元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十一章

421 元気でよろしい♪

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コウヤの武器の一つ。羽ペンゴーレムの『なないろ』は、跳弾を駆使して獲物を追い込む戦法も使う。それぞれ属性の違う魔力弾を打ち出せ、時にそれを合わせるのだ。

ボス戦でも、もはや楽に完勝することができるというのは、一部の冒険者がテンキ達に聞いて知っていた。

その戦い方も、トルヴァランの宮廷魔法師や、ユースールの冒険者の中にいる魔法師達には教えている。

「球突きゲーム。面白いよな~」
「知らん間に体力も付くしねっ」
「おにごっこより、燃えるんだよっ」

ユースールでは、他の冒険者達と領兵達を交えた『おにごっこ』と共に、専用のフィールドを用意しての魔法跳弾でのポイントゲームが流行していた。魔法師達だけの特別な訓練だ。

「ずるいよな~。あれ、見るのめっちゃ楽しいけど」
「俺も魔法師になれればって……最近よく思うわ……」

コウヤが『なないろ』の調整と訓練のために始めたものだったが、それを見て魔法師達が食いついたのだ。

「魔法で弾くんだもんな。それも魔力弾の威力調整しながら? アレやりだして、うちのやつ、めちゃくちゃ魔法の精度が上がってんだけど。もう俺ら要らんくらい……」
「最近、魔法師達が無双するよな……ちょいテンションも怖い時あるし……」
「後衛配置で、援護だけだったもんな……それが……なんで前衛来んの? 魔法師って後衛でしょ?」

コウヤとリクトルス監修の魔法師だけの特別訓練。それがこの『跳弾ポイントゲーム』だった。自分たちで魔法を弾く結界や強化を使うため、魔法師達の魔法発動の反射速度も飛躍的に上がった。

今回は、これを活かせる魔法師達がいる。コウヤは冒険者達の攻撃が弾かれることを攻撃の一つとして使って欲しかった。

魔獣達にも話してあるのだ。魔法など向けられても、それを利用して攻撃してくれればいいからと。少しは怖がるかと思いきや、任せろという気迫が返ってきて、頼もしいとリクトルス達と笑った。

野生の魔獣達にとっては、人が討伐のために魔法や武器を向けてくることなど、当たり前のことであり、日常なのだ。

『次に、怪我や魔力不足になった場合の対処ですが、怪我については、既に各フィールドの一部に結界を張り、安全地帯を作っています』

ここで一つのフィールドが映し出され、ドーム型の結界が確認できた。

『怪我の具合や魔力不足など、危ない状況であれば、聖魔教の神官達が空から救援しますので、ご安心ください』

今度は、空でバイクに乗って待機する神官達の姿に映像が切り替わる。空から援護と聞いてもあまり実感は湧かない。そんな状況など、経験がないからだ。

けれど、多少の怪我は全く問題にならないと知れただけで彼らには十分だ。更には、聖魔教会の実力を知っているトルヴァラン組が得意げに伝える。

「神官様達が助けてくれるんなら安心だよな~」
「すぐ治るもんなっ。すぐにそのまま、また仕事に出たら、めっちゃ怒られたけどっ。動けるんだもん。しゃあないよなあ」
「そうそうっ。あっ、でも毒とかは? 薬はどうするんだ?」

この疑問が聞こえたというように、タイミングよく、コウヤが答える。

『フィールドによっては、毒持ちばかりの所もあります。そちらの担当の方々には、毒中和の香袋を用意しております。危険な状態の方には、もちろん神官達が適切な薬を届けて助けますので、そちらも心配は要りません』

トルヴァランの宮廷薬師はもちろん、ゲンによって作られた薬が各種大量に用意されている。効果は抜群だ。

「コウヤが言うなら、心配ないな。毒中和の香は、ちょい前にゲンさんのとこで売り出したやつだよな。アレ、めちゃくちゃ効くぜ」
「それなっ。匂いも悪くないし、その匂いが体についてると、毒持ちが噛み付くのにちょい身構えるんだよな」
「ああ。あれで毒持ちか分かるし、隙ができる。こっちが毒持ちだからって身構える時間がなくなるのがいいんだよな」

毒持ちに出会う時、警戒して身構える時間が要る。絶対に食らったらいけないのだ。普通の魔物相手の時とは、一テンポ必ず遅れる。それが逆に危なかった。しかし、これがあると思えば、その一テンポ先に動ける。一手先にというのは、生き死にがかかる場合には重要だ。

再びコウヤが映る。

『次に、フィールド中央辺りに浮いているバルーンです。これは、各フィールドの戦況をお知らせします。今は赤ですが、四分の一の撃破で黄色。半分で黄緑。四分の三で青。ボスの出現で黒。ボス撃破で白と色を変えます』

土地の魔力を精霊達に観測してもらい、それを元に試算して分かるようにした。

「すごい……それ、分かりやすいな」
「どうなってんだ?」
「マジ、それ助かるじゃん」

そこで突然、コウヤの右側に映り込むものがあった。

『これは、コウルリーヤが開発したのっ。すごいでしょう? あっ、私はエリスリリア。今回は、私達も手を貸すわ。討伐に直接は関われないけれどね♪』
「「「「「……」」」」」
「女神……」

呆然とする多くの冒険者達。しかし、トルヴァラン組は違う。

「「「エリィさまぁぁっ」」」
「「「エリィちゃぁぁん」」」
「「「がんばりま~す」」」
『ふふふっ。トルヴァランの子達ね。今日も元気でよろしい♪』
「「「「「はいっ!!」」」」」

他国の冒険者達は、なんだこれと訳の分からない様子だ。

そして、エリスリリアとは反対側から、今度はリクトルスが顔を出す。

『私はリクトルスです。戦況が難しくなった場合、指揮を担当しましょう。その場合は、確実な勝利を約束します』
「っ、ぶ、武神様!?」
「り、リクトルス様って……っ」

そして、これもトルヴァラン組は大盛り上がりだ。

「「「おぉぉぉっ。リクトさまぁぁぁ」」」
「訓練の成果見てくださぁぁい!!」
「俺らの成長を見せます!!」
「私も、私もっ!!」
「完勝して見せますよっ」
「「「勝ちます!!」」」

冒険者の中にリクトルスのファンは多い。

『やる気は十分のようですね。いいでしょう。無様な姿を見せたら、基礎練メニューを倍にして課しますからね。そのつもりで』
「「「基礎練!?」」」
「それって、落第……」
「それじゃんっ。ようやくこの前、本クラスに上がれたのに!?」
「勝つ! 絶対勝つぞ!!」
「「「「「おぉぉぉぉっ!!」」」」」

リクトルスの訓練を直接受けられる者はそれほど多くはない。それ以外は基礎練だ。とはいえ、これはリクトルスの作るメニューなので、十分に効果はある。

「……トルヴァランの奴ら……どうなってんの?」

彼らの異常な気迫に、周りにいる他国の冒険者達は、ドン引きしていたが、そんなことなど、トルヴァランの者たちは気にしていない。

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読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
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