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1章 いわれもない罪
2話 義妹からの招待
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そしてレティーはベッドの替えのシーツを持ったまま、
「リーゼちゃん、ベッドのシーツ替えを……あらあらあら、お邪魔だったかしら」
「レティー!! いつも言ってるでしょ、ノックしてから入って来てって!!」
「もうリーゼちゃんったら、そんなに恥ずかしがって。はい、頭なでなで」
「ふふふん」
ああ、やっぱりレティーに頭を撫でられるのは心地が良いかも、と思っていた矢先。
ネムとユーシスがため息混じりの小さな声で、
「姫様……」
「姫……」
そんな二人の驚いた、いや呆れている反応を見て私は我に返った。
ついつい小さい頃からの癖が出てしまった。
「二人共違うのよ。これは、そう全部レティーが悪いのよ。そ、そう私はレティーに洗脳を受けているのよ!」
私は二人に必死にさっきまでの恥ずかしい姿の言い訳をしていた。
二人はそんな私を見て、笑いを堪えているようにも見える。
ネムに関しては鉄仮面越しから「クスクス」と声が漏れており、ユーシスに関してはいつ吹き出してもおかしくないほど必死に笑いを堪えている様子だった。
「姫様、お気になさらず。我々は笑ったりなど……ぷっ!」
ネムは絶対私をバカにしている。
それにユーシスまで。
「あははははははっ!! ヤバっ! 腹が痛い!」
二人の様子を見ているうちに、私の恥ずかしさは沸点へと達した。
そして二人の笑いを必死に止めようとしたその時だった。
誰かが私の部屋の扉をノックしている音が聞こえてきた。
「どうぞ、入ってちょうだい」
「失礼します、お姉さま。今、お時間よろしいでしょうか?」
彼女の名は第二王女であり私の義妹――システィア・ラルフハルトだ。私とは違った茶色の髪に、背は頭一つ分くらい高い。
父上と婚約を交わした第二夫人――セレスの娘であり、私にとっては義理の妹になる。
セレスは私の母上である王妃の死後、その役割を引き継いだ女性なのだが、巷では男遊びの激しい女として有名だ。そんな噂が絶えない女性となんで父上は婚約をしてしまったの? おまけに娘のシスティアは普段から何を考えているかまったく分からないし……正直言って恐い。
それとまぁ当然だけど、腹違いだから仲が良い訳でもないし、今までまともに会話すらしてこなかったのに、いったい何の用があってここにきたのだろうか?
「大丈夫よ」
そう告げた私は、ネムとユーシス、そしてレティーにも部屋を出るよう合図をした。
ユーシスとレティーは私に一礼してから、システィアと入れ替わる形で退出したが、ネムは一向に部屋から立ち去ろうとしない。
「ネム何をしているの?」
私は小言でそう告げた。
しかしネムの返答は、
「……………………」
無言のまま何の言葉も返ってこなかった。
仕方ない、ネムは立ち去ろうする気はないみたいだから、何の用で私の部屋にきたのかシスティアにちゃんと確認しなければ。
「ご――」
「ここが……お姉さまのお部屋ですか?」
システィアに「ごきげんよう」って言うはずだったのに、先に話し出すなんて。そもそも、挨拶なしで話し出すなんてこと王族では到底有りない行為なんだけど。王族としてのマナーや所作を侍女がこの子に教えているはずだけど……これって、どういうこと?
まあいいわ、なにか大事な用っぽいし、ここは大人しくしておこう。
「ええ、そうよ。何か問題でも?」
「いいえ、思ったより綺麗にされているようで、わたくしは安心しているのです」
「あなたは何が言いたいの?」
「『あなた』……ですか。わたくしの名前は呼んでくださらないのですね。役にもたたない従者やあの侍女の名は呼んでおられるのに」
「で、あなたの要件はなに?」
「まぁいいでしょ。お姉さま今宵はちょっとした催しを用意しております。楽しんでいただければと」
「催し? あなたが?」
なんか怪しい、何を企んでいるの?
今まで出会ってこの方、こんな誘い一度もなかった。一応、義理の姉妹だからか? それとも私を警戒している? とはいっても私はそんなたいした器じゃないけど。
国王の座にも興味がないから、もし警戒しているならする必要がないのに。
とは言っても、王家だと警戒することは当たり前。相手の話すことを一言一句漏らさず記憶し、次に相手がどのような発言をするかを予測しながらこちらが発言する。
簡単に言えば腹の探り合いだ。
これが出来ないようなら王族としては無能、とみなされる。
私は催しの件を今あれやこれや考えているが、システィアは平然とした顔で淡々と説明している。
まるでこういう流れになるシナリオが最初からできていたかのように。
「ええ、今までわたしとお姉さまの関係はギスギスしていました。この際、本当の姉妹、義理ではありますが、催しを通してわたくしと仲良くしていただきたいと思いまして」
「そう、分かったわ。時間が合えば顔を出すことにしましょう」
「必ずですよ、お姉さま。来ていただかないと面白さが半減してしまいますので!」
システィアの顔から笑みが溢れている。
不気味だ、本当に不気味で仕方がない。
この子がこんなにも笑った姿、一度も見たことがない。
「ではお姉さま、わたくしはこの辺で。それと警戒する必要ありませんよ。わたくしは何があってもお姉さまの味方ですから」
「ありがとう、システィア」
とは返したものの、余計に警戒するわ!
そうだ、この際あの人に相談してみよう。
「リーゼちゃん、ベッドのシーツ替えを……あらあらあら、お邪魔だったかしら」
「レティー!! いつも言ってるでしょ、ノックしてから入って来てって!!」
「もうリーゼちゃんったら、そんなに恥ずかしがって。はい、頭なでなで」
「ふふふん」
ああ、やっぱりレティーに頭を撫でられるのは心地が良いかも、と思っていた矢先。
ネムとユーシスがため息混じりの小さな声で、
「姫様……」
「姫……」
そんな二人の驚いた、いや呆れている反応を見て私は我に返った。
ついつい小さい頃からの癖が出てしまった。
「二人共違うのよ。これは、そう全部レティーが悪いのよ。そ、そう私はレティーに洗脳を受けているのよ!」
私は二人に必死にさっきまでの恥ずかしい姿の言い訳をしていた。
二人はそんな私を見て、笑いを堪えているようにも見える。
ネムに関しては鉄仮面越しから「クスクス」と声が漏れており、ユーシスに関してはいつ吹き出してもおかしくないほど必死に笑いを堪えている様子だった。
「姫様、お気になさらず。我々は笑ったりなど……ぷっ!」
ネムは絶対私をバカにしている。
それにユーシスまで。
「あははははははっ!! ヤバっ! 腹が痛い!」
二人の様子を見ているうちに、私の恥ずかしさは沸点へと達した。
そして二人の笑いを必死に止めようとしたその時だった。
誰かが私の部屋の扉をノックしている音が聞こえてきた。
「どうぞ、入ってちょうだい」
「失礼します、お姉さま。今、お時間よろしいでしょうか?」
彼女の名は第二王女であり私の義妹――システィア・ラルフハルトだ。私とは違った茶色の髪に、背は頭一つ分くらい高い。
父上と婚約を交わした第二夫人――セレスの娘であり、私にとっては義理の妹になる。
セレスは私の母上である王妃の死後、その役割を引き継いだ女性なのだが、巷では男遊びの激しい女として有名だ。そんな噂が絶えない女性となんで父上は婚約をしてしまったの? おまけに娘のシスティアは普段から何を考えているかまったく分からないし……正直言って恐い。
それとまぁ当然だけど、腹違いだから仲が良い訳でもないし、今までまともに会話すらしてこなかったのに、いったい何の用があってここにきたのだろうか?
「大丈夫よ」
そう告げた私は、ネムとユーシス、そしてレティーにも部屋を出るよう合図をした。
ユーシスとレティーは私に一礼してから、システィアと入れ替わる形で退出したが、ネムは一向に部屋から立ち去ろうとしない。
「ネム何をしているの?」
私は小言でそう告げた。
しかしネムの返答は、
「……………………」
無言のまま何の言葉も返ってこなかった。
仕方ない、ネムは立ち去ろうする気はないみたいだから、何の用で私の部屋にきたのかシスティアにちゃんと確認しなければ。
「ご――」
「ここが……お姉さまのお部屋ですか?」
システィアに「ごきげんよう」って言うはずだったのに、先に話し出すなんて。そもそも、挨拶なしで話し出すなんてこと王族では到底有りない行為なんだけど。王族としてのマナーや所作を侍女がこの子に教えているはずだけど……これって、どういうこと?
まあいいわ、なにか大事な用っぽいし、ここは大人しくしておこう。
「ええ、そうよ。何か問題でも?」
「いいえ、思ったより綺麗にされているようで、わたくしは安心しているのです」
「あなたは何が言いたいの?」
「『あなた』……ですか。わたくしの名前は呼んでくださらないのですね。役にもたたない従者やあの侍女の名は呼んでおられるのに」
「で、あなたの要件はなに?」
「まぁいいでしょ。お姉さま今宵はちょっとした催しを用意しております。楽しんでいただければと」
「催し? あなたが?」
なんか怪しい、何を企んでいるの?
今まで出会ってこの方、こんな誘い一度もなかった。一応、義理の姉妹だからか? それとも私を警戒している? とはいっても私はそんなたいした器じゃないけど。
国王の座にも興味がないから、もし警戒しているならする必要がないのに。
とは言っても、王家だと警戒することは当たり前。相手の話すことを一言一句漏らさず記憶し、次に相手がどのような発言をするかを予測しながらこちらが発言する。
簡単に言えば腹の探り合いだ。
これが出来ないようなら王族としては無能、とみなされる。
私は催しの件を今あれやこれや考えているが、システィアは平然とした顔で淡々と説明している。
まるでこういう流れになるシナリオが最初からできていたかのように。
「ええ、今までわたしとお姉さまの関係はギスギスしていました。この際、本当の姉妹、義理ではありますが、催しを通してわたくしと仲良くしていただきたいと思いまして」
「そう、分かったわ。時間が合えば顔を出すことにしましょう」
「必ずですよ、お姉さま。来ていただかないと面白さが半減してしまいますので!」
システィアの顔から笑みが溢れている。
不気味だ、本当に不気味で仕方がない。
この子がこんなにも笑った姿、一度も見たことがない。
「ではお姉さま、わたくしはこの辺で。それと警戒する必要ありませんよ。わたくしは何があってもお姉さまの味方ですから」
「ありがとう、システィア」
とは返したものの、余計に警戒するわ!
そうだ、この際あの人に相談してみよう。
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