか?」
「!!!」
「敦、お願い!そうしよう!今までの事謝るしっ!藍、敦が良い!お願いっ!」
藍が泣いて懇願している
この男にやられるくらいなら、敦の方がもちろん良いに決まってる
「敦くん?これも命令じゃないからね?敦くんの気持ちを教えてくれれば良いの」
「………」
「敦ぃ……」
藍を助ける?
藍が鼻を啜る音だけの時間が流れていく
「敦くん?」
「藍……ごめん。ムリだ」
「いやぁぁぁぁっ!」
子供を作るなんて責任取れない
藍は可哀想だけど、自業自得でもあるんだ
別れを決めた敦が巻き添えを食う筋合いはない
泣き叫ぶ藍の目の前で
「あーあ…藍ちゃん可哀想。
私はね?敦くんが『はい』って言ってくれる事を願ってたの
藍ちゃんの味方なのに……こんなに後押ししてあげてるのに……上手く行かないなんてよっぽど魅力無いんじゃない?」
「うわぁぁぁぁ!やめてぇぇぇ!もう意地悪しないから!華にも謝るからっ!」
「そんな安い謝罪いらないの
華は貴方と会いたくないし
華には敵わないって自覚して細々と生きれば良いじゃない
高く見積もり過ぎた魅力がどんなものか分かればそれで良いの」
「……た」
「え?」
「分か……た…」
ダメだ…藍
そんな納得してないままの返事じゃ…
ここまで来ても素直に謝れないのか
未だ華には敵わないって分からないのか
そんなに華を認められないのは、どうしてなんだ
「ふふっ…藍ちゃんって本当に残念ね。後はよろしく」
敦の予感は当たった、ハナさんは火傷の男に藍を任せたのだ
これ程までに現実を突きつけられているのに、認められないなんて
華はきっと藍から相当の圧力を受けたはずだ
だってそうしないと敵うはずがないのだから
火傷の男はベルトを外し、ズボンに手をかける
この部屋の住人らしく、薄暗い雰囲気だ
今度は火傷の女までもが藍を押さえようと近づいていた
「敦くんは見てる?それとも隣でお茶でもどうかな?」
「いやぁぁぁぁっ!待ってぇ!誤解なのぉぉぉ!」
「お茶を……いただきます」
「敦ぃぃぃっ!」
敦も見限った藍の悲鳴を背中に、ハナさんに着いてダイニングへと戻った
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