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第九章
374 あと六人
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コウヤは目の前で尻もちをつき、悲鳴を上げたジンクを見て首を傾げ、それから困ったように苦笑した。
「悲鳴上げられたのは初めてかも」
「わっ、ご、ごめん! いやあ、ビックリしてさ~」
「ふふふっ。ばばさま達にも話そ~。ふふふっ」
きっと、ベニ達が聞いたら、それをネタに色々言うだろう。ジンクを追い詰めて、弄り倒すのが目に見えるようだ。ジンクはベニに結婚相手としての好意を持っている。それも利用して、からかうのだ。
「えっ、待ってっ、それ、めちゃくちゃ弄られるパターンじゃん? あれ? でも弄られ……久し振りに良い気も……良いかも?」
おかしい。喜びはじめた。
「おじさん……またベニばあさまに変態って蹴られるよ?」
「それも良いんだよ!」
「……」
「あ……いや、その目っ、コウヤくん、その可哀想なものを見るような目……ゾクゾクするからやめよう?」
「うん……やめとく。ジンクおじさん……ちゃんとした人に戻ろう?」
「ごめんなさい」
ここで土下座だ。仕事している時とか、とってもクールで頼りになる大人な感じなのだが、たまに残念な人になる。どうやら、以前まではベニの前限定だったらしい。だが、コウヤに一度見られてから、コウヤの前でもやらかすようになってきた。それだけ信頼されたということかもしれない。
周りにいる三人の男女も、この残念なジンクを見て、かなり動揺しているようだ。
「ジンクあんた……」
「ジンクさん……」
「……」
とっても残念なものを見る目になった。しかし、しばらくして、何かを唐突に思い出したというように、三人がビクリと動きを止める。その視線はジンクに向いていたのだが、ゆっくりとぎこちなく顔がコウヤの方へと向いた。
今更ながらに、コウヤの存在を思い出したのだ。
「あ、あ、あのっ、ま、まさかっ、いや、え……っ」
「こ、こ、コウっ……」
「っ…………コウル……リーヤ……さま?」
「ん? あっ、えっと、この姿では、はじめまして! コウヤです! ユミさん、ミナさん、ソラさんでしたよねっ」
「「「っ、はい!!」」」
三人は体の向きも変え、ビシっと直立で返事をされた。
「ふふふ。そんな緊張しないで。この後、一緒にお昼をどうですか? ゼストパパ達とピクニックの予定なんです」
「「「え……」」」
これにしっかりと反応できたのはジンクだけだ。三人は先程コウヤの口から出た言葉が理解出来ずにフリーズしていた。
「えっ、ちょっと待って! コウヤくんっ。ゼスト様達?」
「うん。エリィ姉とリクト兄もいるよ? お弁当いっぱい作ったから、できれば、他の眠ってる? 神子の人たちも起こして、連れていきたいんだけど……」
「えええっ! わ、分かった! す、すぐに全員起こすよ! で、でも待って! ちょっと遠いのも……」
眠りについた神子は、全員で九人のはずだとエリスリリアに聞いた。しかし、この中でコウルリーヤの神子だった者はいない。コウルリーヤが討たれた時、その神子としての資格を失った者たちは、世界がなんとか安定したのを見届けてから、命を絶ったようだ。
やるべきことを終えた後、一時的に無理に押し込めていた負の感情に呑まれないように。この世界を恨んでしまわないように、せめて神子としての矜持を持ったまま終わりたいと願ったのだ。
そういう真っ直ぐで少し生き過ぎなくらい真面目な人たちがコウルリーヤの神子だったのだ。彼らはその後きちんと輪廻の輪に入り、世界を巡っている。そして、恐らく今のコウヤの側に来ているだろう。
「あと六人でしたっけ」
「そう。それがかなり遠くて……」
眠っているのは残り六人。眠りにつく場所は、迷宮の役目を終えた場所らしい。よって、近くに固まっているわけではなかった。
「それなら問題ないよ。ダンゴ」
《はいでしゅ! 転移で連れて行くでしゅよ!》
本来の姿で空中に現れたダンゴが、ジンクの肩に乗る。
《さあ、急いで行くでしゅよ!》
「わ、わかった!」
その次の瞬間には、ジンクとダンゴの姿はなかった。
取り残された神子三人は、未だ緊張しているようだ。表情も強張っていた。
「そんな固くならないで。今の俺は人で、ただの冒険者ギルド職員です」
「は、はい……」
まだ混乱しているようだが、仕方ないなと笑う。それから、コウヤは眼下に広がる情景に目を向けた。
「やっぱり、膠着状態ですか……この分だと、切り札はもう使えなくなってますかねえ」
「切り札……ですか?」
ミナが思わず尋ねた。
「うん。剣士とか武闘家に弟子入りしてた人達がいてね。その人たち、師匠のスキルを譲渡させて、ここに向かったみたいなんだ」
「スキルを譲渡なんて……そんなこと、出来るのですか?」
サニールのことがあって、コウヤは他にもこうした人がいないか、白夜部隊の方で調べてもらった。そこで、数人同じように、弟子に裏切られたと悲嘆する者たちを見つけたらしい。
聖魔教会で保護したので、今はなんとかなっているが、見つけた当初は、今にも死にそうで、酷かったようだ。
当然だろう。何十年と己を磨き、手に入れた力を、可愛がっていた唯一の弟子の裏切りと共に失くしたのだから。もちろん、盗られたなんて思ってもみない。けれど、自ら命を断とうと思い詰めるほど、彼らは絶望していたのだ。ギリギリだった。
「うん……でも、それは命を賭けることになるいわゆる禁術だ。多分、一時の力になるだけ……」
「そんな……そんなことをしてでも……」
「許せなかったのね……あの辺、今は騎士達が居るけど……あの辺まで多分、攻めてたんだと思う……残滓が残ってる……」
「ええ……あそこと……あの辺も……」
今の膠着状態の場所は、立て直されたもの。それが分かった。
そして、コウヤはその残滓の繋がる場所を、人を探した。
「……あの森の辺ですね」
「あっ、生きてる! 間違いない!」
魔力や力の残滓さえ視ることができるスキルを持つユミが指を差して示す。それならばとコウヤは頷いた。
「パックン」
ここで、パックンを喚び寄せる。パックンは人化して現れた。
《は~い。パックン参上! ご飯?》
「ううん。その前に一働きお願い。あっちの森に、禁術を使った人たちが居る。捕まえてきて」
《分かったー》
そこで、ユミが手を上げる。
「あっ、あの! 私も行ってもいいですか? 誰が関係者かも分かります!」
「あ~、うん。お願いしてもいいですか?」
「っ、もちろんです!!」
「なら、パックン、ユミさんと行ってきて」
《はーい。行っくよー♪》
「わわっ、はっ、はい!」
《とうっ!》
掛け声と同時に片手を上げて、もう片方の手でユミと手を繋いで転移していった。
「さてと、じゃあ、俺たちは先にゼストパパ達と合流しましょう」
「「はい!」」
顔はまだ強張っているが、その目には、嬉しそうな色が宿っていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
「悲鳴上げられたのは初めてかも」
「わっ、ご、ごめん! いやあ、ビックリしてさ~」
「ふふふっ。ばばさま達にも話そ~。ふふふっ」
きっと、ベニ達が聞いたら、それをネタに色々言うだろう。ジンクを追い詰めて、弄り倒すのが目に見えるようだ。ジンクはベニに結婚相手としての好意を持っている。それも利用して、からかうのだ。
「えっ、待ってっ、それ、めちゃくちゃ弄られるパターンじゃん? あれ? でも弄られ……久し振りに良い気も……良いかも?」
おかしい。喜びはじめた。
「おじさん……またベニばあさまに変態って蹴られるよ?」
「それも良いんだよ!」
「……」
「あ……いや、その目っ、コウヤくん、その可哀想なものを見るような目……ゾクゾクするからやめよう?」
「うん……やめとく。ジンクおじさん……ちゃんとした人に戻ろう?」
「ごめんなさい」
ここで土下座だ。仕事している時とか、とってもクールで頼りになる大人な感じなのだが、たまに残念な人になる。どうやら、以前まではベニの前限定だったらしい。だが、コウヤに一度見られてから、コウヤの前でもやらかすようになってきた。それだけ信頼されたということかもしれない。
周りにいる三人の男女も、この残念なジンクを見て、かなり動揺しているようだ。
「ジンクあんた……」
「ジンクさん……」
「……」
とっても残念なものを見る目になった。しかし、しばらくして、何かを唐突に思い出したというように、三人がビクリと動きを止める。その視線はジンクに向いていたのだが、ゆっくりとぎこちなく顔がコウヤの方へと向いた。
今更ながらに、コウヤの存在を思い出したのだ。
「あ、あ、あのっ、ま、まさかっ、いや、え……っ」
「こ、こ、コウっ……」
「っ…………コウル……リーヤ……さま?」
「ん? あっ、えっと、この姿では、はじめまして! コウヤです! ユミさん、ミナさん、ソラさんでしたよねっ」
「「「っ、はい!!」」」
三人は体の向きも変え、ビシっと直立で返事をされた。
「ふふふ。そんな緊張しないで。この後、一緒にお昼をどうですか? ゼストパパ達とピクニックの予定なんです」
「「「え……」」」
これにしっかりと反応できたのはジンクだけだ。三人は先程コウヤの口から出た言葉が理解出来ずにフリーズしていた。
「えっ、ちょっと待って! コウヤくんっ。ゼスト様達?」
「うん。エリィ姉とリクト兄もいるよ? お弁当いっぱい作ったから、できれば、他の眠ってる? 神子の人たちも起こして、連れていきたいんだけど……」
「えええっ! わ、分かった! す、すぐに全員起こすよ! で、でも待って! ちょっと遠いのも……」
眠りについた神子は、全員で九人のはずだとエリスリリアに聞いた。しかし、この中でコウルリーヤの神子だった者はいない。コウルリーヤが討たれた時、その神子としての資格を失った者たちは、世界がなんとか安定したのを見届けてから、命を絶ったようだ。
やるべきことを終えた後、一時的に無理に押し込めていた負の感情に呑まれないように。この世界を恨んでしまわないように、せめて神子としての矜持を持ったまま終わりたいと願ったのだ。
そういう真っ直ぐで少し生き過ぎなくらい真面目な人たちがコウルリーヤの神子だったのだ。彼らはその後きちんと輪廻の輪に入り、世界を巡っている。そして、恐らく今のコウヤの側に来ているだろう。
「あと六人でしたっけ」
「そう。それがかなり遠くて……」
眠っているのは残り六人。眠りにつく場所は、迷宮の役目を終えた場所らしい。よって、近くに固まっているわけではなかった。
「それなら問題ないよ。ダンゴ」
《はいでしゅ! 転移で連れて行くでしゅよ!》
本来の姿で空中に現れたダンゴが、ジンクの肩に乗る。
《さあ、急いで行くでしゅよ!》
「わ、わかった!」
その次の瞬間には、ジンクとダンゴの姿はなかった。
取り残された神子三人は、未だ緊張しているようだ。表情も強張っていた。
「そんな固くならないで。今の俺は人で、ただの冒険者ギルド職員です」
「は、はい……」
まだ混乱しているようだが、仕方ないなと笑う。それから、コウヤは眼下に広がる情景に目を向けた。
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「切り札……ですか?」
ミナが思わず尋ねた。
「うん。剣士とか武闘家に弟子入りしてた人達がいてね。その人たち、師匠のスキルを譲渡させて、ここに向かったみたいなんだ」
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サニールのことがあって、コウヤは他にもこうした人がいないか、白夜部隊の方で調べてもらった。そこで、数人同じように、弟子に裏切られたと悲嘆する者たちを見つけたらしい。
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そして、コウヤはその残滓の繋がる場所を、人を探した。
「……あの森の辺ですね」
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魔力や力の残滓さえ視ることができるスキルを持つユミが指を差して示す。それならばとコウヤは頷いた。
「パックン」
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《分かったー》
そこで、ユミが手を上げる。
「あっ、あの! 私も行ってもいいですか? 誰が関係者かも分かります!」
「あ~、うん。お願いしてもいいですか?」
「っ、もちろんです!!」
「なら、パックン、ユミさんと行ってきて」
《はーい。行っくよー♪》
「わわっ、はっ、はい!」
《とうっ!》
掛け声と同時に片手を上げて、もう片方の手でユミと手を繋いで転移していった。
「さてと、じゃあ、俺たちは先にゼストパパ達と合流しましょう」
「「はい!」」
顔はまだ強張っているが、その目には、嬉しそうな色が宿っていた。
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