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第十三章
541 同情票かね?
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ニールも手にした花の色を変える。赤色になったのを確認して、空に放つようにそっと掲げた。
『選んだ方の色に変え、少し上に掲げてください。そうする事で、その色の場所へと引きつけられていきます』
そうなのかと素直に納得した住民達は、選択した色に花が変わった事を確認して上に掲げると、フワリと花が浮き上がった。
そして、そのままフワフワと同じ色の板の上にある籠に入っていく。
一つ入るとその下の計測器が数字を足していくので、数は一目瞭然だ。
すごい勢いでベニ達の計測器が変化していくのが面白い。ベニ達もそれを見て笑っていた。
「おおっ。これは面白い」
「コウヤらしいねえ」
「皆も楽しそうだわ」
住民達は、キラキラした目でその結果がどうなるかを楽しみにしているのがベニ達の方からはよく見えるようだ。
そんな様子を、手元の画面で見ているコウヤとアビリス王の下に、リルファムとシンリームがやってきた。
その手には花を持っている。
「コウヤにいさまあっ」
駆けてきたリルファムを屈んで抱き止め、コウヤはすかさず、王の侍従達によって用意された椅子にリルファムを座らせる。
「リルもシン様もちゃんと花を持っているんですね。侍従の人たちも、騎士の方達も一緒に、そろそろ投票しましょうか」
「はいっ」
「うんっ。もう既に差ができてきてるけど」
王都中から花が飛んできている。そして、既に赤がかなり多そうだ。
「さすがは、ばばさま」
そう言いながらも、コウヤは手にした花を赤に変えて放った。
「わたしは母上にっ」
リルファムが青色にして花を放した。そして、アビリス王の手元を見る。
「おじいさまは……おばあさまですねっ」
「ああ……そうしないと後が怖い……」
「うん?」
「いやっ。リル。私は黄色にした。いいか? 黄色にしたと覚えておくんだぞ?」
「ん? はい」
証人としてリルファムを選んだらしい。そして、黄色の花をアビリス王が放す。
この場に居る侍女や侍従、騎士達もそれぞれ色を変えて放していた。騎士達は赤の者も居たが、侍従と侍女達は青か黄色を選んでいた。
シンリームはとコウヤが彼の方を見ると、なぜか目が合った。
「シン様?」
「……あ、うん……その、コウヤ君が中にいたら迷わなかったんだけど……」
「ん?」
チラチラとコウヤに目を向けながらも、ぶつぶつと考え込み呟くシンリーム。それを不思議に思っていれば、決めたらしい。
「よし! 素直に決めるならやはり、あの方々です!」
赤に変えたシンリームは空にそれを放った。
しばらくして、結果は目に見えて分かった。
「あの自称聖女達は……同情票かね?」
アビリス王がそれこそ同情的な目で彼女達を見る。同じようにコウヤもそれを見て確認する。
「あの三人にあまり差がなくて良かったと思いましょう。仲間内で言い争いをしそうですし」
「……あり得るなあ……性格がなんとも……」
あんなのが聖女とはと首を横に振る。
そして、リルファムやシンリームも彼女達を見て思う事を口にする。
「なんか……イジワルしそうな、かおをしてます……わたしでもわかります……」
「裏の顔がある特有の表情が見えましたからね……醜い……」
嫌な人だと見た目で判断されたようだ。ドロドロした貴族社会の中の女性達と似ているのだろう。そうした雰囲気をシンリームだけでなく、まだ社交界にも出ていないリルファムでも感じ取れるらしい。
そして、結果は出た。
赤の圧倒的勝利だ。実に王都の住民の六十%がベニ達を選んでいた。残り二十%ずつがイスリナとミラルファへの投票だ。
そして、聖女達に向けられた花は各十個ほどだった。
さすがの聖女達もその数を呆然と見て肩を落としていた。目に見える結果というのに、打ちのめされたようだ。
ベニ達は遠慮なく彼女達の息を止めに行く。
「それで? まだ言いたいことはあるかい?」
「「「……っ」」」
口をぱくぱくさせるだけで、何も言葉にならなかった。確実に痛手にはなったようだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
『選んだ方の色に変え、少し上に掲げてください。そうする事で、その色の場所へと引きつけられていきます』
そうなのかと素直に納得した住民達は、選択した色に花が変わった事を確認して上に掲げると、フワリと花が浮き上がった。
そして、そのままフワフワと同じ色の板の上にある籠に入っていく。
一つ入るとその下の計測器が数字を足していくので、数は一目瞭然だ。
すごい勢いでベニ達の計測器が変化していくのが面白い。ベニ達もそれを見て笑っていた。
「おおっ。これは面白い」
「コウヤらしいねえ」
「皆も楽しそうだわ」
住民達は、キラキラした目でその結果がどうなるかを楽しみにしているのがベニ達の方からはよく見えるようだ。
そんな様子を、手元の画面で見ているコウヤとアビリス王の下に、リルファムとシンリームがやってきた。
その手には花を持っている。
「コウヤにいさまあっ」
駆けてきたリルファムを屈んで抱き止め、コウヤはすかさず、王の侍従達によって用意された椅子にリルファムを座らせる。
「リルもシン様もちゃんと花を持っているんですね。侍従の人たちも、騎士の方達も一緒に、そろそろ投票しましょうか」
「はいっ」
「うんっ。もう既に差ができてきてるけど」
王都中から花が飛んできている。そして、既に赤がかなり多そうだ。
「さすがは、ばばさま」
そう言いながらも、コウヤは手にした花を赤に変えて放った。
「わたしは母上にっ」
リルファムが青色にして花を放した。そして、アビリス王の手元を見る。
「おじいさまは……おばあさまですねっ」
「ああ……そうしないと後が怖い……」
「うん?」
「いやっ。リル。私は黄色にした。いいか? 黄色にしたと覚えておくんだぞ?」
「ん? はい」
証人としてリルファムを選んだらしい。そして、黄色の花をアビリス王が放す。
この場に居る侍女や侍従、騎士達もそれぞれ色を変えて放していた。騎士達は赤の者も居たが、侍従と侍女達は青か黄色を選んでいた。
シンリームはとコウヤが彼の方を見ると、なぜか目が合った。
「シン様?」
「……あ、うん……その、コウヤ君が中にいたら迷わなかったんだけど……」
「ん?」
チラチラとコウヤに目を向けながらも、ぶつぶつと考え込み呟くシンリーム。それを不思議に思っていれば、決めたらしい。
「よし! 素直に決めるならやはり、あの方々です!」
赤に変えたシンリームは空にそれを放った。
しばらくして、結果は目に見えて分かった。
「あの自称聖女達は……同情票かね?」
アビリス王がそれこそ同情的な目で彼女達を見る。同じようにコウヤもそれを見て確認する。
「あの三人にあまり差がなくて良かったと思いましょう。仲間内で言い争いをしそうですし」
「……あり得るなあ……性格がなんとも……」
あんなのが聖女とはと首を横に振る。
そして、リルファムやシンリームも彼女達を見て思う事を口にする。
「なんか……イジワルしそうな、かおをしてます……わたしでもわかります……」
「裏の顔がある特有の表情が見えましたからね……醜い……」
嫌な人だと見た目で判断されたようだ。ドロドロした貴族社会の中の女性達と似ているのだろう。そうした雰囲気をシンリームだけでなく、まだ社交界にも出ていないリルファムでも感じ取れるらしい。
そして、結果は出た。
赤の圧倒的勝利だ。実に王都の住民の六十%がベニ達を選んでいた。残り二十%ずつがイスリナとミラルファへの投票だ。
そして、聖女達に向けられた花は各十個ほどだった。
さすがの聖女達もその数を呆然と見て肩を落としていた。目に見える結果というのに、打ちのめされたようだ。
ベニ達は遠慮なく彼女達の息を止めに行く。
「それで? まだ言いたいことはあるかい?」
「「「……っ」」」
口をぱくぱくさせるだけで、何も言葉にならなかった。確実に痛手にはなったようだ。
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