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第十一章

427 笑ってる

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獣人達はエリスリリアが消えた後、ゆっくりとその場に座り込んでいった。

そして、映像が映る空を見上げる。

家の中に閉じこもっていた者達も次第に外へ出て、家の壁を背もたれにしたり、寝転んだりして、それを見つめた。

誰かが呟いた。

「……なんで外に出ちゃダメなんだっけ……」
「「「「「……」」」」」

彼らは、何でかなんてことさえ、曖昧になっていたことにようやく気付いた。

「……見捨てられて当然か……」
「「「「「……」」」」」

伝えられてきた話は、コウルリーヤが邪神として討たれたことそれに、参戦・・しなかったという事実のみ。

「何も……しなかった……」

何もしなかったのに、コウルリーヤを討ったことで神を怒らせ、地上から神を失わせたことだけを責めてきた。

「……責める資格もない……なんで、気付かなかったんだろう……」
「コウルリーヤ様を守りもしなかったのに……里を守ってもらったのに……」
「……恩知らず……っ」
「最低だ……っ」

『神を失望させた者』という称号が、彼らに重く伸し掛かる。

「っ……っ、あいつはっ、長老んとこのっ」

映像をただぼんやりと見ていた者達が、自分たちの目を疑った。そこに映っていたのは、里の三人の長老の一人、物静かな長老の里を飛び出して行った息子ではないかと目を丸くする。

「あっ……っ、あの子がっ……」
「生きてた……のか……?」

子どもの時からひ弱で、一族の恥だと貶されていた長男。次男と三男が共謀して半ば里から追い出した男。この里の者ならば、皆知っていた。力よりも知恵を付けるべきだと言い、閉じ籠り続けることは、コウルリーヤ様の本心ではないと訴えていた。

そして、そうまで言うならば出て行けと追い出された男だった。見た目も次男、三男に比べて小さく、細かった。だから、里のすぐ外に広がる森さえ出ることは出来ないだろうと、里の者達は見捨てた。

その彼の面影を持つ青年が先頭に立って戦っていた。

「いや、年取ってねえのはおかしいっ」
「はっ、あ、あいつらも生きてたかっ」
「嘘だろ……っ、あんな……戦えるような奴らじゃなかったはず……っ」

そんな青年を追うように、見覚えのある獣人達が、狩を楽しむように戦っていた。

「っ、人族とあんな……っ」

ひと息吐くと、人族と親しげに話し、肩を叩き合う。

映像は複数の場面を写しているため、音声はない。だが、その表情を見ればわかった。信頼し合っていることが。

この獣人の里で見られる映像は、故意に獣人達が多く見られる場面を選択させたのだ。それはエリスリリアが消えてからのことだった。そうすることで、彼らにきちんと現実を見せることにした。

「あいつら……笑ってる……体格も昔と全然違う……」
「あっ、や、やっぱり違うっ」

追われた長男だと思っていた青年の所に、笑いながら近付いてきた男性。それこそが、彼だった。

「っ……息子……なのか……っ」
「見た目の年齢を考えれば……そうなる……かもな……」
「……立派な鎧……」
「っ、強い……」

昔とは考えられないくらい明るく笑い、人族と連携を取りながら魔獣を圧倒していく姿に、誰もが惹かれた。獣人は、強さに惹かれる傾向がある。

そこには、かつて弱者と貶され、泣いていた子の面影はなかった。

「外に……出たからか……?」
「っ、なんで、笑ってんだよっ」

よくよく見ていれば、そうして追い出した者や、自分の意思で出て行った者達が、生き生きと戦っている。獣人達にとっては、絶望的な量の魔獣が向かってきているというのに、それをものともしていなかった。

それを悔しげに、信じられない思いで、彼らは見つめることしかできない。

眉根を寄せながらも、どうしてもそこから目を逸らすことが出来なかったのだ。

自分たちとの圧倒的な差を認めるしかなかった。

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二日空きます。
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