上 下
311 / 455
第十章

416 おせっきょう?

しおりを挟む
ニールがブランナをコウヤの椅子にしたこと、自分が席を外す間の護衛としても役立っていたと説明したことで、ブランナはそれほど責められることなく解放された。

パックンが子ども椅子を出したため、ブランナも移動する。更に大きなテーブルをもう一つ出し、椅子も人数分並べた。

そして、昼食が並べられていく。

「わっ、おこさま  らんちランチ! たのんでくれたの?」
「はい。お気に召しましたでしょうか」
「うん!  ありがとう、にーるニールっ」
「っ、はい」

ニールに最高の笑顔が向けられた。

だが、それを羨ましがる暇はなかった。幼児化したコウヤが、お子様用のスプーンを握って、お子様ランチを食べるのだ。

「「「「「っ、かわいいっ……っ」」」」」

これもご褒美だった。この場は、全員で全力でこの幸せを享受しようと、心が一致した瞬間だった。

コウヤの仕草に一々悶絶しながらの昼食が終わると、コウヤは先ほど決めた印について伝えた。それを描いた紙を掲げて見せる。

「あのねっ。じゅうま従魔まじゅう魔獣たちにつけるしるしなんだけど、しえんじ四円柱にしようとおもうんだっ」

これに、エリスリリアが同意する。

「あら。いいんじゃないかしら。元々、文字が書けなくても、簡単に誰でも描けるから、その形にしたものだしね~」

これに、ジルファスが何かを思い出すように視線を宙に投げ、その視線をコウヤの持つ紙に向ける。そして、頬を緩ませて頷いた。

「そうだったのですか。確かに、小さな子どもでも丸は書けますね。リルの初めてのお絵描きも、丸は上手に描けていました」
「そうそう。小ちゃい子でも描けるのっ。可愛いわよね~。グルグル描くのっ」
「可愛いですねえ。真剣にグルグルするの」

エリスリリアとジルファスがうんうんと頷く。そこに、思わずといったようにブランナが呟いた。

「本当に可愛らしかったです……っ」
「「「「「っ!」」」」」

幸せそうな笑みを浮かべるブランナに、視線が集まる。そして、それが次にコウヤへ向かう。

「ん?」

そのあと、半ばお願いされて、コウヤは改めて紙に四円柱を描いて見せた。誰もがもれなく癒されたようだ。アビリス王やベルナディオ宰相も、これで辛い書類仕事も乗り越えられると拳を握っていた。目に焼き付けたらしい。

そして、コウヤは姿を見せぬようにし、午後の会議が始まった。神教国の現状やこれまでの活動について、改めて伝えられた。

治療中の者たちについても伝える。このまま全快するまで聖魔教会で預かることになるが、その間会えないわけではない。

中には女王もいるのだ。正式に代理を立て、数日に一度は直接連絡を取れるように約束した。リモート会議にて参加もできるよう援助するつもりだ。

会議が終わり、帰国までの残り二時間ほどは、それぞれの国で思い思いに過ごしてもらった。立食パーティのように、お茶やお菓子を用意したのだ。繋がりを持とうと話し合いをしたい国は、話し合いをしてもらった。

ただ、治療中の女王など、治療を受けている者たちと関係のあった国はそうはいかなかった。

コウヤは護衛として残ったブランナと一緒に、そんな会場の様子を映像で見ていた。

「あっ、すわら座ら されてる?」
「本当ですね……怒っておられるような……」
「おせっきょう《お説教》?」
「……のようですね……」

そう。彼らはこの後、一時間ほどはお説教されていた。会場を出ることなく、片隅に連れて行かれ、そこで正座させられていたのだ。女王など、まだ体が万全ではないので車椅子だ。よって、地べたに正座となったらしい。

追放された王子達も、それを冷めた目で見つめている。

代表達が背を丸めて正座させられている光景に、ベニやエリスリリア達は笑っていた。

「……しょんぼりしてる……」
「大人でも、怒られる時は同じなんですね……」

その後、約束通りの時間に全員を国まで送り届け、ようやく長い一日が終わった。

「おつかれさま」

幼児姿のコウヤにそう言われて、神官たちもやり切った顔をしていた。

何はともあれ、初の国際会議は無事終了したのだ。だが、これは始まりだった。

「さあ、お金の問題も無くなったし、これからが本番! 僕達の本領発揮だよ!」
「はい!」

いよいよ、迷宮の討伐が始まる。

因みに、幼児化したコウヤが元に戻るまで、城へ教会へ冒険者ギルドへと、忙しくコウヤは運ばれてまくっていたというのは、予想通りの光景だった。ユースールの住民も、王宮組も心底癒されたのだからよかったのだろう。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

離縁するので構いません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,817pt お気に入り:1,410

【本編完結】旦那様、離婚してくださいませ!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:809pt お気に入り:5,428

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。