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第五章 王家と守護者と誓約
特別番外編② ユースールの名物
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この番外編は、書籍化されたものの
後日談としての話です。
半月後には第五章の辺りに移動になります。
書籍全4巻よろしくお願いします◎
**********
それはコウヤの一つの呟きから波紋が広がったものだ。
その日は、マリーファルニェから昇級試験を受ける者たちについての報告をもらい、その報告書を作成していた。
場所は草木も茂るマリーファルニェの部屋だ。部屋の中だが、そよそよと気持ちの良い風も吹いている。
《最近は特に、他から来る冒険者が増えたわね~》
「うん。ここまで来る商隊も増えたけど、冒険者も多いよね。それも、なんか目がキラキラしてるの」
数年前まで、ここに来る冒険者達の目はどんよりと曇っているのが普通だった。だが、最近は何かを期待するような、そんな新しい何かを見つけようとする煌めきを持っている者が増えた。
《知ってる?そういう子達、ここで鍛えてここで昇級試験も受けたいって言ってるんですって》
「そうなの?」
このユースールで昇級試験を受けるのは、中々難しい。護衛依頼一つ取っても、受けられるまでに少し時間がかかる。それだけ依頼件数が少ないのだ。王都や他の町ならば、受けようとしたその日に見つけられる依頼も、ここでは数日待つなんてこともザラにあるのだ。
《ふふふっ。待つ間にも鍛えられるから、損はないって張り切ってるらしいわ。何より、ここでの毎日が楽しいって》
「そんな風に……マリーちゃんも嬉しい?」
《もちろんよ! なんて言っても、わたくしは、この土地の守護妖精だもの! 可愛い子ども達が増えるのも、その子達が楽しく過ごしてくれるのも嬉しいわ!》
そんな気持ちが、マリーファルニェのやる気に繋がっていた。
「なら……観光で遊びに来る人たちが増えたら、もっと嬉しい?」
《っ、もちろんよ!》
「そっか。じゃあ、そうなるように、考えてみるねっ」
とっても良い笑顔でコウヤは、まとめた書類を持って部屋を出て行った。
《……何するのかしら……》
少しだけ不安になったマリーファルニェだった。
◆ ◆ ◆
コウヤはどうやってこのユースールを知ってもらおうかと考えながら、町を歩き回っていた。
そこで、子ども達に集られているドラム組の棟梁を見つけた。
「こんにちは。何してるんですか? 棟梁」
「……コウヤか……いや……ジンクに教わった木彫りを……」
少し前まで、ジンクがドラム組に入り浸っていたのは知っている。棟梁とも気が合ったようで、二人して楽しそうに彫り物をしていたのだ。
お陰で今、ドラム組では彫刻ブームが来ており、タンスや椅子などの家具に、見事な装飾の彫り物が施されるようになった。
これにゼットが頭を抱えていたのをコウヤは知っている。
『ただでさえ高いのに! また価値を上げてどうすんだ! 嬉しいだろ!』
困っている訳ではないようなので、そのまま流しておいた。ドラム組は作業が早いので、寧ろ装飾が入ったことで、少し制作にかかる時間も延び、高値を気兼ねなく付けられるようになると喜んでいた。
あっという間に出来るので、ドラム組の者たちとしては、もっと安くて良いから沢山作らせて欲しいというのが総意だ。しかし、良い物は良いため、商業ギルドもこれには頷かなかった。
よって、今回の装飾で時間をかけられるようになるのは、ドラム組の者たちには嬉しいことだったのだ。何よりも長く一つの物、作品に向き合えるのが嬉しいらしい。
仕事大好きな職人さん達だ。
「何を作ったんです?」
子ども達がせがむもの。どんなものが出来るのかと棟梁の手元を覗き込んだ。そこには、手のひらサイズのパックンがいた。
「パックンだ……」
「そうなの!! 可愛いの!!」
因みに、現在パックン達はゲンの店でレナルカを見ながら休憩中である。
「私も! 私も欲しい!」
「ダメダメっ、次私の!」
「……っ、順番だ……」
パックンを作ったのが棟梁の運の尽き。子ども達が周りを囲んで、一人ずつに用意するまで帰してもらえない状態になったようだ。
それにしても見事だった。蓋に表示される絵文字『 \( ˆoˆ )/ 』も可愛らしい。
「これは……すごいですね……あっ、お土産もの屋さんにいいやつだね……そうなるとダンゴやテンキがあっても……」
コウヤの従魔達は、このユースールで間違いなく人気がある。子ども達だけでなく、通り過ぎる大人たちの目を見ても、これはきっと名物の一つになるだろう。
「あっ、なら……っ、棟梁!」
「な、なんだ……?」
「判子作って欲しいです! 記念スタンプ作りましょう!」
「……スタンプ……?」
是非、各名所に記念スタンプを置こうと考えたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
もう少し続きます。
よろしくお願いします◎
後日談としての話です。
半月後には第五章の辺りに移動になります。
書籍全4巻よろしくお願いします◎
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それはコウヤの一つの呟きから波紋が広がったものだ。
その日は、マリーファルニェから昇級試験を受ける者たちについての報告をもらい、その報告書を作成していた。
場所は草木も茂るマリーファルニェの部屋だ。部屋の中だが、そよそよと気持ちの良い風も吹いている。
《最近は特に、他から来る冒険者が増えたわね~》
「うん。ここまで来る商隊も増えたけど、冒険者も多いよね。それも、なんか目がキラキラしてるの」
数年前まで、ここに来る冒険者達の目はどんよりと曇っているのが普通だった。だが、最近は何かを期待するような、そんな新しい何かを見つけようとする煌めきを持っている者が増えた。
《知ってる?そういう子達、ここで鍛えてここで昇級試験も受けたいって言ってるんですって》
「そうなの?」
このユースールで昇級試験を受けるのは、中々難しい。護衛依頼一つ取っても、受けられるまでに少し時間がかかる。それだけ依頼件数が少ないのだ。王都や他の町ならば、受けようとしたその日に見つけられる依頼も、ここでは数日待つなんてこともザラにあるのだ。
《ふふふっ。待つ間にも鍛えられるから、損はないって張り切ってるらしいわ。何より、ここでの毎日が楽しいって》
「そんな風に……マリーちゃんも嬉しい?」
《もちろんよ! なんて言っても、わたくしは、この土地の守護妖精だもの! 可愛い子ども達が増えるのも、その子達が楽しく過ごしてくれるのも嬉しいわ!》
そんな気持ちが、マリーファルニェのやる気に繋がっていた。
「なら……観光で遊びに来る人たちが増えたら、もっと嬉しい?」
《っ、もちろんよ!》
「そっか。じゃあ、そうなるように、考えてみるねっ」
とっても良い笑顔でコウヤは、まとめた書類を持って部屋を出て行った。
《……何するのかしら……》
少しだけ不安になったマリーファルニェだった。
◆ ◆ ◆
コウヤはどうやってこのユースールを知ってもらおうかと考えながら、町を歩き回っていた。
そこで、子ども達に集られているドラム組の棟梁を見つけた。
「こんにちは。何してるんですか? 棟梁」
「……コウヤか……いや……ジンクに教わった木彫りを……」
少し前まで、ジンクがドラム組に入り浸っていたのは知っている。棟梁とも気が合ったようで、二人して楽しそうに彫り物をしていたのだ。
お陰で今、ドラム組では彫刻ブームが来ており、タンスや椅子などの家具に、見事な装飾の彫り物が施されるようになった。
これにゼットが頭を抱えていたのをコウヤは知っている。
『ただでさえ高いのに! また価値を上げてどうすんだ! 嬉しいだろ!』
困っている訳ではないようなので、そのまま流しておいた。ドラム組は作業が早いので、寧ろ装飾が入ったことで、少し制作にかかる時間も延び、高値を気兼ねなく付けられるようになると喜んでいた。
あっという間に出来るので、ドラム組の者たちとしては、もっと安くて良いから沢山作らせて欲しいというのが総意だ。しかし、良い物は良いため、商業ギルドもこれには頷かなかった。
よって、今回の装飾で時間をかけられるようになるのは、ドラム組の者たちには嬉しいことだったのだ。何よりも長く一つの物、作品に向き合えるのが嬉しいらしい。
仕事大好きな職人さん達だ。
「何を作ったんです?」
子ども達がせがむもの。どんなものが出来るのかと棟梁の手元を覗き込んだ。そこには、手のひらサイズのパックンがいた。
「パックンだ……」
「そうなの!! 可愛いの!!」
因みに、現在パックン達はゲンの店でレナルカを見ながら休憩中である。
「私も! 私も欲しい!」
「ダメダメっ、次私の!」
「……っ、順番だ……」
パックンを作ったのが棟梁の運の尽き。子ども達が周りを囲んで、一人ずつに用意するまで帰してもらえない状態になったようだ。
それにしても見事だった。蓋に表示される絵文字『 \( ˆoˆ )/ 』も可愛らしい。
「これは……すごいですね……あっ、お土産もの屋さんにいいやつだね……そうなるとダンゴやテンキがあっても……」
コウヤの従魔達は、このユースールで間違いなく人気がある。子ども達だけでなく、通り過ぎる大人たちの目を見ても、これはきっと名物の一つになるだろう。
「あっ、なら……っ、棟梁!」
「な、なんだ……?」
「判子作って欲しいです! 記念スタンプ作りましょう!」
「……スタンプ……?」
是非、各名所に記念スタンプを置こうと考えたのだ。
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