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2章 逃避行は従者と共に
21話 傭兵【墜鬼隊】
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これじゃ降りようにも降りれないじゃない。
無理だ、こんな高さ絶対に無理。
はぁ、魔法の才がないのは本当に酷というか、自分で言うのもなんだけどね。
でもこういう時に魔法を使えたらなぁなんて考えるけど、なんでお母さんは使えて私には使えないのよ。
そう思う可哀想な私でした。
冗談はさておき、降りる方法だけど……。
「リーちゃんそろそろ降りようか?」
「えっ! 降りることもできるの? なんて便利な身体能力。私もそんな能力欲しかったな」
「だったらワタシが鍛えてあげようか?」
私は顔を横に何回も振った。
だいたい相手から『鍛える』なんて言葉が出てきた時には、大変なことになる。
今まで年中城の自室にこもりっぱなしの運動不足な私が、激しく身体を動かしたあかつきには、至る所筋肉痛に襲われ一歩も動けなくなる自信しかない。
そんな自信捨ててしまえ、と普段から体作りしている人達は思うだろう。
だけど普段から体作りをしていない、動かない人にとっては、動くこと自体がそもそも面倒で地獄の試練と一緒なのだ。
おまけに精神的苦痛もあるしで、本当に最悪。
こんなこと口に出した時には、お母さんになんて言われるかおおよその予想はつく。
ずっとネムとしてしつこく言われ続けてきたし。
「う~ん、遠慮しとくね」
「そう……」
シーちゃんは悲しそうにうつ向いた。
こんなことで落ち込むって幼いにも程がある。
自分に言えた義理はないけど……。
「わかった、わかったから! だったら時間がある時にでもお願いするね」
「ホントに! まぁワタシが鍛えれば、人は殺せるほどには成長すると思うよ」
「なんかさり気なく怖いことを言った気が……」
「じゃあそろそろ降りようかな。リーちゃんのお母さんも待ってるだろうし」
「うん」
そして私は再びシーちゃんに抱えられ、峡谷の下へと移動した。
そこにはお母さんとユーシス、そして兵達の死体の山。
辺りを見渡すもマキアスさんの姿がどこにも見当たらない。
どういうこと? 普通に考えればあの煙幕の最中、何者かが救援に駆けつけマキアスさんを連れ去った。
それとも独りで峡谷を抜けたの?
でもその線は薄い。
煙が辺りに充満していたとはいえ、ネムいやお母さんが容易く見逃すはずもない。
ユーシスだってそうだ。
自分ではバカだのアホだの自虐しているけど、実際はそれなりに教養はあるし、戦力としても申し分はない、はず……。
そうじゃないと私の従者になれるはずがないからね。
「良かったリーゼ無事だったのね」
「うん」
「シズクあなたにも感謝しないとね。わざわざ駆けつけてくれて感謝しているわ。それに、あなたの雇い主にもね」
「う~ん、なんのことかな? たまたま通り掛かったから助太刀に入っただけなんだけどね」
「そういうことにしておきましょう。でもあなた自身はあまり変わっていないようで安心したわ」
「そうだね、傭兵は金と誇りで動く者だからね。感情なんて二の次。ワタシ達【堕鬼隊】は相応の評価をしてくれる人間には忠義を尽くすけど、そうじゃない人間にはわかるよね? リーちゃん」
「わ、私!?」
お母さんは私を庇うかのようにシーちゃんと私の間に割り入った。
「そんなに怖い顔しなくても、リーちゃんには手を出さないから安心して。ワタシ結構この子のこと好きみたいだし」
「なっ!? あなたに娘は――」
「やらないでしょ! わかってるからそんなの。ただ単にワタシを高く評価してくれたのが嬉しかったからだよ」
お母さんの口からはそれ以上の言葉は出なかった。
無理だ、こんな高さ絶対に無理。
はぁ、魔法の才がないのは本当に酷というか、自分で言うのもなんだけどね。
でもこういう時に魔法を使えたらなぁなんて考えるけど、なんでお母さんは使えて私には使えないのよ。
そう思う可哀想な私でした。
冗談はさておき、降りる方法だけど……。
「リーちゃんそろそろ降りようか?」
「えっ! 降りることもできるの? なんて便利な身体能力。私もそんな能力欲しかったな」
「だったらワタシが鍛えてあげようか?」
私は顔を横に何回も振った。
だいたい相手から『鍛える』なんて言葉が出てきた時には、大変なことになる。
今まで年中城の自室にこもりっぱなしの運動不足な私が、激しく身体を動かしたあかつきには、至る所筋肉痛に襲われ一歩も動けなくなる自信しかない。
そんな自信捨ててしまえ、と普段から体作りしている人達は思うだろう。
だけど普段から体作りをしていない、動かない人にとっては、動くこと自体がそもそも面倒で地獄の試練と一緒なのだ。
おまけに精神的苦痛もあるしで、本当に最悪。
こんなこと口に出した時には、お母さんになんて言われるかおおよその予想はつく。
ずっとネムとしてしつこく言われ続けてきたし。
「う~ん、遠慮しとくね」
「そう……」
シーちゃんは悲しそうにうつ向いた。
こんなことで落ち込むって幼いにも程がある。
自分に言えた義理はないけど……。
「わかった、わかったから! だったら時間がある時にでもお願いするね」
「ホントに! まぁワタシが鍛えれば、人は殺せるほどには成長すると思うよ」
「なんかさり気なく怖いことを言った気が……」
「じゃあそろそろ降りようかな。リーちゃんのお母さんも待ってるだろうし」
「うん」
そして私は再びシーちゃんに抱えられ、峡谷の下へと移動した。
そこにはお母さんとユーシス、そして兵達の死体の山。
辺りを見渡すもマキアスさんの姿がどこにも見当たらない。
どういうこと? 普通に考えればあの煙幕の最中、何者かが救援に駆けつけマキアスさんを連れ去った。
それとも独りで峡谷を抜けたの?
でもその線は薄い。
煙が辺りに充満していたとはいえ、ネムいやお母さんが容易く見逃すはずもない。
ユーシスだってそうだ。
自分ではバカだのアホだの自虐しているけど、実際はそれなりに教養はあるし、戦力としても申し分はない、はず……。
そうじゃないと私の従者になれるはずがないからね。
「良かったリーゼ無事だったのね」
「うん」
「シズクあなたにも感謝しないとね。わざわざ駆けつけてくれて感謝しているわ。それに、あなたの雇い主にもね」
「う~ん、なんのことかな? たまたま通り掛かったから助太刀に入っただけなんだけどね」
「そういうことにしておきましょう。でもあなた自身はあまり変わっていないようで安心したわ」
「そうだね、傭兵は金と誇りで動く者だからね。感情なんて二の次。ワタシ達【堕鬼隊】は相応の評価をしてくれる人間には忠義を尽くすけど、そうじゃない人間にはわかるよね? リーちゃん」
「わ、私!?」
お母さんは私を庇うかのようにシーちゃんと私の間に割り入った。
「そんなに怖い顔しなくても、リーちゃんには手を出さないから安心して。ワタシ結構この子のこと好きみたいだし」
「なっ!? あなたに娘は――」
「やらないでしょ! わかってるからそんなの。ただ単にワタシを高く評価してくれたのが嬉しかったからだよ」
お母さんの口からはそれ以上の言葉は出なかった。
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