元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十一章

426 残念ね……

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エリスリリアは、ユミ、ユリ、ヒナの三人の神子と共に、獣人の里に降り立った。

「ごきげんよう。わたくしはエリスリリア。何者かは……言わなくても分かっているわね?」

これにコクコクと黙って頷く獣人達。

エリスリリアを囲むように立つユミ達は、聖魔教会の制服を着ており、剣は持たないが、女神を守る麗しい女性騎士に見えた。

「今、外で何が起きているのか、理解出来ているかしら」

これにも、獣人達は頷く。

エリスリリアは口元へ優雅に片手を持って行き、笑う。

「ふふっ。では、なぜこうなったのかは?」

獣人達は動きを止めた。

「そう……そうね。この場の迷宮が暴走したのは、必然だったのかもしれないわね。思えば、あなた達は、何もしてこなかった……」
「「「「「っ……」」」」」

責められている。そう感じた獣人達は、首をすくめた。

「外界との関係を断ち、人族が悪いと言うだけで、何もしなかった……」

何のことかと、獣人達は頭を悩ませる。

「口にすることは出来たはずよね? コウルリーヤのことも。それでもしなかった。後になって、加護が消えたと慌てて人族を責めただけだった。そして、今回も……このままでは生きていけないと思って、神教国へ攻め入った。あなた達は、ここまで来ないとそれが出来なかった……残念ね……」
「「「「「っ……」」」」」

神に失望させた。それに、彼らはようやく気付いた。

同じようにこの時、リクトルスがエルフの里でも話している。そして、同じように落胆した。

これにより、彼ら全員に『神を失望させた者』という称号が付いた。

後に知ることだが、これにより、彼らのレベルや身体能力が半分以下に低下した。

「今、あの子達が戦っているのは、あなた達のためでもある。迷宮化によって、この里の土地は影響下に入り、土地が痩せていっている。作物もろくに育たなくなっていたでしょう?」
「あ……」
「え……じゃあ……」

獣人達は痩せていた。外に狩りに行く体力も残ってはいない。辛うじて動けた者達は、神教国へと攻め入るための戦士として出て行っている。

この里に残っているのは、痩せ細り、不幸を嘆き、全ての原因は人族だと恨みを募らせる者たちばかりだ。

「困ったことが起きた時に、誰が悪いのかと決めつけて、責め立てるだけ……自分たちでどうにかしようとは考えない……それで何が変わるの?」
「「「「「っ……」」」」」

文句を言うだけ。コウルリーヤを討った人族が悪いと責めたとして、何が変わるのか。この現状が変わるはずがない。

「人族を見下してはいけないと、コウルリーヤは話したはずよ……」
「「「「「……」」」」」

かつて、コウルリーヤは、寿命の短い人族達を劣等種と言って蔑む獣人族やエルフ族へ忠告した。

「生きる時間が短いからこそ、人族は何かを成そうとする意欲が強い。そこを認め、学ぶべきだと伝えたわ」

種として劣ってはいない。それぞれに欠点があり、誇れる場所がある。そこをお互いに尊重しあい、補っていくべきだとコウルリーヤは説いていた。

違いがあるからこそ、高め合うことで、発展する。だから、どちらも必要なのだと伝えていた。

「コウルリーヤの恩恵を受けておきながら、あなた達はそれを理解しなかった。享受だけしておいて、還元しないのは狡いわよね?」
「「「「「っ……!」」」」」

いつも綻ぶように微笑むエリスリリア。だが、今は艶やかに笑っていた。

彼女も怒っていたのだ。何も成そうとしない彼らに。

「この戦いが終わるまでに、決めてもらいましょう。外に出るか……ここで朽ち果てるか」
「そ、そんなっ」
「め、女神様がそんなこと言うはずがっ……」
「信じないのならそれでも結構よ。私たちの意志は伝えたわ。そう……きちんと称号にも出たはず」

そこで慌ててまだ冷静な者たちがステータスを確認する。

そこに『神を失望させた者』という称号を見つけて愕然とする。

「「「っ、失望……っ」」」
「そうよ。だから、期待はしないわ。選択肢を与えたのは、せめてもの慈悲よ。これからあなた達は生きにくくなるでしょう。覚悟はしておくのね」

そう言い残し、エリスリリアとユミ達は姿を消した。

「……失望させた……」
「神……を……」
「女神を……っ」

何よりも彼らを打ちのめしたのは、愛と再生の女神であるエリスリリアに失望されたのだということだった。

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読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
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