商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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67 せめてトマトを付けて

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「朝食…」


 俺の店、昨日買い物に行っていないから店で朝食を出すだけの材料が無い。
 味噌汁とご飯位はあったけど、その他は…。


「大根とキャベツぐらいしか無い」


 冷蔵庫に豚肉ぐらいはあったとは思うけど、その他は買いに行かないと無い。
 塩味噌醤油等の基本的な調味料ぐらいはあるけど店で朝食を出す程の食材は無いし、卵も海苔も何時も出すお魚も足りない。


「うん?ああ、ウチの店に顔を出すって」

「小林茶坊より開店時間は遅いけど、モーニングはやっているからね。珈琲とトーストに茹で卵って言うラインナップだけだけど」

「せめて野菜が欲しいですね…」


 嵯峨さんほっとくと栄養不足に陥りそうになるし。欲を言ったらお肉かお魚が欲しい。
「あの子、身長が結構あるし体格も良いのに何故か食に関して適当な所があるからほっとくと食べないことがあって困るの」って嵯峨さんの親戚のおばさんが言っていたし、何より予想外なのは嵯峨さんの身体って細身なのです。
 力だってあるのに不思議。

 等という言葉は何とか飲み込む。
 以前栄養失調で倒れた嵯峨さんのことは不破さんの事だから知っているだろうし…等と思っていたら、末明さんと不破さん夫夫(ふうふ)の怒涛の会話が始まった。


「だ~から不破、せめてトマト位トーストの横に付けようぜって言ったじゃん」


 野菜が圧倒的に足りない、野菜が!身体に悪い!
 等と言う末明さん。
 特にこれから暑くなる季節なのだから、朝から栄養大事!特に緑黄色野菜必須!と言っている。
 末明さん、子供を産んでから特に栄養が気になる!と言っております。因みに双子ちゃんは台所の隣の部屋の床に置いてある、長座布団の上を転がっております。
 そろそろハイハイをしそうで床に置いておかないと危険とのこと。確かに今も手足をバタバタ動かし、ご機嫌に何かをお喋りしている。
 双子ちゃんの言っていることは全くわからないが、兎に角可愛い。


「うち喫茶店だけど。珈琲が主体の店ですけど。最近はハーブもあるけど。メッチャハーブティー人気あるけど」


 不破さん必死だなぁ。
 等と見ていたら何時の間にか淹れたのか、末明さんからハーブティーを手渡される。
何だろ、甘い匂い…ん~……等と匂いを嗅いでいたら、末明さんから「アップルとブラッドオレンジのお茶だよ」と。
 へ~と思ってお礼を言ってから一口。
 おお、何だか身体が暖まって頭がスッキリする。
 糖分は入っていない筈なのに、匂いだけで癒される。こういう所、ハーブティーって良いよねって思う。日本茶だって負けていないけどね!


「朝にモーニング出している店で言うのはどうかと思うけど?」

「んぐ…」


 不破さん口では何だかんだ言っても末明さんに勝つ気は無いね?口元が上がっているし、末明さんに論破されていても嬉しそう。


「おまけに『ロイン』って店名だからってマグロ丼があるし。何処が珈琲が主体なんだ?」

「末明ちゃんが虐める~」


 末明さん、その喫茶ロインだけど。

 先日近所の看板屋のオジサンから不破さんは『ロイン』ではなく、『ロインクロス』と名付けたかったと聞いたよ。尚『ロインクロス』とは下着の祖の名前だとか。
 あまりにも酷い理由だったので、看板屋のオジサン、思わず「食品を扱う店に変な名前を付けるな!」と不破さんに拳骨を落としたって。

…若い頃の不破さんって、中々のお茶目さんだったようだ。

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