元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十三章

556 隠れ家?

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サーナがガタガタする大きな門を少し開けて、中へ入る。そして、振り返って微笑んだ。グラム達もとりあえず疑問や話を受け止めるのを諦めたようだ。聞かなかった事にしたとも言う。

「お入りになりますか? 地上部分はお見苦しくて大変申し訳ありませんが」
「ん? 地下があるの?」
「はい。使っているのは、地下だけです。上は偽装用ですので」
「偽装……」
「偽装……ねえ……」

グラム達も、廃墟にしか見えない地上部分を見回して呟いていた。

コウヤは、先頭に立つサーナに続きながら、生い茂る草木を見る。そして、頷いた。

「すごい……コレなんて、クシバラ……あっちのは、ホルツバリ……」

信じられないものを見るように、コウヤは蔦草を見て目を丸くする。それを聞いたニールが首を傾げた。

「聞いたことのない植物です」
「そうだよね? ここにある植物のほとんど、今だと……樹海の奥深くか迷宮にしかないよ」
「古く貴重なものだということですね?」
「まあ、希少性は高いかな。薬として使えるのもあるけど……」
「……」

サーナに頼んでここを売ってもらっても良い。そう思っていたが、この植物を見てしまうと、簡単に更地にしようとは思えなかった。ニールも内心残念に思っていた。

それにサーナは気付いたらしい。

「こちらの土地をお求めでしたら、構いませんが? 植物については、植え替えいたしますので」
「けど、この辺の植物は植え替えるのが難しいよ?」

コウヤがやってしまうことはできる。しかし、現代の人には難しいことだ。この植物についての知識がなければ、植え替えなどできない。だが、サーナには当てがあった。

「ホルバ達がやります。既にあちらの端から植え替えをはじめておりますよ」
「え……あっ、ホルバさんって、エルフの……」
「はい。この度、神官になりましたエルフ族の者達です」

迷宮化討伐の後、エルフ族から三人の若者が聖魔教の神官となった。あの討伐の折に、その三人は神官達に憧れ、ベニ達へ雑用係で良いから一緒に連れて行って欲しいと土下座したらしい。

真面目に本気で雑用などをこなす姿を見て、エリスリリアがほんの少しだが加護を与えたようだ。これにより、正式に神官として迎えることになった。

そうして、彼らはもっと役に立とうと、古い薬草の知識も惜しみなく公開していた。ナチとも顔を合わせ、ゲンと共に薬草の栽培について考えているようだ。

そんな三人ならば、この辺りの植物の事も分かっているのだろう。

端の方とサーナが指差した方へと背伸びをして目を向けると、確かに一角、掘り返された土だけの場所が見えた。

「もしかして、予想してたのかな……」

こうして、コウヤが土地を欲しがることを知っていたのではないかと思えた。それは正しかったようだ。

「候補地として挙げられるだろうと思っておりました。ですので、こちらに参ったのです」
「え? でも、大事なお屋敷でしょう? 隠れ家?」
「いえ。ただの金庫です」
「……金庫……」
「はい。それも、ほぼ運び出しが完了しております。採取用のマジックボックスをお借りしましたので、三日ほどで庭の草木も運び出せるかと」

マジックボックスは植物や野菜を収集、収穫に特化したもので、コウヤが神官達に作り方を教えたものだ。新鮮なまま持ち運べる。

「どうぞ。中へ。お茶をご用意させてください。土地の権利書も用意いたします」

家の中は、それほど酷くはなかった。これはこれで心配になる。だから、扉を押さえるサーナに問いかけた。

「金庫代わり? なら、こんなに簡単に家に入れるのは危ないんじゃ……」

サーナは笑って扉をゆっくりと閉めた。そして、グラム達へ顔を向ける。

「ふふふ。グラムさん。この扉開けてみてください」
「え? はい……」

ちょっと怪しみながら、扉に手を触れ、力を入れた。

「っ、は? くっ、ふんっ!!」
「……もしかして、重いの……?」
「ぐっ、重っ、くう!! 開いたっ……っ」

扉がかなり重たいようだ。そして、支えていないと、自動で閉まってしまうらしい。

「ふう……サーナの姉さん……力もちっ……っ、いいえ、その……すごい扉っスね!」

笑顔のサーナに恐れを成し、グラムは愛想笑いを浮かべて誤魔化した。

その後、お茶を飲み、土地の権利書を買い上げた。十日後。ここに見事な飛行船の発着場が出来上がった。

入学式にも間に合い、こうして、学園が始動した。







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読んでくださりありがとうございます◎




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