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2章 逃避行は従者と共に

14話 すれ違い

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 ユーシスはなにをしているの?

「よいしょっと! 薪もこれで準備完了っと」
「ええと、ユーシスなにを……」
「おう、姫準備は終わったのか? 俺もすぐに終わらすから。うぬぬぬっ」
「薪なんて必要ないと思うけど……」
「な、なんだと! だったら今までの俺の努力は!」
「えへへっ! 無駄、かな」

 私がそう伝えた瞬間、ユーシスは困惑した様子でふらふらと森の中へと消えて行った。

「ネムどうする? 私正直に言い過ぎたかな?」
「そんなことはありません。ユーシスは少し頭が弱いので彼なりに必死に考えた結果でしょう。少し頭が弱いだけですから仕方がないことです」
「ネムってユーシスのことになると結構言うよね」
「そうでしょうか。特にそのつもりはありませんが」
「私はそう聞こえるから言ってるの。あ、それよりユーシスを追いかけないと。ネムせっかくユーシスが薪を準備してくれてるから、まとめといてくれる?」
「承知しました」

 私は走ってユーシスが消えた方向へと走って向かった。
 
 少し進んだ先には倒木の上に座るユーシスの姿があった。

「なにしてるの?」
「ごめんな俺頭悪いからさ、ああいうことしか思いつかなくて」
「別にいいわよ。ユーシスがいてくれるから、私も安心できるの。実はね地下牢にいる時、ひとりぼっちですごく寂しかった。いつもならユーシスやネムと笑い合ってるのにずっとひとりだったから。でもね助けにきてくれた時、二人の声を聞いてものすごく安心したの。ユーシスにもネムにも私の側からいなくなるなんてこと私は考えられない、いや考えたくもないの。だってあなた達二人は私にとって従者というより友人そのものだから」
「友人か…………まぁ今はそれでいいか」
「今はってどういうこと?」
「いや別に」
「そろそろ話は終わりにして、ネムも待ってるしね」
「ああ、そうだな」

 私とユーシスはネムの元へと戻った。

 綺麗に整頓された薪には紐が括り付けられており、持ち運びがしすいように纒められていた。

「では行きましょうか。それなりの距離がありますので、疲れたと感じた時はすぐに仰ってください」
「ええ、分かったわ」
「よっしゃ! 気合を入れてインギス村目指して~えい、えい」
「………………」
「おい、姫はまだしもネムはなぜ言わない」
「………………」
「お前無視してるだろ!?」
「なぜでしょうか? 天から声が」
「俺はここだ!! お前の後ろ!!」
「おっと失礼。てっきりユーシスは先に逝ったのかと」
「お前わざとだろ! 先に行ったと天に逝ったお前はどっちの意味で……よくよく考えたらどっちもひどくない、お前絶対俺のこと嫌いだろ」
「さぁ…………」

 ネムはそっぽを向き、私とユーシスの先頭をぶつぶつ言いながら歩き始めた。

 ユーシスはというと、なぜか分からないけど顔がニヤけている。
 もしかしてネムのこと好きなのかな?
 あんな雑に扱われているのに?
 まさか……そういう系統の? よくよく考えればそれもあり得る。
 常に持ってるのは剣じゃなくて、盾だし。

「姫様、少しペースを」
「あ、ごめん。すぐに追いつくから」
「まさか運動不足でもう疲れたんじゃないよな」
「そんなわけないじゃない。私はまだ十八歳よ」
「あっそ、興味ねぇし」
「なによ! ユーシスも私と同い年じゃない!」

 私達三人はそうなんともない会話をしながら、暗い森の中を歩き進める。
 鬱蒼とした森の中は不気味だ。
 風が吹く度、木々が揺れカサカサと音を鳴らす。
 どこからか聞こえてくる獣の遠吠え。
 ネムとユーシスと一緒にいたら安心だろうけど。

「ネム早く森を抜けたほうがいいような気が……」
「そうですね。しかしながら少々厄介な獣が」
「えっ? なにもいないけど……」

 最初はそう思っていた。
 でも森が異常なほど静か過ぎるのだ。
 目を凝らして辺りをよく見ると、茂みの間から光り輝く二つの丸い点。
 間違いない獣だ。
 私達が警戒しているのに気づいて襲ってこないけど、隙を見せた瞬間間違いなく飛び掛かってくる。

「ねぇネム、あれは?」

 私は獣がいると思った茂みを指さした。
 
「おそらくウルフだと。ウルフは単体での行動をしません」
「ということは、まさか!」
「ええ、我らは囲まれていますね」
「なぁ二人共ここは俺に任せてくれないか?」
「対処方法でもあるの?」
「いやそういうわけじゃないが、試しにちょっとな」

 そう言ってユーシスは背負っていた鞄からなにかを取り出した。
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