【完結】貴方のために涙は流しません

ユユ

文字の大きさ
上 下
39 / 72

処遇

しおりを挟む
専属メイドのローリーが当面の荷物を持って来た。

「アリス様っ」

「泣かないで。後はゆっくり直していくから」

「分かりました」

「みんな健康?」

「はい」

「スーザンをよろしくね。引き続き お菓子を習いに通うのよ」

「はい。ご安心ください。
寝巻き、下着をお持ちしました。こちらにしまいますね」

「ありがとう」



1週間、様々なお見舞いがあった。

平日 スーザンは毎日。時々リオネル殿下を連れて経過確認に。
マチアス様は外国語を教えてくれた。
リヴウェルさんは自然学と生物学を教えてくれた。
日中はシルビア様や団長、ジェイド様やエリアーナお姉様がいらしたり。

シルヴェストル様は毎日来てくれて、分からないところは無いかと聞いてくれる。
休日は入れ違いだったり、入り浸ったりと、やや溜まり場みたいになっていた。

王妃様まで来てくださった。 
濃厚な溜まり場に苦笑いなさっていた。
だってバンフィールド公爵までいたから。


ノッティング侯爵夫妻とブレイル様は事件翌日に謝罪をしに来てくれた。

そして今日は屋敷に戻る日。
完治まで居ればいいと言われたけど、迷惑だろうから。それに治りがかなり早いらしい。

荷物を纏めていると陛下とノッティング侯爵がいらした。話があるからとソファに座らされた。

陛「君に会いたいとベルココス公爵が希望している。屋敷には令嬢2人が対応することになるから行くなと命じた。だから今この場でベルココス公爵が謝罪をする時間をもらいたい。呼んでも構わないか?」

私「はい」

合図をすると騎士が公爵を部屋に入れた。

公「ベルココス公爵家 当主、ロドニーと申します。
この度は娘のイリアナが一方的に暴力を振るい大怪我をさせてしまいました。申し訳ございません」

私「嫌われているのは薄々分かっておりました。
ですが席が近いというだけで接点が無かったのに何故でしょう」

公「ジオニトロ嬢をライバル視していたようで……逆恨みです」

私「そうですか」

公爵は怪我の確認をしたがったので医師を呼んで包帯を外して見せた。陛下もノッティング侯爵もベルココス公爵も腫れた濃い紫の耳を見て息を呑んだ。
額の傷も見せた。
耳だけではなく、髪をかき分ければ頭皮にも革鞄の側面の跡が痣として残っているがそこまではしなかった。

医「怪我を負った当初は左耳の聴力はほぼ失われていました。現在は奇跡的に戻っております」

公「一度しっかりと娘には注意をしたのです。当主代理のジオニトロ嬢の方が単なる公爵家の三女より格上に値すると。婚姻後もジオニトロ嬢が格上なのだから弁えろと。なのにこんな酷いことを……。
何とお詫びをすればいいのか」

私「ご令嬢は?」

公「屋敷で拘束して閉じ込めています。
ジオニトロ嬢のお気持ちを汲み入れた処罰でないとなりませんので」

私「何故私などがライバルなどと?
クラスも別れましたし、自制ができるのならば厳重注意でよろしいかと。ブレイル様の婚約者でもありますし」

侯「息子との婚約は解消した。
特に理由もなく感情のままに暴力を振るった。しかも物を使ってだ。これが二度と起こらない保証はない。明確な原因があれば…いや、それでもいきなりの暴力はまずい」

私「私には決められません。
ご令嬢には心のお医者様に診せてはいかがでしょう。私や公爵様にも分からない悩みを抱えていたのかもしれません」

公「分かりました。お慈悲に感謝いたします」

陛「一先ずこれでよいな?
後はとにかく療養だ。無理はしないように。
シルヴェストルが煩くて敵わん」

私「シルヴェストル殿下は面倒見の良い素敵な方ですわ」

陛「そうなのか?」

私「はい。デビュータントでは婚約者が別の令嬢をエスコートしてしまい、ひとりぼっちになったときに手を差し伸べてくださいました。ダンスも勉強も教えてくださいます。今回も毎日、勉強で分からないことはないか、不自由していないか、欲しい物はないかと聞いてくださいます。
シルヴェストル殿下と友人になれたことに感謝をしております」

陛「そうか。あの手紙は酷かったからな。婚約者とはその後どうだ」

私「お手紙のご希望を叶えて差し上げております」

陛「だが、いつか婚姻しなくてはならない日がやってくるだろう」

私「今の時点でも充分破棄の理由がありますから、後はいつにするかだけですわ。
それにはジオニトロ家の立て直しが必要ですから、卒業までに何とかいたします」

陛「スーザン嬢の教育もこのまま続けて欲しい」

私「スーザンはもう問題ございません。姉として見守ります」




屋敷に移ると遠慮なくみんながお見舞いに来てくれた。その中で、ベルココス公爵から手紙が届いた。
イリアナ様は国内で一番と言われる精神科医のいる保養所に入所になった。
場所は南の外れにある、いわゆる田舎だ。

そのため、学園から去った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】恨んではいませんけど、助ける義理もありませんので

白草まる
恋愛
ユーディトはヒュベルトゥスに負い目があるため、最低限の扱いを受けようとも文句が言えない。 婚約しているのに満たされない関係であり、幸せな未来が待っているとは思えない関係。 我慢を続けたユーディトだが、ある日、ヒュベルトゥスが他の女性と親密そうな場面に出くわしてしまい、しかもその場でヒュベルトゥスから婚約破棄されてしまう。 詳しい事情を知らない人たちにとってはユーディトの親に非がある婚約破棄のため、悪者扱いされるのはユーディトのほうだった。

(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?

青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。 エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・ エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・ ※異世界、ゆるふわ設定。

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語── ※ご感想・ご意見につきましては、近況ボードをご覧いただければ幸いです。 《皆様のご愛読、誠に感謝致しますm(*_ _)m》

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」

ゆる
恋愛
平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる 婚約者を平民との恋のために捨てた王子が見た、輝く未来。 それは、自分を裏切ったはずの侯爵令嬢の背中だった――。 グランシェル侯爵令嬢マイラは、次期国王の弟であるラウル王子の婚約者。 将来を約束された華やかな日々が待っている――はずだった。 しかしある日、ラウルは「愛する平民の女性」と結婚するため、婚約破棄を一方的に宣言する。 婚約破棄の衝撃、社交界での嘲笑、周囲からの冷たい視線……。 一時は心が折れそうになったマイラだが、父である侯爵や信頼できる仲間たちとともに、自らの人生を切り拓いていく決意をする。 一方、ラウルは平民女性リリアとの恋を選ぶものの、周囲からの反発や王家からの追放に直面。 「息苦しい」と捨てた婚約者が、王都で輝かしい成功を収めていく様子を知り、彼が抱えるのは後悔と挫折だった。

処理中です...