315 / 344
315話
しおりを挟む
流石に公爵子息令嬢という立場にいると言っても、次期陛下と次期王妃の2人に対して言い返すことなど出来るわけもなく、私に対して敵対心を向けていた人たちは都合の悪そうな顔をして下を向いてしまいましたわ。
そんな中、カイン様もエリザベート様も、そんな人たちに気付いているはずなのに、気付いていないふりをしていますわね。
それだけ不愉快に思っていた、ということなんでしょうか。
ただ、流石に言いすぎのような気がしますわ。
だって、この2人は優しくて誰にでも平等で.....と言われていますのよ?
それなのに、私を贔屓しているということになってしまったらせっかくの良い評価が下がってしまいますわ。
なんて思っていると、2人は都合が悪そうに黙り込んだ公爵子息令嬢たちのことを見て満足したのか
「早く教室に行きましょうか」
そう言いながら、くるっと私の方を見たエリザベート様は上機嫌になっていますわ。
そして、上機嫌のまま私の腕を掴むと、子息令嬢たちが空けてくれた道の真ん中を慣れた足取りで歩いて行くんですが......当然私はこのような状況に慣れているわけもなく
「え、エリザベート様!?カイン様!?1人で行きますわよ!?」
腕をグイグイ引っ張られている中、必死にそう伝えましたわ。
ただ、そんな言葉でエリザベート様を止められるわけもなく
「せっかくここまで一緒だったですし、教室まで一緒に行きますわよ」
そう言うと、片目をパチッと瞑り、お茶目な表情で私を見てきましたわ。
その表情は、綺麗で清楚な顔立ちからは想像が出来ないくらい子供っぽくて、私の近くにいた人たちなんて赤面するくらい可愛らしくて、そんなエリザベート様に何か言えるわけもなく
「そ、そうですか.......」
と間抜けな返事を返すのがやっとでしたわよ。
もう......その顔は卑怯ですわよね。
エリザベート様がそのような顔を出来るなんて知りませんでしたし、完全に油断していましたわ。
そんなことを思いながら、引きずられるように再び子息令嬢たちの作った道を歩いていると、今まで黙って私たちの少し後ろをついて来ていたカイン様が、ふと思い出したかのように
「あぁ、その前に先生たちに話をしに行くのが先じゃないか?隣国に行く前、何も話さずに国を出ただろう?」
と言ったのが聞こえてきましたわ。
確かに、学園をお休みする、ということも話していませんでしたし、謝罪と今までの話も含めてお話をするべきだ、と思った私は、
「そ、そういえばそうでしたわね」
とカイン様の言葉に頷くと
「まぁ、事情は話してあるし、納得もしているから問題はないが、戻ってきたんだから現状を報告するべきだと思う」
と付け足すようにカイン様がそう言って、私の腕を掴むエリザベート様をそっと引き剥がしてくれましたわ。
そのおかげで、ピッタリと私にくっ付いていたエリザベート様は不服そうにしていたものの、私から離れてくれましたわね。
こう言うのはエリザベート様には悪いですが、少し歩きにくかったので助かりましたわ。
それに、教員室に行く、ということはこの注目の的状態から抜け出すことも出来ますし.......。
そう思った私は、早速と言わんばかりに
「そうですわね.......では教員室に行って......」
と言って2人の元から離れようとしましたが、私が最後まで言い終える前に
「もちろん、私も行きますわよ!」
そう言ってエリザベート様が再び私の腕をガシっと掴んできましたわ。
あぁ.......どうやら今日はエリザベート様から離れることが出来ないみたいですわね。
そんな中、カイン様もエリザベート様も、そんな人たちに気付いているはずなのに、気付いていないふりをしていますわね。
それだけ不愉快に思っていた、ということなんでしょうか。
ただ、流石に言いすぎのような気がしますわ。
だって、この2人は優しくて誰にでも平等で.....と言われていますのよ?
それなのに、私を贔屓しているということになってしまったらせっかくの良い評価が下がってしまいますわ。
なんて思っていると、2人は都合が悪そうに黙り込んだ公爵子息令嬢たちのことを見て満足したのか
「早く教室に行きましょうか」
そう言いながら、くるっと私の方を見たエリザベート様は上機嫌になっていますわ。
そして、上機嫌のまま私の腕を掴むと、子息令嬢たちが空けてくれた道の真ん中を慣れた足取りで歩いて行くんですが......当然私はこのような状況に慣れているわけもなく
「え、エリザベート様!?カイン様!?1人で行きますわよ!?」
腕をグイグイ引っ張られている中、必死にそう伝えましたわ。
ただ、そんな言葉でエリザベート様を止められるわけもなく
「せっかくここまで一緒だったですし、教室まで一緒に行きますわよ」
そう言うと、片目をパチッと瞑り、お茶目な表情で私を見てきましたわ。
その表情は、綺麗で清楚な顔立ちからは想像が出来ないくらい子供っぽくて、私の近くにいた人たちなんて赤面するくらい可愛らしくて、そんなエリザベート様に何か言えるわけもなく
「そ、そうですか.......」
と間抜けな返事を返すのがやっとでしたわよ。
もう......その顔は卑怯ですわよね。
エリザベート様がそのような顔を出来るなんて知りませんでしたし、完全に油断していましたわ。
そんなことを思いながら、引きずられるように再び子息令嬢たちの作った道を歩いていると、今まで黙って私たちの少し後ろをついて来ていたカイン様が、ふと思い出したかのように
「あぁ、その前に先生たちに話をしに行くのが先じゃないか?隣国に行く前、何も話さずに国を出ただろう?」
と言ったのが聞こえてきましたわ。
確かに、学園をお休みする、ということも話していませんでしたし、謝罪と今までの話も含めてお話をするべきだ、と思った私は、
「そ、そういえばそうでしたわね」
とカイン様の言葉に頷くと
「まぁ、事情は話してあるし、納得もしているから問題はないが、戻ってきたんだから現状を報告するべきだと思う」
と付け足すようにカイン様がそう言って、私の腕を掴むエリザベート様をそっと引き剥がしてくれましたわ。
そのおかげで、ピッタリと私にくっ付いていたエリザベート様は不服そうにしていたものの、私から離れてくれましたわね。
こう言うのはエリザベート様には悪いですが、少し歩きにくかったので助かりましたわ。
それに、教員室に行く、ということはこの注目の的状態から抜け出すことも出来ますし.......。
そう思った私は、早速と言わんばかりに
「そうですわね.......では教員室に行って......」
と言って2人の元から離れようとしましたが、私が最後まで言い終える前に
「もちろん、私も行きますわよ!」
そう言ってエリザベート様が再び私の腕をガシっと掴んできましたわ。
あぁ.......どうやら今日はエリザベート様から離れることが出来ないみたいですわね。
26
お気に入りに追加
4,232
あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。

婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に
柚木ゆず
恋愛
※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。
伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。
ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。
そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。
そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。
「そう。どうぞご自由に」

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます

妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました
柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。
「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」
「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」
私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。
そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。
でも――。そんな毎日になるとは、思わない。
2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。
私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる