元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十一章

439 効果は!?

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初めての種類の薬の体験に、若干煤けて見えるエルフの患者達。苦しんでいた時よりも今の方が静かで大人しい。

「おかしいですね……薬の効き目は確かのはずなんですけど……元気がないです……」

コウヤが心配するほどだ。病院暮らしだったコウヤとしては、時間を気にしてカプセルや錠剤を飲んだり、点滴を受けて痛さや浮腫むのを気にするより、坐薬で一気に片を付ける方が良かった記憶があるため、初めて体験の気持ちが分からなかった。

「まあまあ、アレだよ。初めての治療法にビックリしちゃっただけだから」
「そうですよ。ちょっとビックリしただけですよ。お気になさらず」

やってやったぜと言わんばかりにニヤつきながら、患者達を見下ろしていたジンクとユキ。だが、表情を取り繕い、コウヤの方を振り返って和やかに答えた。

そして、ユキはこの薬に商機ではなく『勝機』を見出した。それを察しているのはニヤつくジンクだけ。

「それより、この薬の作り方を後で教えていただけますでしょうか! 他の薬効でも同じ形で作れますか!?」

コウヤはこれの良さがわかってもらえたと嬉しそうに答えた。

「もちろんですっ。飲む薬よりすぐに体が吸収するので、薬の量も減らせますしねっ。落ち着いたらお教えしますね!」
「よろしくお願いしますっ♪」
「ぷくくっ」

患者達が、目を剥いていることにコウヤは気付かなかった。

彼らも察したのだ。今後、薬はこの形のものを支給されるようになるのだと。

この数ヶ月後。奇しくも、ユキの坐薬大作戦により、薬師になろうとする者たちが現れるようになる。飲むタイプの薬から全て坐薬に変更されたことに、耐えられなくなったのだ。そして、細々とではあるが、エルフ族の中で薬学が復活するのだが、それはまだ知る由もない。

しかし、その努力も実は意味がなくなるのだ。

「ここはもう問題ないですよね。あ、一応状態の確認をしてもいいですか?」
「もちろんです! いくらでも鑑定してしまってください!」

ユキが許可を出す。本来は本人の許可なく鑑定するのは犯罪者でもないので良くないが、自信満々で言われたので、コウヤもまあいいかと確認した。

「じゃあ、俺も~……プハッ! あははははっ」
「うわ~……」

突然笑い出したジンク。その理由は、間違いなく称号だろう。『神を失望させた者』というのは、ユキの居た里の者以外のエルフの里と獣人の里に居た者全員に付いている。それは、ジンクも確認していた。

そこに追加があったのだ。

「ッブハハッ! 『救いようのない愚か者』! あははっ。これは、さっき集まってた奴らにもついてるんだろうな~」
「なんですか? それ。え? 効果は!?」

ユキが目をキラキラさせてジンクに迫っていた。

「う~ん……プフッ、くくくっ」

ジンクは笑いが止まらないらしい。

一方、コウヤは少し申し訳なくも思っていた。

「これは、ユキさんに頑張ってもらわないといけなくなっちゃいました」
「え? 私ですか?」
「うん……その……」
「……はい……?」

ちょっと来てと、コウヤがユキを手招く。そして、皆に聞こえないように耳元で囁いた。

「……この称号が出ちゃった人たち、これから薬は坐薬しか効き目がちゃんと出ないようになっちゃいました……」
「……ブフっっっ、クっ、ふふふっ!!」

もちろん、これだけではなく、他にも細かい制限がかかったようだが、大きな問題となりそうなのはこれだった。

ジンクが笑っている意味が分かり、一緒に爆笑する。ひとしきり、腹を抱えて笑ったユキは、涙目をコウヤに向け、興奮したように上気させた頬をツヤツヤに見せながら言い切った。

「お任せください!! 私はこの里の薬師です! 今後もきっちり面倒見させていただきます!!」
「うん。ふふっ。ユキさんなら安心して任せられそうです」
「はい! もちろんです!!」

ユキはこの里に来た時より、間違いなく生き生きしている。本人としては愉快で仕方がないという笑顔が隠しきれていないし、始終上機嫌だった。

ここはユキやシーレス、ジンクに任せ、コウヤはテンキに乗って冒険者達の様子を確認しに現場へと向かった。

もちろん、棚に立て掛けておいた毒薬の本もちゃんとコウヤは仕舞ったので問題はない。

そして、気になって一番に向かったのは、エルフの弟子に裏切られたサニール達が担当するエリアだ。

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三日空きます。
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