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桃恋のスタート?

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1年生の最終日に怪我を負ったため、2年生の始まりは通えなかった。

「お姉様、シャルロット・ベルビューが動き出しましたわ」

「どんな感じ?誰が引っ掛かった?」

「それが、お姉様が懸念していた方々は全員引っかかっていません。お姉様の元婚約者も引っ掛かった感じはありません」

「まだじゃないけど」

シャルロットは ベルビュー男爵家に引き取られたばかりでとても貴族達の前に出せなかったため、成人の儀の後にベルビュー男爵家の籍に入った。そうすれば王宮主催の貴族向けの成人の儀に参加することを回避できる。後は平民達と同じように教会で祝福を受けるだけ。

彼女の母は男爵領の元娼婦。男爵に気に入られて領地で囲っていた。だがその内飽きて家には訪れなくなったが住まいと手当は維持していた。娘がいたからだ。そしてデビュータントの2ヶ月前に愛人が死んだためにシャルロットを引き取った。

これが[桃恋]の設定。

「シャルロットは同じクラスのオルデンに馴々しく接しているようですが、オルデンは無視しているそうです」

「え?オルデンが無視をしているの!?」

「はい。腕に絡みつくと“放せ”と言うそうです」

「そう」

これから好きになるのかしら。

「どうも、リヴウェル様やブレイル様にも昼休みや登下校時に接触を試みていたみたいですが、流石に学園内で無視するわけにはいかずに要件を聞くと“お友達になりたい”“昼食を一緒に”“お忍びで街に”などといった内容だったため、都度断っていたそうです」

「知らなかったわ」

「学年が変わるとリオネル様やシルヴェストル殿下にも接触するようになりました。
すごいのですよ。食堂で座って食べ始めると私に席を譲れと言うのです。“リオネル様ぁ~シャルロットもご一緒したいですぅ~”と身体をくねらせます。…アレ、何かの病気ですか?」

「ふふっ」

「席を譲らないと“私が元平民だから差別しているのですね”って言い出して、そんなこと知るわけないじゃないですか。
マチアス公子が“迷惑だから向こうに行け”と言うと“酷い!”と涙を浮かべてリオネル様の顔ばかり見ているのです。
リオネル様が“このままじゃ昼休みが終わるから空いてる席を探した方がいいんじゃないか”と言うと渋々立ち去りました」

「大変だったわね」

「今日は何処かの令嬢達に裏庭に呼び出されて注意されていたようです。それを私が命じたのだと言い出したのです」

「それでどうしたの?」

「証拠が無いことを指摘されると泣き出したので、ブレイル様が“本当に虐めがあったのなら担任や学園長に相談すべきことだ。子供のような振る舞いをしないでくれ”と言って追い払いました」

「スーザン。近寄っては駄目よ。誰かに頼んでも駄目」

「分かっていますわ」

「明日から私も登校を再開するわ」

[桃恋]の逆ハーのメンバーは誰一人シャルロットに引っ掛かってないのね。どうしてだろう。
できればオルデンだけでも恋に落ちてもらわないと。あいつから婚約破棄してもらった方が楽なのに。



イリアナに革鞄で殴られて ほとんど聞こえなかった片側の耳は、6週間休んでだいぶ聞こえるようになった。

「今日から復学しましたアリスさんです。
ほとんどの方は知っての通り、怪我が回復しても左側の耳が完治したわけではありません。
話しかける時は正面か右側からにしましょう。そして彼女の近くで大声を出したり大きな音を立ててはいけません。まだ全快ではありませんので、授業中に明らかに体調が悪そうだなと思ったら手を挙げて先生に教えてください。よろしいですね」

全員が手を挙げて小さな声で返事をした。

「皆様 ありがとうございます。
少しの間 ご協力をお願いいたします」

挨拶を終えて座った席は左側が窓で、ちょうど柱になっている場所だ。
席も気を遣ってくれたようだ。

私の前にはスーザン。斜め右前にリヴウェル様。
後は知らない女生徒、斜め右後ろにシルヴェストル様。隣はマチアス様だった。


昼休みに食堂へ移動した。

「アリス。私が運ぶから、転ばないように」

「ありがとうございます」

シルヴェストル様は私のトレイを持ってくれた。

テーブルに着くと私の後ろの席の女生徒が左隣に座った。

「後ろの席の方ですね?アリスです。よろしくお願いします」

「私はレイナと申します。放課後に再度自己紹介をいたします」

「あ、はい」

そのまま皆は席につき、食事を始めた。
よく分からないが放課後に分かるのだろう。

「リオネル様ぁ」

レイナさんの逆隣にいたリオネル殿下の側にはシャルロットが立っていた。

「はぁ」

「リオネル様ぁ。今日こそはご一緒させてください」

「ここは満席だから別の場所へ行ってくれ」

「…貴女か、もしくは貴女が席を譲って?」

シャルロットの目線の先はレイナさんと私だった。

「嫌です」

レイナさんはキッパリ断った。
シャルロットは私を見つめた。
だけど視界が暗くなった。

「彼女はここを退かない。次に彼女に失礼な態度を取ればベルビュー男爵家に抗議するぞ」

横から私の目を手で覆ったのはシルヴェストル様だ。

「学園生は皆平等ですよね」

「平等云々の前に、先に座って仲間と食事をしているのに、赤の他人が割り込んで席を空けさせようとするのは非常識だ。しかもいつも女生徒にだけ退けと言うのは何故だ?」

「退けなんて言っていないわ。譲ってって言ったの」

レイナは立ち上がり、シャルロットの持っていたトレイを持つと、彼女の手を掴んで引っ張って、遠くの空き席に置いて帰ってきた。

「レイナ、ありがとう」

「お任せください、殿下」

え?侍従関係!?
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