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二話 死出の旅路
しおりを挟むわたしの名は朱鷺と申します。
わたしの一族の女は奇妙な性質で、毒を解し毒に抗うものに変えるなにか、薬業とでも申しましょうか……それが体のなかに流れております。
この体質をおおやけにすれば、わざわいを招くと代々言い聞かされており、わたしもそうして育ちました。
ひとつの地に留まらず、歩き巫女を生業とし旅を続けております。
どこぞの里に怪我人があれば、傷を洗い浄め口に酒を含み唾液とともに吹きつけ、手あてをし、形ばかりの祈祷をあげ、あらかた治れば長居いはせず、また旅を続け――
歩き巫女とあらばご存じでしょう、時には、卑しい――
おばや大姉さまは躊躇いなく「それ」をしていたように思います。奇妙な体質とともに、我が身にも淫蕩の血が流れているのやもしれぬと思うと、おぞけを震い厭悪します。
わたしは未通女ではありますが、一族の女たちと共に旅する中で心得を受けてはおりました。「それ」のときに痛みを覚えぬよう……言いにくうございます。ご勘弁くださいまし。
旅の一座を離れ、おぞましい「それ」と血を忌み、命を絶つすべを探し野山を彷徨い歩いておりましたところ、平らにひらけた水の匂いのする辺りへ辿り着きました。
贄にもならぬこのからだを、いきものたちの餌にするのもよいかと思い佇んでおりますと、折よく獣の唸りが聞こえました。
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