452 / 475
第十三章
557 パンはパン
しおりを挟む
学園のことも、なんとか軌道に乗ったと判断したのは、学園が始まって三ヶ月経った頃だ。
「これで、国内の事は少し落ち着けるかな」
王城の自室で、学園の報告書を読んでそう感想を呟く。だが、ここでほっとしてはいられない。
《なら次は、いよいよ? (*⁰▿⁰*) 》
机の端に居たパックンがパクパクと蓋を動かして主張した。
「そうだね。ジンクおじさん達も、そろそろ決着をつけたいって言ってるみたいだし」
ジンク達、かつての神子達は、白夜部隊の神官達とは別に交代で神教国を見張っていた。
「もうそろそろ、中にある食べられるものが尽きる頃かもって聞いてるしね」
《中に残っているのは、十人も居ないようですが?》
《備蓄、少ないんでしゅねえ》
今日はテンキとダンゴも人化せずリラックスしている。それぞれ好きな場所で寝転がっていたが、顔を上げてため息混じりに会話に交ざる。
「ん? ああ。違うよ。備蓄はそれなりにあるんだよ。けど、多いのは保存の利く小麦とか、芋とかみたいだから」
結界で閉じ込めた場所には、備蓄庫がある。だから、閉じ込めた所で、そうそう飢え死にすることはない。しかし、問題はそれを活用できるかどうかだ。
「ただ、大司教とか、中に残ってる人達は、上の方の立場に居た人たちだから、料理できないみたい」
《……あー……》
《……野菜の種の取り方も知らない愚かな女達と同じですね……》
《え? Σ('◉⌓◉’) パンはパンと思ってるとか……?》
聖女達の料理を思い出し、それぞれが納得する。
「流石に、木に成っているとは思っていないだろうけど、焼き上がって籠で出てくるものだと思っているかも」
《……》
《……》
《 ( ゚д゚) 》
パックン達さえも絶句していた。書類を束ねていたニールが笑う。
「ふふふっ。あの聖女と名乗っていた者達を聖女としていた人たちですからね。芋など、食べ物だと認識すらしていないのではありませんか?」
「ありそう……逆に食べていたら……調理が不十分で、食あたりを起こしていたりして?」
「それはまた、ありそうです」
ジャガイモのような芋はある。芽の所に毒があることも知らない可能性は高い。そして、土が付いていたりすれば、食べ物だとさえ認識しないかもしれない。
「貴族より、そういう知識を知らなさそうだよね」
「ですから、あそこに残っておられるのでは? 外に出るという選択が出来なかった者しか残っていないのではないかと」
「それもそうだね……」
《残念! ( ̄ー ̄) 》
《おバカさん達でしゅ……》
《籠城戦すらできないとは……》
テンキ達としては、既に敵とするのも阿呆らしいと思っていそうだ。
「あそこの大司教達は、このまま自滅するのを待ってもいいんだけど、中のがどうなっているのか、神界からも見えないらしいんだよ。それが不気味でね……」
「ゼストラーク様方でも覗けないと?」
「うん。だから、慎重にジンクおじさん達が調べたり、聖女にじんっ……話を聞いたりしたらしいんだけど」
「ベニ様方が尋問に加わっていて出て来ないのなら、どうにもなりませんね」
「……」
わざわざ言わなかった言葉をあっさりニールが口にしたが、その通りなので頷くだけに留める。あのベニやジンクが尋問して口にしないのならば、本当に知らないのだろう。
「どう対処されるかは決まったのですか?」
「それが、困ってるんだよね……そのまま突っ込むのはやっぱり危険かな……」
「人選はすべきかと思います」
「……だよね……」
コウヤはこうして、次の問題に取り掛かることになった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
少々体調を崩しておりまして
来週一度お休みさせていただきます。
よろしくお願いします!
「これで、国内の事は少し落ち着けるかな」
王城の自室で、学園の報告書を読んでそう感想を呟く。だが、ここでほっとしてはいられない。
《なら次は、いよいよ? (*⁰▿⁰*) 》
机の端に居たパックンがパクパクと蓋を動かして主張した。
「そうだね。ジンクおじさん達も、そろそろ決着をつけたいって言ってるみたいだし」
ジンク達、かつての神子達は、白夜部隊の神官達とは別に交代で神教国を見張っていた。
「もうそろそろ、中にある食べられるものが尽きる頃かもって聞いてるしね」
《中に残っているのは、十人も居ないようですが?》
《備蓄、少ないんでしゅねえ》
今日はテンキとダンゴも人化せずリラックスしている。それぞれ好きな場所で寝転がっていたが、顔を上げてため息混じりに会話に交ざる。
「ん? ああ。違うよ。備蓄はそれなりにあるんだよ。けど、多いのは保存の利く小麦とか、芋とかみたいだから」
結界で閉じ込めた場所には、備蓄庫がある。だから、閉じ込めた所で、そうそう飢え死にすることはない。しかし、問題はそれを活用できるかどうかだ。
「ただ、大司教とか、中に残ってる人達は、上の方の立場に居た人たちだから、料理できないみたい」
《……あー……》
《……野菜の種の取り方も知らない愚かな女達と同じですね……》
《え? Σ('◉⌓◉’) パンはパンと思ってるとか……?》
聖女達の料理を思い出し、それぞれが納得する。
「流石に、木に成っているとは思っていないだろうけど、焼き上がって籠で出てくるものだと思っているかも」
《……》
《……》
《 ( ゚д゚) 》
パックン達さえも絶句していた。書類を束ねていたニールが笑う。
「ふふふっ。あの聖女と名乗っていた者達を聖女としていた人たちですからね。芋など、食べ物だと認識すらしていないのではありませんか?」
「ありそう……逆に食べていたら……調理が不十分で、食あたりを起こしていたりして?」
「それはまた、ありそうです」
ジャガイモのような芋はある。芽の所に毒があることも知らない可能性は高い。そして、土が付いていたりすれば、食べ物だとさえ認識しないかもしれない。
「貴族より、そういう知識を知らなさそうだよね」
「ですから、あそこに残っておられるのでは? 外に出るという選択が出来なかった者しか残っていないのではないかと」
「それもそうだね……」
《残念! ( ̄ー ̄) 》
《おバカさん達でしゅ……》
《籠城戦すらできないとは……》
テンキ達としては、既に敵とするのも阿呆らしいと思っていそうだ。
「あそこの大司教達は、このまま自滅するのを待ってもいいんだけど、中のがどうなっているのか、神界からも見えないらしいんだよ。それが不気味でね……」
「ゼストラーク様方でも覗けないと?」
「うん。だから、慎重にジンクおじさん達が調べたり、聖女にじんっ……話を聞いたりしたらしいんだけど」
「ベニ様方が尋問に加わっていて出て来ないのなら、どうにもなりませんね」
「……」
わざわざ言わなかった言葉をあっさりニールが口にしたが、その通りなので頷くだけに留める。あのベニやジンクが尋問して口にしないのならば、本当に知らないのだろう。
「どう対処されるかは決まったのですか?」
「それが、困ってるんだよね……そのまま突っ込むのはやっぱり危険かな……」
「人選はすべきかと思います」
「……だよね……」
コウヤはこうして、次の問題に取り掛かることになった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
少々体調を崩しておりまして
来週一度お休みさせていただきます。
よろしくお願いします!
1,700
お気に入りに追加
11,119
あなたにおすすめの小説


【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。