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第十一章
417 緊急特別依頼!
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その日、各国、各町にある冒険者ギルドに、それは貼り出された。
『緊急特別依頼!
迷宮化する土地での迷宮魔獣の討伐作戦に参加する者を求む!
参加資格:制限なし
期間:最低丸一日~
報酬:金貨一枚~上限なし
・現場までの移動手段あり
・怪我等の治療体制あり
ただし、必ず作戦の指示に従うこと!』
国際会議前から、迷宮化についての情報は広めていた。迷宮化を放置すれば範囲は広がっていき、いずれは町や国も呑み込んで、人が住めない土地になっていくという確かな情報として流したのだ。
すでに、小さな集落や村がこれによりなくなっているのを知っている者も居り、それらの情報は一般の人々にも伝えられていた。
「なら、あそこは呪われた森じゃなくて……迷宮だったのか……」
「だから言ったじゃねえかっ。村がなくなったって!」
「本当だったのか……」
「迷宮が土地を食うってことだよな。この町は大丈夫なのか?」
「森……広がってきてたって、聞いたけど……それがまさか……」
不安に思いながらも、人々は今まで村がなくなったなどと、ただの噂だと思っていたことが本当だったのだと理解していった。
会議終了後には、国からもそれを解決する方法があり、それを決行すると公表した。これには全ての国が協力し、冒険者達を支援するとのことで、当事者となる冒険者を含めた全ての人々が驚愕した。
「マジで? 国が?」
「国が報酬を出すのか……支援ってマジかよ……」
「高ランクの奴らだけじゃねえの?」
冒険者は国から切り離された存在だ。とはいえ、少しではあるが滞在中の国には冒険者ギルド経由で税を納めている。これにより、邪険にされることはない。
しかし、国とは時折、依頼主として関わることはあっても、支援するなんてことはまずあり得なかった。国というか、当然のように騎士や兵士達は冒険者をただの乱暴者とバカにする。喧嘩など問題を起こすため、その認識が仕方のない部分も確かにあった。
冒険者達も、国とは関係のない立場だと認識しているため、自分達の行動を制限される謂れはないと思っているから余計に拗れていた。
「なんか……兵士達の態度がおかしかったよな……」
「おう……なんか……敵意みたいなのが消えた? みたいな」
「あれだよな。いつも感じる『お前ら何かするだろ』って疑いの目がないんだよ」
「それだっ」
「俺……ご苦労さんって言われた……」
「わ、私も……下心があるとかじゃなくて、多分普通に……」
「どうなってんの?」
トルヴァラン国内では、そろそろ当たり前になってきた冒険者と国の兵達の関係。それが急激に他国にも広がっていたのだ。
会議の後の交流会で、トルヴァラン国の変化を聞き、それを支持する神たちの存在もあり、実際に代表者たちは現場を見せてもらっていた。そして、それによる変化も知り、これを自国にも採用したのだ。
王族や貴族達が口を揃えて、冒険者達とも良好な関係を築くことと言われれば、下は従う。ただ、中には納得しない者もいる。それらは、きちんと対応できるようになるまで訓練のようだ。
ここ数年、他国との関係は良くもなく悪くもない。これまではほとんど不干渉というものだった。商業ギルドや冒険者ギルドといった独自の組織があるため、物流についても特に問題もなく、他国と関わって、優劣を刺激し合う必要もなかった。
だから、国としての発展は停滞するし、良いことも悪いことも国主導ですることがない。平和といえば平和だ。しかし、貧しい国は貧しいまま変化がなく、ゆっくりと衰退するだけというのが多くの国の現状だった。
それを考えると、これは大きな変化だ。
「それだけ、今回の仕事での俺らの役割が重要ってことだよな」
「ああ……ついに出たしな『緊急特別依頼』」
「迷宮化か……俺、聞いたんだけど、すっげえ昔にもあったんだってさ。それで、本当に国とか丸々無くなったらしい」
「え……それマジな話?」
「おう。国が集まって会議したって言ってたろ? そこで話が出たらしい」
「……本気でヤバい事態なんだな……」
国際会議の場で過去にあった迷宮化のことも話がされており、リモート会議もうまくいったことで、それらも漏れ聞こえている。
特に情報を大事にする一部の冒険者達は、それを知って気を引き締める。
「俺らしかどうにもできねえんだ」
「やるしかないな」
「住んでる場所がなくなるのは嫌だしな」
そして、覚悟は決まっていく。そんな中、その話が飛び込んできた。
「なあなあっ。今回の作戦の指揮。誰が執るか聞いたか!?」
特に冒険者ギルドも黙秘しているわけではないため、唐突に、そして確実にそれは広がって行った。
今回は特に、但し書きで『必ず作戦の指示に従うこと』としてある。誰が指揮を執るのかというのは、冒険者達も気にして不安に思っていた。もしや国が執るのではないかとも思っていたため、それを知れたことで衝撃は大きかった。
「前グランドマスターで最年長の元Sランクのタリス・ヴィットに、現グラマスのシーレスはまだ分かるんだが……神が補佐するらしい……」
「「「「「はあ?」」」」」
訳が分からないだろう。だが、噂としては流れて来ていた。この世界の四神が顕現するようになったと。それも神教会を見限り、新たな聖魔教と呼ばれる教会に、邪神として討伐されたコウルリーヤ神も神として戻り、支持していると。
「嘘じゃねえ……武神リクトルス神やエリスリリア様、ゼストラーク様だけじゃなく、聖魔神となられて復活されたコウルリーヤ神も作戦をサポートしてくれるって……」
「「「「「はああああ!?」」」」」
国際会議にて姿を確認出来た者は多い。よって、これは嘘ではないと次第に肯定されていった。
特に、コウルリーヤについての噂はどんどん広まっていた。各国の代表達だけでなく、リモート会議でその姿を見た貴族は、その姿と邪神という印象の違いに戸惑った。しかし、見たものは間違いようがない。
邪神としたのは当時の神教国の者だとの話も流れたことで『邪神などというのは神教国が流した妄言だ』というのが広がった。迷宮化の問題の根本的な所も神教国が悪いとの声も聴こえていたため『コウルリーヤ神は邪神などではない』と言われるようになった。
穏やかで素敵な青年神というのが、今のコウルリーヤ神の認識だ。一度見た貴族達が、もう一度、一目でいいから見たいと願う魅力的な存在。
そんな神がサポートをする。半信半疑ながらも、それが本当だったらいいのにと願う者は日に日に増えていく。そして、その時はやってきた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
『緊急特別依頼!
迷宮化する土地での迷宮魔獣の討伐作戦に参加する者を求む!
参加資格:制限なし
期間:最低丸一日~
報酬:金貨一枚~上限なし
・現場までの移動手段あり
・怪我等の治療体制あり
ただし、必ず作戦の指示に従うこと!』
国際会議前から、迷宮化についての情報は広めていた。迷宮化を放置すれば範囲は広がっていき、いずれは町や国も呑み込んで、人が住めない土地になっていくという確かな情報として流したのだ。
すでに、小さな集落や村がこれによりなくなっているのを知っている者も居り、それらの情報は一般の人々にも伝えられていた。
「なら、あそこは呪われた森じゃなくて……迷宮だったのか……」
「だから言ったじゃねえかっ。村がなくなったって!」
「本当だったのか……」
「迷宮が土地を食うってことだよな。この町は大丈夫なのか?」
「森……広がってきてたって、聞いたけど……それがまさか……」
不安に思いながらも、人々は今まで村がなくなったなどと、ただの噂だと思っていたことが本当だったのだと理解していった。
会議終了後には、国からもそれを解決する方法があり、それを決行すると公表した。これには全ての国が協力し、冒険者達を支援するとのことで、当事者となる冒険者を含めた全ての人々が驚愕した。
「マジで? 国が?」
「国が報酬を出すのか……支援ってマジかよ……」
「高ランクの奴らだけじゃねえの?」
冒険者は国から切り離された存在だ。とはいえ、少しではあるが滞在中の国には冒険者ギルド経由で税を納めている。これにより、邪険にされることはない。
しかし、国とは時折、依頼主として関わることはあっても、支援するなんてことはまずあり得なかった。国というか、当然のように騎士や兵士達は冒険者をただの乱暴者とバカにする。喧嘩など問題を起こすため、その認識が仕方のない部分も確かにあった。
冒険者達も、国とは関係のない立場だと認識しているため、自分達の行動を制限される謂れはないと思っているから余計に拗れていた。
「なんか……兵士達の態度がおかしかったよな……」
「おう……なんか……敵意みたいなのが消えた? みたいな」
「あれだよな。いつも感じる『お前ら何かするだろ』って疑いの目がないんだよ」
「それだっ」
「俺……ご苦労さんって言われた……」
「わ、私も……下心があるとかじゃなくて、多分普通に……」
「どうなってんの?」
トルヴァラン国内では、そろそろ当たり前になってきた冒険者と国の兵達の関係。それが急激に他国にも広がっていたのだ。
会議の後の交流会で、トルヴァラン国の変化を聞き、それを支持する神たちの存在もあり、実際に代表者たちは現場を見せてもらっていた。そして、それによる変化も知り、これを自国にも採用したのだ。
王族や貴族達が口を揃えて、冒険者達とも良好な関係を築くことと言われれば、下は従う。ただ、中には納得しない者もいる。それらは、きちんと対応できるようになるまで訓練のようだ。
ここ数年、他国との関係は良くもなく悪くもない。これまではほとんど不干渉というものだった。商業ギルドや冒険者ギルドといった独自の組織があるため、物流についても特に問題もなく、他国と関わって、優劣を刺激し合う必要もなかった。
だから、国としての発展は停滞するし、良いことも悪いことも国主導ですることがない。平和といえば平和だ。しかし、貧しい国は貧しいまま変化がなく、ゆっくりと衰退するだけというのが多くの国の現状だった。
それを考えると、これは大きな変化だ。
「それだけ、今回の仕事での俺らの役割が重要ってことだよな」
「ああ……ついに出たしな『緊急特別依頼』」
「迷宮化か……俺、聞いたんだけど、すっげえ昔にもあったんだってさ。それで、本当に国とか丸々無くなったらしい」
「え……それマジな話?」
「おう。国が集まって会議したって言ってたろ? そこで話が出たらしい」
「……本気でヤバい事態なんだな……」
国際会議の場で過去にあった迷宮化のことも話がされており、リモート会議もうまくいったことで、それらも漏れ聞こえている。
特に情報を大事にする一部の冒険者達は、それを知って気を引き締める。
「俺らしかどうにもできねえんだ」
「やるしかないな」
「住んでる場所がなくなるのは嫌だしな」
そして、覚悟は決まっていく。そんな中、その話が飛び込んできた。
「なあなあっ。今回の作戦の指揮。誰が執るか聞いたか!?」
特に冒険者ギルドも黙秘しているわけではないため、唐突に、そして確実にそれは広がって行った。
今回は特に、但し書きで『必ず作戦の指示に従うこと』としてある。誰が指揮を執るのかというのは、冒険者達も気にして不安に思っていた。もしや国が執るのではないかとも思っていたため、それを知れたことで衝撃は大きかった。
「前グランドマスターで最年長の元Sランクのタリス・ヴィットに、現グラマスのシーレスはまだ分かるんだが……神が補佐するらしい……」
「「「「「はあ?」」」」」
訳が分からないだろう。だが、噂としては流れて来ていた。この世界の四神が顕現するようになったと。それも神教会を見限り、新たな聖魔教と呼ばれる教会に、邪神として討伐されたコウルリーヤ神も神として戻り、支持していると。
「嘘じゃねえ……武神リクトルス神やエリスリリア様、ゼストラーク様だけじゃなく、聖魔神となられて復活されたコウルリーヤ神も作戦をサポートしてくれるって……」
「「「「「はああああ!?」」」」」
国際会議にて姿を確認出来た者は多い。よって、これは嘘ではないと次第に肯定されていった。
特に、コウルリーヤについての噂はどんどん広まっていた。各国の代表達だけでなく、リモート会議でその姿を見た貴族は、その姿と邪神という印象の違いに戸惑った。しかし、見たものは間違いようがない。
邪神としたのは当時の神教国の者だとの話も流れたことで『邪神などというのは神教国が流した妄言だ』というのが広がった。迷宮化の問題の根本的な所も神教国が悪いとの声も聴こえていたため『コウルリーヤ神は邪神などではない』と言われるようになった。
穏やかで素敵な青年神というのが、今のコウルリーヤ神の認識だ。一度見た貴族達が、もう一度、一目でいいから見たいと願う魅力的な存在。
そんな神がサポートをする。半信半疑ながらも、それが本当だったらいいのにと願う者は日に日に増えていく。そして、その時はやってきた。
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