21 / 45
20話 騎士団団長の令息②
しおりを挟む
「試合、開始!」ピーッ
「最初から畳み掛けるぞ、俺はライ様相手に攻撃する、お前はノアディア様に攻撃を放て!・・・相手は無敵のノアディア様だ。油断するなよ!」
「ああ、分かってるさ!」
少年漫画みたいな掛け合いをしている対戦相手は、最初から本気でかかってくるみたいだ。お互い話しかけることで合図を送っている。いいな、青春だな。
「作戦を敵に教えるだなんて迂拙ですね。もう一度赤子から学び直して来なさい。」
そう言って俺の方に向かって攻撃しようとした剣士から先に、刃のない試合用の剣で二人を気絶させる。
ノアディアは相手にアドバイスをするという余裕を見せて第一試合は勝利を勝ち取り、俺はそれを眺めて夕食は何を作ろうかと放心状態になる。
というか先生かよお前は。
────当たり前のように決勝戦には俺とノアディアのチーム、グローリオとゼリファーのチームが進出した。
残念なことだが、同学年の第二王子は本日早退しており参加していない。彼は結構な実力者なんだがな。いつも手を抜いて適度な順位になるように負けている。
因みに男性陣とは別に行われている女性陣の決勝戦は、ヒロインvs悪役令嬢となっていた。二人のペアの子はそこまで強くはないが、補助魔法を上手く応用して連携を取っている。
猛者が多い中勝ち進むだなんて流石乙女ゲームの主人公だな。いや、いつも努力している賜物だな。少しだけ見直した。
なお、俺はほぼ何も魔法を繰り出せずに決勝まで進んでしまっていた。
というのも、先述した通り俺に放たれる魔法や攻撃は、全てノアディアの洗礼された動きによって制圧されてしまうからだ。手を出す隙も見せない。
しょうがないので後半になってからはサポートに徹することにした。
と言っても強化魔法を掛けるくらいしかやることはないのだが。何もしないよりはまだマシだろう。
「流石にあの二人相手に俺が応戦しないのは無理があるんじゃないのか?」
「問題ありませんよ。任せて下さい。ライは何もせずそこにいて下さいね。」
「いや、強がるなって。」
「いえ、危ないので後方で支援をお願いしますね。」
「いや、それじゃカッコ悪いじゃないか。」
「ええ、ライは可愛いので格好良くはありませんよ。」
「は!?あのなあ・・・」
「試合、開始!」ピーッ
練習場にホイッスルの音が鳴り響く。
押し問答をしていると、いつの間にか試合が始まってしまった。
試合が開始されて最初に動いたのはグローリオだった。氷系の攻撃魔法を仕掛けようと、遠方から詠唱を行おうとする。流石、俺の弱点を熟知しているな。
だが、それを察知したのかいつの間にかグローリオの前に移動し、魔法を相殺するノアディア。
その隙に俺へ突進して、競技用の刃のない剣を掲げるゼリファー。
グローリオの場所へいたはずのノアディアは急に一足地面を蹴ってこちら側まで瞬時に戻ってきたと思ったら、彼の剣を軽々と薙ぎ払う。
ゼリファーは剣を落としかけたが、鍛えられた腕はそこまでやわではない。何とか持ち堪えた様だ。筋肉すごいな。
ゼリファーに注視していて気付くのが遅れたが、グローリオが広範囲魔法を打ち出そうとしていた。
ノアディアは一瞬迷ったが、その魔法を止める素振りは見せなかった。
いつもならどんな魔法でも発動する前に止めるのに、何かあったのだろうかと不審に思う。
───バタバタバタバタバタッ
・・・うわっ、何だこれ!?蛾!?
グローリオが繰り出した魔法は幻覚魔法だったらしく、大量の蛾が足元から這い出てきた。
趣味悪っ、ていうか俺、蛾だけは無理なんだって!
アイツそれ分かってこの魔法使ってきたな!最悪だ。
ヒイッ。と小さな悲鳴をあげ、俺はついノアディアにしがみついてしまった。
「っ!?」
途端、声にならない声をあげられた。
結構腕に力を込めてしまっていたので、痛かったのだろうか。パッ。っと離れる。
「あ、ごめん。蛾が苦手でさ。」
「い、いえ、攻撃魔法ではなかったので問題ないと様子見してしまい────」
ノアディアが驚きながら弁明していると、二人はチャンスだと言わんばかりに攻撃を仕掛けてきた。
油断しているのだと思ったのだろう、二人共息を合わせてこちら側に突撃してきた。
だがしかし、俺を咄嗟にお姫様抱っこしつつも軽く躱すノアディア。
「おい、俊敏すぎないか、あと絶対に離すなよ。」
顔面蒼白になりながら念押しをし、落ちないように身を寄せる。
床には大量の蛾が蠢いている。本物ソックリ過ぎて我慢の限界だ。早く決着を着けてくれと願うばかりだ。
「はい・・・!」
頬を紅潮させて嬉しそうに返事をされた。それよりも、このままでは魔法の一つも使わずに優勝してしまうのではなかろうか。それはまずい。
「身体強「ライ、静かに。唇を噛んでしまいますよ。」
そう言いながら俺の魔法の邪魔をし、二人の攻撃を避けて目にもとまらぬ速さで足蹴りを二度程炸裂させた。
避ける暇もなく二人は気絶し、倒れてしまったみたいだ。
圧勝だ・・・
────圧勝だが反則負けだぞコノヤロウ!
この試合は手合わせ用の剣と魔法だけを駆使して戦わなければならないというルールがある。
肉弾戦がメインの試合ではないのだ。
ピーッ。
「終了、反則行為により勝者、ベイス・グローリオ、ウィリー・ゼリファー。」
驚き声が飛び交う。他の参加者は吃驚仰天してしまっていた。
やっぱり負けになるのか、ノアディアは敗北したというのに何だか楽しそうだった。解せぬ。
「最初から畳み掛けるぞ、俺はライ様相手に攻撃する、お前はノアディア様に攻撃を放て!・・・相手は無敵のノアディア様だ。油断するなよ!」
「ああ、分かってるさ!」
少年漫画みたいな掛け合いをしている対戦相手は、最初から本気でかかってくるみたいだ。お互い話しかけることで合図を送っている。いいな、青春だな。
「作戦を敵に教えるだなんて迂拙ですね。もう一度赤子から学び直して来なさい。」
そう言って俺の方に向かって攻撃しようとした剣士から先に、刃のない試合用の剣で二人を気絶させる。
ノアディアは相手にアドバイスをするという余裕を見せて第一試合は勝利を勝ち取り、俺はそれを眺めて夕食は何を作ろうかと放心状態になる。
というか先生かよお前は。
────当たり前のように決勝戦には俺とノアディアのチーム、グローリオとゼリファーのチームが進出した。
残念なことだが、同学年の第二王子は本日早退しており参加していない。彼は結構な実力者なんだがな。いつも手を抜いて適度な順位になるように負けている。
因みに男性陣とは別に行われている女性陣の決勝戦は、ヒロインvs悪役令嬢となっていた。二人のペアの子はそこまで強くはないが、補助魔法を上手く応用して連携を取っている。
猛者が多い中勝ち進むだなんて流石乙女ゲームの主人公だな。いや、いつも努力している賜物だな。少しだけ見直した。
なお、俺はほぼ何も魔法を繰り出せずに決勝まで進んでしまっていた。
というのも、先述した通り俺に放たれる魔法や攻撃は、全てノアディアの洗礼された動きによって制圧されてしまうからだ。手を出す隙も見せない。
しょうがないので後半になってからはサポートに徹することにした。
と言っても強化魔法を掛けるくらいしかやることはないのだが。何もしないよりはまだマシだろう。
「流石にあの二人相手に俺が応戦しないのは無理があるんじゃないのか?」
「問題ありませんよ。任せて下さい。ライは何もせずそこにいて下さいね。」
「いや、強がるなって。」
「いえ、危ないので後方で支援をお願いしますね。」
「いや、それじゃカッコ悪いじゃないか。」
「ええ、ライは可愛いので格好良くはありませんよ。」
「は!?あのなあ・・・」
「試合、開始!」ピーッ
練習場にホイッスルの音が鳴り響く。
押し問答をしていると、いつの間にか試合が始まってしまった。
試合が開始されて最初に動いたのはグローリオだった。氷系の攻撃魔法を仕掛けようと、遠方から詠唱を行おうとする。流石、俺の弱点を熟知しているな。
だが、それを察知したのかいつの間にかグローリオの前に移動し、魔法を相殺するノアディア。
その隙に俺へ突進して、競技用の刃のない剣を掲げるゼリファー。
グローリオの場所へいたはずのノアディアは急に一足地面を蹴ってこちら側まで瞬時に戻ってきたと思ったら、彼の剣を軽々と薙ぎ払う。
ゼリファーは剣を落としかけたが、鍛えられた腕はそこまでやわではない。何とか持ち堪えた様だ。筋肉すごいな。
ゼリファーに注視していて気付くのが遅れたが、グローリオが広範囲魔法を打ち出そうとしていた。
ノアディアは一瞬迷ったが、その魔法を止める素振りは見せなかった。
いつもならどんな魔法でも発動する前に止めるのに、何かあったのだろうかと不審に思う。
───バタバタバタバタバタッ
・・・うわっ、何だこれ!?蛾!?
グローリオが繰り出した魔法は幻覚魔法だったらしく、大量の蛾が足元から這い出てきた。
趣味悪っ、ていうか俺、蛾だけは無理なんだって!
アイツそれ分かってこの魔法使ってきたな!最悪だ。
ヒイッ。と小さな悲鳴をあげ、俺はついノアディアにしがみついてしまった。
「っ!?」
途端、声にならない声をあげられた。
結構腕に力を込めてしまっていたので、痛かったのだろうか。パッ。っと離れる。
「あ、ごめん。蛾が苦手でさ。」
「い、いえ、攻撃魔法ではなかったので問題ないと様子見してしまい────」
ノアディアが驚きながら弁明していると、二人はチャンスだと言わんばかりに攻撃を仕掛けてきた。
油断しているのだと思ったのだろう、二人共息を合わせてこちら側に突撃してきた。
だがしかし、俺を咄嗟にお姫様抱っこしつつも軽く躱すノアディア。
「おい、俊敏すぎないか、あと絶対に離すなよ。」
顔面蒼白になりながら念押しをし、落ちないように身を寄せる。
床には大量の蛾が蠢いている。本物ソックリ過ぎて我慢の限界だ。早く決着を着けてくれと願うばかりだ。
「はい・・・!」
頬を紅潮させて嬉しそうに返事をされた。それよりも、このままでは魔法の一つも使わずに優勝してしまうのではなかろうか。それはまずい。
「身体強「ライ、静かに。唇を噛んでしまいますよ。」
そう言いながら俺の魔法の邪魔をし、二人の攻撃を避けて目にもとまらぬ速さで足蹴りを二度程炸裂させた。
避ける暇もなく二人は気絶し、倒れてしまったみたいだ。
圧勝だ・・・
────圧勝だが反則負けだぞコノヤロウ!
この試合は手合わせ用の剣と魔法だけを駆使して戦わなければならないというルールがある。
肉弾戦がメインの試合ではないのだ。
ピーッ。
「終了、反則行為により勝者、ベイス・グローリオ、ウィリー・ゼリファー。」
驚き声が飛び交う。他の参加者は吃驚仰天してしまっていた。
やっぱり負けになるのか、ノアディアは敗北したというのに何だか楽しそうだった。解せぬ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,041
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる