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第十三章
555 今の所有者は?
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会議の翌日から、ドラム組によって鍛えられた王都の大工達も各地に散らばり、大急ぎで各領地に学生寮が造られた。
非常識な速さで正確に建物を建てられる彼らが、コウヤに直々に頼まれたからということで、かかった工期は一棟で約五日。十日で予定していた各領地に一棟ずつ学生寮が建ってしまった。
それぞれの寮母や寮監には、引退した騎士や冒険者の夫婦が立候補し、急速に体制が整っていく。
王都に集まっていた入学希望者達の多くは、仮入居し、試験の日を待った。各地から王都への移動は、教会から出る飛行船を利用する。
通勤電車ではなく、通勤飛行船だ。入学が決まれば、それにかかる金銭も割引きすることになっている。
そして、入学試験当日がやって来た。
朝から一気に人が学園の中へと吸い込まれて行く様は、異様だった。
「あんな人数……入るんだ……」
「何事かと思ったわ……」
「人の流れって、恐ろしいわね……」
道の半分を区切り、学園へ向かう者だけの通り道を兵や騎士達で作ったため、一般の人々の道行きは特に問題はなかったが、それでも黒い人の群れというのは凄かった。
「コウヤ様のお披露目の時より酷かったわね……」
「そりゃあそうだよ。各地で映像として観えたから、それで王都までこなかった人もいた。今回は本人がこないと意味ないから」
他国へも、冒険者ギルドで映像を観ることができた。だから、ここまで来る必要はなかったのだ。もちろん、生で見たいと言う者は居たが、それでもここまでのものではなかった。
「試験だものね。それも今日だけ?」
「いや。学科によって明日と明後日もあるらしい。貴族さんの家の子は、その後だってさ」
「えっ。今日だけじゃないの!? それであの人数?」
「そう。試験結果が五日後。その日の方がすごいかも。二日間張り出されるらしいけど、結果は早く知りたいものだしなあ」
試験の結果をさすがに他の場所で見えるようにはしなかった。
「うわ~……なら、五日分くらい行かなくて良いように、あそこの店の買い物は多めにしておこうかしら……」
「それが良い」
学園までの道の間にある店を利用する者達は、試験時間中にその店での買い物を済ませようと計画する。そうした情報も昼までには騎士達や文官によって周辺住民に伝えられていた。
「思ったほど、混乱はなさそうだね」
コウヤはこの日、町の様子を確認しながら学園に向かって歩いていた。答えたのは冒険者のグラムだ。
「交通整理? をしたからな」
「上手くいって良かったあ。けど、やっぱり人数は多いよね……う~ん……こうなると、学園直通で飛行船の発着場を造るべきかな……貴族の子ども達が居るし、安全面を考慮すると学園内にっていうのは良くないけど」
学園の前で立ち止まったコウヤは、その建物の周りを確認する。
「この辺で使えそうな土地って、もうないよね?」
そう問いかける先では、ニールがノートを広げていた。中には、縮小された地図がある。
「そうですね……この奥に一軒……あるにはありますが」
「え? どこ?」
コウヤはノートを覗き込む。
「この建物の裏です。何代か前の王妃が隠れ家として使っていたと聞いたことがあります」
「え? 今の所有者は?」
「それが……分からないのです……」
「え~……良い場所な気がするんだけどな~」
学園の生徒以外も、ここで乗り降りすることが出来る場所だ。その土地を確認しようと向かうと、幽霊屋敷のような見た目になっていた。
「……ここ、誰か住んでるの?」
「いえ……ですが、土地の税がかなり先払いされておりまして……手が付けられないのです」
「へえ……そんなお金持ち一体誰が……」
そう呟いていれば、不意に声をかけられた。
「コウヤ様? こちらに何かご用でしょうか?」
「ん? サーナさん?」
「はい」
そこに居たのは、神官のサーナだった。そこでコウヤは思い出す。
「あっ! もしかして! 何代か前の王妃っ、ここの土地の持ち主ってっ……」
「ここの土地ですか? 私のです」
「やっぱり!!」
「「「っ!?」」」
グラム達は知らないその事実を、受け止めるのに時間がかかりそうだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、一度お休みさせていただきます。
よろしくお願いします!
非常識な速さで正確に建物を建てられる彼らが、コウヤに直々に頼まれたからということで、かかった工期は一棟で約五日。十日で予定していた各領地に一棟ずつ学生寮が建ってしまった。
それぞれの寮母や寮監には、引退した騎士や冒険者の夫婦が立候補し、急速に体制が整っていく。
王都に集まっていた入学希望者達の多くは、仮入居し、試験の日を待った。各地から王都への移動は、教会から出る飛行船を利用する。
通勤電車ではなく、通勤飛行船だ。入学が決まれば、それにかかる金銭も割引きすることになっている。
そして、入学試験当日がやって来た。
朝から一気に人が学園の中へと吸い込まれて行く様は、異様だった。
「あんな人数……入るんだ……」
「何事かと思ったわ……」
「人の流れって、恐ろしいわね……」
道の半分を区切り、学園へ向かう者だけの通り道を兵や騎士達で作ったため、一般の人々の道行きは特に問題はなかったが、それでも黒い人の群れというのは凄かった。
「コウヤ様のお披露目の時より酷かったわね……」
「そりゃあそうだよ。各地で映像として観えたから、それで王都までこなかった人もいた。今回は本人がこないと意味ないから」
他国へも、冒険者ギルドで映像を観ることができた。だから、ここまで来る必要はなかったのだ。もちろん、生で見たいと言う者は居たが、それでもここまでのものではなかった。
「試験だものね。それも今日だけ?」
「いや。学科によって明日と明後日もあるらしい。貴族さんの家の子は、その後だってさ」
「えっ。今日だけじゃないの!? それであの人数?」
「そう。試験結果が五日後。その日の方がすごいかも。二日間張り出されるらしいけど、結果は早く知りたいものだしなあ」
試験の結果をさすがに他の場所で見えるようにはしなかった。
「うわ~……なら、五日分くらい行かなくて良いように、あそこの店の買い物は多めにしておこうかしら……」
「それが良い」
学園までの道の間にある店を利用する者達は、試験時間中にその店での買い物を済ませようと計画する。そうした情報も昼までには騎士達や文官によって周辺住民に伝えられていた。
「思ったほど、混乱はなさそうだね」
コウヤはこの日、町の様子を確認しながら学園に向かって歩いていた。答えたのは冒険者のグラムだ。
「交通整理? をしたからな」
「上手くいって良かったあ。けど、やっぱり人数は多いよね……う~ん……こうなると、学園直通で飛行船の発着場を造るべきかな……貴族の子ども達が居るし、安全面を考慮すると学園内にっていうのは良くないけど」
学園の前で立ち止まったコウヤは、その建物の周りを確認する。
「この辺で使えそうな土地って、もうないよね?」
そう問いかける先では、ニールがノートを広げていた。中には、縮小された地図がある。
「そうですね……この奥に一軒……あるにはありますが」
「え? どこ?」
コウヤはノートを覗き込む。
「この建物の裏です。何代か前の王妃が隠れ家として使っていたと聞いたことがあります」
「え? 今の所有者は?」
「それが……分からないのです……」
「え~……良い場所な気がするんだけどな~」
学園の生徒以外も、ここで乗り降りすることが出来る場所だ。その土地を確認しようと向かうと、幽霊屋敷のような見た目になっていた。
「……ここ、誰か住んでるの?」
「いえ……ですが、土地の税がかなり先払いされておりまして……手が付けられないのです」
「へえ……そんなお金持ち一体誰が……」
そう呟いていれば、不意に声をかけられた。
「コウヤ様? こちらに何かご用でしょうか?」
「ん? サーナさん?」
「はい」
そこに居たのは、神官のサーナだった。そこでコウヤは思い出す。
「あっ! もしかして! 何代か前の王妃っ、ここの土地の持ち主ってっ……」
「ここの土地ですか? 私のです」
「やっぱり!!」
「「「っ!?」」」
グラム達は知らないその事実を、受け止めるのに時間がかかりそうだった。
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