元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十章

416 おせっきょう?

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ニールがブランナをコウヤの椅子にしたこと、自分が席を外す間の護衛としても役立っていたと説明したことで、ブランナはそれほど責められることなく解放された。

パックンが子ども椅子を出したため、ブランナも移動する。更に大きなテーブルをもう一つ出し、椅子も人数分並べた。

そして、昼食が並べられていく。

「わっ、おこさま  らんちランチ! たのんでくれたの?」
「はい。お気に召しましたでしょうか」
「うん!  ありがとう、にーるニールっ」
「っ、はい」

ニールに最高の笑顔が向けられた。

だが、それを羨ましがる暇はなかった。幼児化したコウヤが、お子様用のスプーンを握って、お子様ランチを食べるのだ。

「「「「「っ、かわいいっ……っ」」」」」

これもご褒美だった。この場は、全員で全力でこの幸せを享受しようと、心が一致した瞬間だった。

コウヤの仕草に一々悶絶しながらの昼食が終わると、コウヤは先ほど決めた印について伝えた。それを描いた紙を掲げて見せる。

「あのねっ。じゅうま従魔まじゅう魔獣たちにつけるしるしなんだけど、しえんじ四円柱にしようとおもうんだっ」

これに、エリスリリアが同意する。

「あら。いいんじゃないかしら。元々、文字が書けなくても、簡単に誰でも描けるから、その形にしたものだしね~」

これに、ジルファスが何かを思い出すように視線を宙に投げ、その視線をコウヤの持つ紙に向ける。そして、頬を緩ませて頷いた。

「そうだったのですか。確かに、小さな子どもでも丸は書けますね。リルの初めてのお絵描きも、丸は上手に描けていました」
「そうそう。小ちゃい子でも描けるのっ。可愛いわよね~。グルグル描くのっ」
「可愛いですねえ。真剣にグルグルするの」

エリスリリアとジルファスがうんうんと頷く。そこに、思わずといったようにブランナが呟いた。

「本当に可愛らしかったです……っ」
「「「「「っ!」」」」」

幸せそうな笑みを浮かべるブランナに、視線が集まる。そして、それが次にコウヤへ向かう。

「ん?」

そのあと、半ばお願いされて、コウヤは改めて紙に四円柱を描いて見せた。誰もがもれなく癒されたようだ。アビリス王やベルナディオ宰相も、これで辛い書類仕事も乗り越えられると拳を握っていた。目に焼き付けたらしい。

そして、コウヤは姿を見せぬようにし、午後の会議が始まった。神教国の現状やこれまでの活動について、改めて伝えられた。

治療中の者たちについても伝える。このまま全快するまで聖魔教会で預かることになるが、その間会えないわけではない。

中には女王もいるのだ。正式に代理を立て、数日に一度は直接連絡を取れるように約束した。リモート会議にて参加もできるよう援助するつもりだ。

会議が終わり、帰国までの残り二時間ほどは、それぞれの国で思い思いに過ごしてもらった。立食パーティのように、お茶やお菓子を用意したのだ。繋がりを持とうと話し合いをしたい国は、話し合いをしてもらった。

ただ、治療中の女王など、治療を受けている者たちと関係のあった国はそうはいかなかった。

コウヤは護衛として残ったブランナと一緒に、そんな会場の様子を映像で見ていた。

「あっ、すわら座ら されてる?」
「本当ですね……怒っておられるような……」
「おせっきょう《お説教》?」
「……のようですね……」

そう。彼らはこの後、一時間ほどはお説教されていた。会場を出ることなく、片隅に連れて行かれ、そこで正座させられていたのだ。女王など、まだ体が万全ではないので車椅子だ。よって、地べたに正座となったらしい。

追放された王子達も、それを冷めた目で見つめている。

代表達が背を丸めて正座させられている光景に、ベニやエリスリリア達は笑っていた。

「……しょんぼりしてる……」
「大人でも、怒られる時は同じなんですね……」

その後、約束通りの時間に全員を国まで送り届け、ようやく長い一日が終わった。

「おつかれさま」

幼児姿のコウヤにそう言われて、神官たちもやり切った顔をしていた。

何はともあれ、初の国際会議は無事終了したのだ。だが、これは始まりだった。

「さあ、お金の問題も無くなったし、これからが本番! 僕達の本領発揮だよ!」
「はい!」

いよいよ、迷宮の討伐が始まる。

因みに、幼児化したコウヤが元に戻るまで、城へ教会へ冒険者ギルドへと、忙しくコウヤは運ばれてまくっていたというのは、予想通りの光景だった。ユースールの住民も、王宮組も心底癒されたのだからよかったのだろう。

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読んでくださりありがとうございます◎
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