元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

文字の大きさ
上 下
435 / 475
第十三章

540 投票を始めます

しおりを挟む
ニールが説明を続ける。

『こちらは、可視化された魔力になります。手に取ることで、それぞれの魔力で固定化され、実体化します』

住民達にも、王宮の者達にも、ほぼその原理など分からないが、コウヤ側が用意したものなので、そういうものと思って終わる。

ニールは冷ややかな目を聖女達に向けてから再び口を開く。

『現在、こちらの様子は、この王都中の者が知る事となっております。よって、王都に居る方々全てに投票権が与えられます』
「「「「「おおっ!!」」」」」
「「「え?」」」

聖女達はどういう意味かわからず声を上げる。そこで、壁にある画面に空から見た王都の様子が映し出された。

そこでは、冒険者ギルドや教会、広場などでここと同じ映像が映し出されているのが確認できた。

聖女達はそれを口をポカンと開けて知る。

「……うそ……」
「この町の全員が?」
「……これ、もしかして……っ」

痛い目に合った年若い聖女だけは、いち早く理解した。自分たちは完全に見せ物で、好感度は底辺に落ちているのだと。

青い顔になるが、それを口にして他の二人に教えることはしない。自分だけでも、目立たずに息を殺すしかない。

そうした判断は、彼女がまだ若く、他の聖女達よりも下に見られることがあったために早かったようだ。

『では、投票の仕方についてご説明いたします』

色の付いた二メートル程の高さの板が等間隔に置かれていた。

『赤をベニ大司教様方、お三人に』
「ふむ。仕方ないねえ。私らの見分けは難しかろう」
「代わりに角度をつけるかい」
「いいねえ。私は左斜めに自信がある」
「では、私は右斜めだ」

ベニを中央、正面にし、キイとセイは左右に分かれて斜めに構える。ポージングも完璧だ。

『王妃ミラルファ様は黄色に』
「ふふっ。冒険者仕様の服にすればよかったかしら?」

ミラルファは王妃らしい威厳を持った立ち姿で黄色の板の前に立つ。

『青に王太子妃イスリナ様』
「お義母様達のように強さは見せられませんが、堂々としていることにしますわ」

強め女子なベニ達やミラルファのお陰で、イスリナの穏やかで優しげな印象が引き立っていた。

『残りの緑、黒、白についてはそちらですぐにお選びください』
「「「……はい……」」」

ニールは聖女達には決めろと言う。既に好感度はマイナスに入ろうとしている彼女達。それに気付いているのは最年少の聖女だけだが、上の二人もベニ達の姿を見てかなり怖気付いていた。

それぞれ、相談することなく一番近い板の前に立った。

意外にもすんなり決まったなとニールは内心感心しながら説明を再開する。

『それでは、投票する皆さんの方の準備に入ります。手にあります花を少し手で包むようにして、その色にしたいと念じることで花の色が変わります。何度でも変えられますのでお試しください』
「「「「「……わあっ」」」」」

色変えるをして楽しそうにするのが分かる。

そうして遊んでいる間に、ベニ達の立つ板の後ろから、それぞれ大きな籠とパネルが迫り上がってくる。

パネルには数字の『0』が向かって右端にあった。

『準備できましたでしょうか。それでは、投票を始めます!』
「「「「「おおっ!!」」」」」

王都中から歓声が上がっていた。





**********
読んでくださりありがとうございます◎


しおりを挟む
感想 2,775

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。