元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

文字の大きさ
上 下
321 / 475
第十一章

426 残念ね……

しおりを挟む
エリスリリアは、ユミ、ユリ、ヒナの三人の神子と共に、獣人の里に降り立った。

「ごきげんよう。わたくしはエリスリリア。何者かは……言わなくても分かっているわね?」

これにコクコクと黙って頷く獣人達。

エリスリリアを囲むように立つユミ達は、聖魔教会の制服を着ており、剣は持たないが、女神を守る麗しい女性騎士に見えた。

「今、外で何が起きているのか、理解出来ているかしら」

これにも、獣人達は頷く。

エリスリリアは口元へ優雅に片手を持って行き、笑う。

「ふふっ。では、なぜこうなったのかは?」

獣人達は動きを止めた。

「そう……そうね。この場の迷宮が暴走したのは、必然だったのかもしれないわね。思えば、あなた達は、何もしてこなかった……」
「「「「「っ……」」」」」

責められている。そう感じた獣人達は、首をすくめた。

「外界との関係を断ち、人族が悪いと言うだけで、何もしなかった……」

何のことかと、獣人達は頭を悩ませる。

「口にすることは出来たはずよね? コウルリーヤのことも。それでもしなかった。後になって、加護が消えたと慌てて人族を責めただけだった。そして、今回も……このままでは生きていけないと思って、神教国へ攻め入った。あなた達は、ここまで来ないとそれが出来なかった……残念ね……」
「「「「「っ……」」」」」

神に失望させた。それに、彼らはようやく気付いた。

同じようにこの時、リクトルスがエルフの里でも話している。そして、同じように落胆した。

これにより、彼ら全員に『神を失望させた者』という称号が付いた。

後に知ることだが、これにより、彼らのレベルや身体能力が半分以下に低下した。

「今、あの子達が戦っているのは、あなた達のためでもある。迷宮化によって、この里の土地は影響下に入り、土地が痩せていっている。作物もろくに育たなくなっていたでしょう?」
「あ……」
「え……じゃあ……」

獣人達は痩せていた。外に狩りに行く体力も残ってはいない。辛うじて動けた者達は、神教国へと攻め入るための戦士として出て行っている。

この里に残っているのは、痩せ細り、不幸を嘆き、全ての原因は人族だと恨みを募らせる者たちばかりだ。

「困ったことが起きた時に、誰が悪いのかと決めつけて、責め立てるだけ……自分たちでどうにかしようとは考えない……それで何が変わるの?」
「「「「「っ……」」」」」

文句を言うだけ。コウルリーヤを討った人族が悪いと責めたとして、何が変わるのか。この現状が変わるはずがない。

「人族を見下してはいけないと、コウルリーヤは話したはずよ……」
「「「「「……」」」」」

かつて、コウルリーヤは、寿命の短い人族達を劣等種と言って蔑む獣人族やエルフ族へ忠告した。

「生きる時間が短いからこそ、人族は何かを成そうとする意欲が強い。そこを認め、学ぶべきだと伝えたわ」

種として劣ってはいない。それぞれに欠点があり、誇れる場所がある。そこをお互いに尊重しあい、補っていくべきだとコウルリーヤは説いていた。

違いがあるからこそ、高め合うことで、発展する。だから、どちらも必要なのだと伝えていた。

「コウルリーヤの恩恵を受けておきながら、あなた達はそれを理解しなかった。享受だけしておいて、還元しないのは狡いわよね?」
「「「「「っ……!」」」」」

いつも綻ぶように微笑むエリスリリア。だが、今は艶やかに笑っていた。

彼女も怒っていたのだ。何も成そうとしない彼らに。

「この戦いが終わるまでに、決めてもらいましょう。外に出るか……ここで朽ち果てるか」
「そ、そんなっ」
「め、女神様がそんなこと言うはずがっ……」
「信じないのならそれでも結構よ。私たちの意志は伝えたわ。そう……きちんと称号にも出たはず」

そこで慌ててまだ冷静な者たちがステータスを確認する。

そこに『神を失望させた者』という称号を見つけて愕然とする。

「「「っ、失望……っ」」」
「そうよ。だから、期待はしないわ。選択肢を与えたのは、せめてもの慈悲よ。これからあなた達は生きにくくなるでしょう。覚悟はしておくのね」

そう言い残し、エリスリリアとユミ達は姿を消した。

「……失望させた……」
「神……を……」
「女神を……っ」

何よりも彼らを打ちのめしたのは、愛と再生の女神であるエリスリリアに失望されたのだということだった。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
しおりを挟む
感想 2,775

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。