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打倒、物語の強制力

変態さん、いらっし…来ないで?

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お兄様無しで向き合う、はじめての変態様。

チィちゃん、ロア、貴方達が頼りですわ!

「妹ちゃん、イチイちゃん、今日からよろしくねー!」

「イヤです」「素直だな、オイ!」

「リア様、そんなにしーおじ様がお嫌いだったんですねー。
ワンパンしておきますか?
私の方が強いと証明出来たら、安心しますか?」「ワン!!」

「いやいやいやいや!イチイちゃんに殴られたら、僕、死ぬ自信あるよ!?
待って!!腕を振り回して準備運動しない!!
おいこら、ワンコ!助走距離をとるな!!」

「ウフフフフ。
チィちゃん、ロア、大好きですわ!!」

「やっとリア様が笑ってくれたぁ!!」「ワン!」

両手を広げるとチィちゃんとロアが飛び込んで来てくれましたわ。
ちょっとコロンと転がりましたが、人肌、もふもふ、安心します。

「あぁ、確かにこれは人気でるわ。…仕事するか」
変態様が大人しく仕事し始めましたわ。


描きながら、変態様が聞いてきました。
「純粋な疑問なんだけど、妹ちゃん、なんでそんなに服が質素なの?
普通、領地にいてもお貴族様なら簡易のドレスとか着てるよね?
こう言っちゃなんだけど、ちょっと裕福な平民が着るようなものじゃない?」

「だって、動きやすいじゃないですか。お仕事するのに楽でいいです。
チィちゃんとも訓練したりしますし?いちいち着替える時間がもったいないです」

「そんなに仕事してるの?」

「お兄様の方が何倍もしてますわ。
今だって、領地巡りしてくださってますもの。
今まで何もしてこなかったエアトル家が心機一転、期待の新領主の御披露目ですわ!!」
ふんすっと、握り拳で語りますわ。

「ああ、お兄ちゃんの評判良いみたいだねー。ギダルも褒めてたよ」

「ギダル?ああ、元締めさんですね。そうでしょう、そうでしょう、お兄様はすごいのです。
でも、私含め屋敷の皆、心配なのですわ」

「心配?」

「お兄様はいくらすごくても、身体は1つしかありません。
しかも子供なのです。成長期なのです。
無理しすぎなのです。
皆でフォローしてますが、最終的にお兄様自身が行う事が多すぎるのです。
過労死しそうなほど働く子供、おかしくないです?」

「リオ様、リア様に身長が追い付かない事にずっと悩んでますよね?」

「ブフォ!!」

「変態様?!笑い事じゃないのですわ!!!
それだけお兄様に身体の負担がかかってるのですわ!
慢性的な睡眠不足です!!
いいですか?!
寝る子は育つ!!!
つまり、寝る時間が取れないお兄様は育てないのですわ!!!
だって私、きちんと睡眠時間いただいてますもの!!」

「私もリア様がきちんと睡眠取ってくれるので、ちゃんと寝れてます!」
ねー、と、チィちゃんとうなずきあいます。

「睡眠時間をちゃんといただいてる、と言っちゃう子供もおかしい気がする。
そういえば、なんで、イチイちゃんはここにいるの?」

「リア様の護衛です!全力でリア様を守ります!!
ですので、しーおじ様!!
リア様にフラチな真似したら、おじ様と言えども容赦しません!!!」

「イチイちゃんに〝不埒な真似〞なんて言葉教えたの、誰よ?!
しないからね?絶対しないからね!
だからイチイちゃん、腕振り回すのやめようか!!」

「確かに。しーおじ様はお母様限定の変態でした」
腕を振り回すのをやめたチィちゃんは納得したように言います。

「グファ。
いや、否定はしないけど、いや、変態は断固として否定する!」

「疑問だったんですけど、なんで夫人に先に婚約申し込まなかったんです?
王家なら、アイシア家と婚約なんて小躍りするほど嬉しい事ですよね?」

「だって、セイラーちゃんの存在を知ったのが、ニワトコの婚約者って紹介されたからだもの」

「「は??」」

「それまでセイラーちゃんが居ることも知らなかったし?」

「それはウソです」
私がそう言うと

「え?なぜそう思うの?」
眼を細めた変態様が聞いてきます。

「だって、同年代ぐらいの、王家を含めた高位貴族がお茶会なんかで知り合わないはずありません。
センバは、そう言うのに出なさそうなんで、辺境伯様が夫人を知らなくてもおかしくないですけど。

つまり!!
変態様は、セイラー夫人を知っていたのに、興味がなかった!
辺境伯様の婚約者と聞いて、辺境伯様が取られると思って興味を持った。

ということは!!
本当は、辺境伯様が好きと言うことです!!」
ドヤ顔で言ってやりましたわ!!!

「ええ、それもしょうがない事ですわ!辺境伯様は素晴らしい方ですもの!
私とお兄様も辺境伯様に助け出された人間ですもの!!
こうして生きて行けるのも、辺境伯様に助けていただいてるからですわ!
だからこうやって、チィちゃんにも会えた事ですし!
あら、なら、一番最初に辺境伯様をご紹介してくださった先生にもお礼をしなくっちゃ!
チィちゃん、後で先生の所に一緒に行ってくださる?」「ハイ!」
「チィちゃん、大好きですわ!!」「うほー!!天使の抱擁!!鼻血でるー!」「チィちゃん、我慢ですわ!これも修行ですわ!!」「ハイ!!」


私達がわちゃわちゃしてる間、
変態様の顔がちょっと泣きそうになっていたのを、ロアだけが見ていました。
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