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第十一章
440 涙目になってない?
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エルフたちの里の方は片が付いた。
改めて確認すると、エルフの里が間違いなく安全地帯になっているようだった。ただし、土地の浄化は必要だ。
安全地帯と言っても、迷宮の魔獣や魔物が現れないというだけ。土地自体が呪われているような状態なのは変わらない。
「こうやってみると、野生の魔獣達を仲間にしたのは正解だったね」
《はい。門が壊れていても、門番が居なくても、魔獣が入って来る心配がありませんからね。さすがは主様です》
「思うままに実行しただけだけどね~」
《それでもです》
コウヤの取った行動や、それによって生じた結果は全部肯定したがるのがテンキだ。
エルフたちの今後の薬事情も、テンキからすればあるべき結果なのだろう。
「ふふっ。じゃあ、ちょっと前のお仕置き結果の確認に行こうか」
《……あの愚か者たちですね。参加させているのでしたか》
『神を失望させた者』ではなく、『神を失望させた愚か者』の称号を持つ五人のエルフたちのことだ。
「うん。師匠さんたちとね。ベニばあさまとミラお祖母様の居るエリアなんだ。ちょっと過剰戦力だけど、あの人たちに自分達の状態を確認させるには良いかなって」
ミラルファの一応の護衛としてトルヴァランの宮廷魔法師や近衛騎士も多めに入っているグループだ。明らかに戦力過多だが、足手まといが五人も居るのでそこでマイナスにはなっている。
そろそろ二つ目のエリアの攻略を始めている頃だろうと予想していた。
「とりあえず、ベニばあさまの近くに転移!」
コウヤはテンキと、ベニの側にあった大きな岩の上に転移した。
因みに、セイとキイはそれぞれ違うグループだ。キイはテンキの居たアルキスと同じグループ。セイはビジェと一緒だ。
ベニとミラルファは、コウヤが転移した岩にもたれかかって、休憩中のようだ。
バルーンの色を確認すると、半分の黄緑になる所だった。
「おや。コウヤ。見回りかい?」
「あらあら、コウヤさん、テンキさん、楽しんでいるかしら?」
二人とも、戦場の真ん中に近いというのに、散歩途中のようにとても呑気だ。完全に催し物扱いだった。
「あの人たちどうかなと思って。丁度今、エルフの里を制圧したところなんだ~」
こちらも、物騒な内容をほのぼのとした世間話をするような雰囲気で告げているが、誰もそれは気にしない。この二人の祖母の孫なだけあるよなと、護衛として少し離れた所で様子を見ている騎士達が感心しているとはコウヤも知らない。
「そうかい。どうだったんだい? すぐに言うこと聞いたかね」
「ユキさんってエルフの女性が、拳で黙らせてたよ。族長さんの娘さんだったみたいで」
「ユキ……ユキ? あのユキかねえ?」
「ばばさまを知ってるみたいだったからそうかな」
「ほう。逞しく育ったようで何よりさね」
感想がソレというのはどうなのか。だが、確かに逞しく育っていたと言えるだろう。
「ふふっ。それでねえ、あっ、ちょっと待ってね」
コウヤは確認のためにと、師匠達の側で迷宮の魔獣と戦わされているエルフたちを鑑定した。
「うわ~。こっちも適応したみたいだね……」
《あの者達には、追加で私が治癒魔法が効かないように呪っておきましょうか?》
「いやあ、さすがに……まだ回復薬とかの仕込みが……あっ、『飲み薬は僅かに効く』って……ん~、吸収が遅くなるみたいだね。効くまで時間がかかる感じ」
《それは……休めばいいだけですね》
「だね」
注釈が見えた。里の者たちもそうだろう。普通に休んで、自然回復を待つのとそう変わらなさそうな効果だ。やはり坐薬が有効だろう。
そして、それをベニ達に話した。
「あっはっはっはっはっ。それはなんともっ。戦いながらの補給は無理そうだねえっ」
「まあっ……お尻から……その上、弱くなってるの? 自業自得とはいえ、大変そうねえ」
「高く付いたねえっ。昔から、傲慢なのが多かったが、今はもっとかいっ。頑固な年寄りも多そうだしねえ」
ベニはお気の毒様と笑うだけ。ミラルファも少しばかり同情はするが、自業自得と思っている。
「それで? あの子らもそうなったと」
「常に回復薬飲みながら……お腹タプタプになりながら行くしかないってことかしらねえ。戦線離脱も許さないでしょうし」
サニールら、彼らの師匠達は、生かさず殺さずの絶妙な状態をエルフの弟子たちに維持させているようだ。
逃げないように適度に脅し、追い詰めるように鼓舞する。きちんと指導にもなっているが、罰にもなっていそうだ。
「涙目になってない?」
「出来たことが出来なくなるのはねえ、怖いものさね」
「あ~、うん」
ゲームでリセットされたのと同じ。また一からというのは面倒だし、感覚のズレを修正する必要がありそうだ。
「ゼストパパ達、本気で怒ったみたいだからね」
「それは仕方ないね」
「それは仕方ないわね」
これは神から与えられた罰。受け入れるしかないなと、二人は少しの同情すらもやめたらしい。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
改めて確認すると、エルフの里が間違いなく安全地帯になっているようだった。ただし、土地の浄化は必要だ。
安全地帯と言っても、迷宮の魔獣や魔物が現れないというだけ。土地自体が呪われているような状態なのは変わらない。
「こうやってみると、野生の魔獣達を仲間にしたのは正解だったね」
《はい。門が壊れていても、門番が居なくても、魔獣が入って来る心配がありませんからね。さすがは主様です》
「思うままに実行しただけだけどね~」
《それでもです》
コウヤの取った行動や、それによって生じた結果は全部肯定したがるのがテンキだ。
エルフたちの今後の薬事情も、テンキからすればあるべき結果なのだろう。
「ふふっ。じゃあ、ちょっと前のお仕置き結果の確認に行こうか」
《……あの愚か者たちですね。参加させているのでしたか》
『神を失望させた者』ではなく、『神を失望させた愚か者』の称号を持つ五人のエルフたちのことだ。
「うん。師匠さんたちとね。ベニばあさまとミラお祖母様の居るエリアなんだ。ちょっと過剰戦力だけど、あの人たちに自分達の状態を確認させるには良いかなって」
ミラルファの一応の護衛としてトルヴァランの宮廷魔法師や近衛騎士も多めに入っているグループだ。明らかに戦力過多だが、足手まといが五人も居るのでそこでマイナスにはなっている。
そろそろ二つ目のエリアの攻略を始めている頃だろうと予想していた。
「とりあえず、ベニばあさまの近くに転移!」
コウヤはテンキと、ベニの側にあった大きな岩の上に転移した。
因みに、セイとキイはそれぞれ違うグループだ。キイはテンキの居たアルキスと同じグループ。セイはビジェと一緒だ。
ベニとミラルファは、コウヤが転移した岩にもたれかかって、休憩中のようだ。
バルーンの色を確認すると、半分の黄緑になる所だった。
「おや。コウヤ。見回りかい?」
「あらあら、コウヤさん、テンキさん、楽しんでいるかしら?」
二人とも、戦場の真ん中に近いというのに、散歩途中のようにとても呑気だ。完全に催し物扱いだった。
「あの人たちどうかなと思って。丁度今、エルフの里を制圧したところなんだ~」
こちらも、物騒な内容をほのぼのとした世間話をするような雰囲気で告げているが、誰もそれは気にしない。この二人の祖母の孫なだけあるよなと、護衛として少し離れた所で様子を見ている騎士達が感心しているとはコウヤも知らない。
「そうかい。どうだったんだい? すぐに言うこと聞いたかね」
「ユキさんってエルフの女性が、拳で黙らせてたよ。族長さんの娘さんだったみたいで」
「ユキ……ユキ? あのユキかねえ?」
「ばばさまを知ってるみたいだったからそうかな」
「ほう。逞しく育ったようで何よりさね」
感想がソレというのはどうなのか。だが、確かに逞しく育っていたと言えるだろう。
「ふふっ。それでねえ、あっ、ちょっと待ってね」
コウヤは確認のためにと、師匠達の側で迷宮の魔獣と戦わされているエルフたちを鑑定した。
「うわ~。こっちも適応したみたいだね……」
《あの者達には、追加で私が治癒魔法が効かないように呪っておきましょうか?》
「いやあ、さすがに……まだ回復薬とかの仕込みが……あっ、『飲み薬は僅かに効く』って……ん~、吸収が遅くなるみたいだね。効くまで時間がかかる感じ」
《それは……休めばいいだけですね》
「だね」
注釈が見えた。里の者たちもそうだろう。普通に休んで、自然回復を待つのとそう変わらなさそうな効果だ。やはり坐薬が有効だろう。
そして、それをベニ達に話した。
「あっはっはっはっはっ。それはなんともっ。戦いながらの補給は無理そうだねえっ」
「まあっ……お尻から……その上、弱くなってるの? 自業自得とはいえ、大変そうねえ」
「高く付いたねえっ。昔から、傲慢なのが多かったが、今はもっとかいっ。頑固な年寄りも多そうだしねえ」
ベニはお気の毒様と笑うだけ。ミラルファも少しばかり同情はするが、自業自得と思っている。
「それで? あの子らもそうなったと」
「常に回復薬飲みながら……お腹タプタプになりながら行くしかないってことかしらねえ。戦線離脱も許さないでしょうし」
サニールら、彼らの師匠達は、生かさず殺さずの絶妙な状態をエルフの弟子たちに維持させているようだ。
逃げないように適度に脅し、追い詰めるように鼓舞する。きちんと指導にもなっているが、罰にもなっていそうだ。
「涙目になってない?」
「出来たことが出来なくなるのはねえ、怖いものさね」
「あ~、うん」
ゲームでリセットされたのと同じ。また一からというのは面倒だし、感覚のズレを修正する必要がありそうだ。
「ゼストパパ達、本気で怒ったみたいだからね」
「それは仕方ないね」
「それは仕方ないわね」
これは神から与えられた罰。受け入れるしかないなと、二人は少しの同情すらもやめたらしい。
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