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第五章 王家と守護者と誓約
特別番外編③ スタンプ大作戦
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彫り物を見て判子をとは提案したが、せっかくゴムも見つけたのだ。これを使わない手はない。
木の判子よりも押しやすいし、傷みづらい。そして彫りやすい。
翌日、用意したゴム板を持ってドラム組へやって来た。
今日はギルドの仕事が休みなので、パックン、ダンゴ、テンキ、それとレナルカも連れて来ていた。
「硬さの調整はこれでいいと思うので、これを掘ってみてください」
「……うむ……」
柔らか過ぎないように調整したゴム板。一辺十センチの正方形で用意した。これに合う木の持ち手をくっつけて、棟梁に手渡す。
それを見て、ドラム組の他の工員達が集まってくる。
「なんだ? 彫り物?」
「スタンプです。こうして……ほら」
「「「「「おおっ」」」」」
試験的にコウヤが彫った三センチ角の印を紙に押してみる。
『(๑>◡<๑)』
パックンがよく表示する顔文字だ。
《コレだね (๑>◡<๑) 》
《面白いでしゅ》
《ふふっ。孤児院の子ども達が手紙にこれを書いてましたよ》
「うだあっ」
孤児院の子ども達が書く手紙や張り紙には、よくパックンが表示する顔文字を入れるのが流行っているようだ。
《あるじ~コレも! d( ̄  ̄) 》
《コレも! (*´꒳`*) 》
《コレも作って! ♪(´ε` ) 》
「ふふっ。パックンセットができそう。いいよ」
スタンプセットは、前世でも子ども達に人気があったなと笑う。
すると、それを見ていたドラム組の工員達が手を挙げる。
「はいはい! 俺が作る!」
「俺もっ、やらせてくれっ」
「俺も!」
「分かりました。じゃあ、コレを同サイズに切ってもらって、パックンセットをお願いします」
「「「任せろ!」」」
《監督する~》
パックンが顔文字を表示させ、見本を見せながらやり始めた。
「これを入れる箱も作ったらいいかな~」
そんなことを呟いたら、すぐにまた手が挙がる。
「任せろ! よしっ、パックンセットだし……これはもう、パックンさんを作るしかねえだろ……っ」
「マジだ。それだ! ピッタリ納まるのを作ってやんぜっ」
そうして、今度はスタンプセットを入れる箱を作りだす者が集まっていった。
「あ、あのさ~。レナルカちゃんの彫刻してもいい?」
「あ、俺、ダンゴちゃんの彫刻したい」
「俺はテンキ教官を!」
「俺は……コウヤが小さくなった時のやつ」
「「「それだ!」」」
なぜか彫刻教室みたいになっていった。
棟梁は、順調に掘り進み、パックンの絵は終わっていそうだ。いくつか十センチ四方の印は渡しているので、もう真剣に周りの声など遮断して進めている。
全部掘り終わり、満足するまで呼んでも目を向けてくれないだろう。
「レナルカも大丈夫そうだし……」
テンキとダンゴがきちんと見ており、クーハンも用意してあるので、眠くなればそこで寝るだろう。
生まれてそれほど経ってはいないが、人の赤子とは違い、もうきちんと周りの言葉も聴こえて理解し始めているようだ。手の掛からない子だった。
「なら俺は、数字スタンプでも作ろうかな……ナンバリングも作りたいんだよね~」
スタンプを作ろうと決めた時、そういえば、数取り機は作ったが、ナンバリングマシンがないなと気付いた。
数字スタンプも作れば、書類の数字の偽造もし辛くなるので良いかなとも考えた。日にちのスタンプも、今後使えるかもしれない。
「あとは、やっぱり御朱印だよね~。カッコいいのを考えないと!」
聖魔教限定の、御朱印を作りたい。これから王都や他の町にも教会を作ることになる。それならば、その教会一つ一つ違うデザインの印を作り、集める楽しみも知ってほしい。
「あっ、店名入りの紙袋も作れるかもっ。後は~」
そうして、一日で沢山の無駄にクオリティの高いスタンプが量産されるのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
もう数話続きます。
よろしくお願いします!
木の判子よりも押しやすいし、傷みづらい。そして彫りやすい。
翌日、用意したゴム板を持ってドラム組へやって来た。
今日はギルドの仕事が休みなので、パックン、ダンゴ、テンキ、それとレナルカも連れて来ていた。
「硬さの調整はこれでいいと思うので、これを掘ってみてください」
「……うむ……」
柔らか過ぎないように調整したゴム板。一辺十センチの正方形で用意した。これに合う木の持ち手をくっつけて、棟梁に手渡す。
それを見て、ドラム組の他の工員達が集まってくる。
「なんだ? 彫り物?」
「スタンプです。こうして……ほら」
「「「「「おおっ」」」」」
試験的にコウヤが彫った三センチ角の印を紙に押してみる。
『(๑>◡<๑)』
パックンがよく表示する顔文字だ。
《コレだね (๑>◡<๑) 》
《面白いでしゅ》
《ふふっ。孤児院の子ども達が手紙にこれを書いてましたよ》
「うだあっ」
孤児院の子ども達が書く手紙や張り紙には、よくパックンが表示する顔文字を入れるのが流行っているようだ。
《あるじ~コレも! d( ̄  ̄) 》
《コレも! (*´꒳`*) 》
《コレも作って! ♪(´ε` ) 》
「ふふっ。パックンセットができそう。いいよ」
スタンプセットは、前世でも子ども達に人気があったなと笑う。
すると、それを見ていたドラム組の工員達が手を挙げる。
「はいはい! 俺が作る!」
「俺もっ、やらせてくれっ」
「俺も!」
「分かりました。じゃあ、コレを同サイズに切ってもらって、パックンセットをお願いします」
「「「任せろ!」」」
《監督する~》
パックンが顔文字を表示させ、見本を見せながらやり始めた。
「これを入れる箱も作ったらいいかな~」
そんなことを呟いたら、すぐにまた手が挙がる。
「任せろ! よしっ、パックンセットだし……これはもう、パックンさんを作るしかねえだろ……っ」
「マジだ。それだ! ピッタリ納まるのを作ってやんぜっ」
そうして、今度はスタンプセットを入れる箱を作りだす者が集まっていった。
「あ、あのさ~。レナルカちゃんの彫刻してもいい?」
「あ、俺、ダンゴちゃんの彫刻したい」
「俺はテンキ教官を!」
「俺は……コウヤが小さくなった時のやつ」
「「「それだ!」」」
なぜか彫刻教室みたいになっていった。
棟梁は、順調に掘り進み、パックンの絵は終わっていそうだ。いくつか十センチ四方の印は渡しているので、もう真剣に周りの声など遮断して進めている。
全部掘り終わり、満足するまで呼んでも目を向けてくれないだろう。
「レナルカも大丈夫そうだし……」
テンキとダンゴがきちんと見ており、クーハンも用意してあるので、眠くなればそこで寝るだろう。
生まれてそれほど経ってはいないが、人の赤子とは違い、もうきちんと周りの言葉も聴こえて理解し始めているようだ。手の掛からない子だった。
「なら俺は、数字スタンプでも作ろうかな……ナンバリングも作りたいんだよね~」
スタンプを作ろうと決めた時、そういえば、数取り機は作ったが、ナンバリングマシンがないなと気付いた。
数字スタンプも作れば、書類の数字の偽造もし辛くなるので良いかなとも考えた。日にちのスタンプも、今後使えるかもしれない。
「あとは、やっぱり御朱印だよね~。カッコいいのを考えないと!」
聖魔教限定の、御朱印を作りたい。これから王都や他の町にも教会を作ることになる。それならば、その教会一つ一つ違うデザインの印を作り、集める楽しみも知ってほしい。
「あっ、店名入りの紙袋も作れるかもっ。後は~」
そうして、一日で沢山の無駄にクオリティの高いスタンプが量産されるのだった。
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読んでくださりありがとうございます◎
もう数話続きます。
よろしくお願いします!
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