商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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94 イチゴと草履の黒ハケメ

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 右見て左見て、上見て。


「…おおぅ」


 思わず口から出た、妙な小声に戸惑って居るなぁと思う。

 今現在居る場所は嵯峨さんが住んでいるマンションの入り口から入った、広いエントランスホール。その場所で所在なさげに突っ立っている、普段着古している和服…甚平姿の俺。
 我ながらこの場に合っていない姿である。
 足下なんて草履の黒ハケメ。裏がスポンジだから気軽に履けるが、この場に合わない。黒くてなかなか格好良いのだがなぁ…。
 当然出入りする住民の視線が痛い。

 どうせなら直ぐ側の神社とか、道路向こうの八百屋とかを待ち合わせ場所にして欲しかった。

 いや、八百屋は無いか。
 例え此処からでも見える店頭にある真っ赤なイチゴが美味しそうだとか、ついお土産で買って来てしまったとか、自分が食べたかったとか言う言い訳はあったりするけれど。
 ついでに2つも購入してしまった。勿論嵯峨さんの分と俺の。
 一人ひとつずつ。
 ちょっとだけ、贅沢。

 練乳を買ってくれば良かったかなぁ~とか思ってしまうのは甘い物を欲しているからだが、無ければ無いで良い。そのまま食べても美味しそうだからな。

 もしかして先程から出入りする住人達はイチゴの匂いに釣られて、とか?
 ビニール袋に入っているから然程匂いはしないとは思うのだが、近寄れば鼻のいい人は気がつくかも知れない。ビニールハウス栽培の熟れたイチゴの匂いはなかなかの物だ。少なくとも自分はこの見た目と匂いに釣られた。

 それにしても、ゴージャスなマンションだよなぁ。

 マンションなんて自分には一生縁が無いと、田舎から都会へと拠点を移してから尚更そう思って居た。何せ俺が昔から知っている、住んでいた田舎の隣町のマンションとは入り口から明確に違うのだ。


「俺が知っているマンション、ライオンさんが鎮座しているのばかりだったからなぁ」


 他の会社のマンションもあったにはあったが、建設年数が経過しすぎて古いし均一化した箱型な建物ばかりだったから、個性がほぼ無い。高層マンションなんて田舎には大して階数もないし、需要も都会程無いからそんなモノなのかもしれない。
 デザイナーズマンションなんて東京と言う、都会に出てから聞いたぐらいだしな。

 それ以前にうちの田舎、車で数十分の隣町まで出ないとマンションなんて無かったけれど…。


「……おうふ」


 二度目の変な言葉が口から出た途端、背後から


「お待たせしました小林さん」


 声の主の姿を見るため振り返った、ら。


「…ひょぇ」


 慌てて口元を手で覆う。


「小林さん?」

「あ、えっと」


 嵯峨さん、警察から帰宅してからお風呂にでも入った!?
 先程見た姿とは違い、カジュアルな姿ながらもそこはかとなく仄かな色気が!
 アレか?
 髪型が普段とは違い、オールバックにしているからだろうか。

 無茶苦茶格好良い!!


「あー…もしかしてコレ、ですか?」


 嵯峨さんが指先で己の前髪を軽く摘む。
 同意とばかりに頷くと、


「待たせるのも悪いかと思って急いでドライヤーを掛けたから、大雑把にドライヤーをかけただけなんです」

「気にしなくても良かったのに」

「いえいえ、俺が小林さんを待たせたく無かったので」


 ゴフ。
 イケメンがイケメンな台詞を!
 等と脳内でその辺の床をのたうち回りながら悶絶していると…ん、アレ?

 いつの間にか片手を握られていて。
 え、なんで?と思っていると、


「すいません俺の家、食料が全く無いので…」


 そう言えば嵯峨さん、以前俺の前で空腹で倒れたことがあった。しかもご飯が作れない人だった。


「買い物に行きます?」

「いえ、俺の家調味料も食器も調理器具も何もかも無いので。だから外にご飯を食べに行きませんか?」


 ※※※


 独り言。

 ・黒ハケメ、実物を見たことが無いので検索かけてとあるサイトで確認しました。スポンジのは足の裏が痛くなりにくいらしいみたいですね。
 ・そろそろ五年目にはいったPCですが、昨年の年末から徐々に接続切れが多くなり、ヤバそう。かえって中古PCの方が調子がいい。頼む、もうちょっともって~!
 ・左目の調子は良いのですが、まだまだ本調子では無いので更新は不定期です。
 PCの調子も怪しいけど…(-_-;)

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