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第八章 学校と研修
330 とりあえず使ってみて
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コウヤ達は、降下する途中で風魔法を使い、着地する位置を調整していく。
向かうのは、テンキと光の玉を回収するために降りた漁師達の集落の辺り。その南寄りだ。
先に降りて行った冒険者達は、着地地点を調整できる者によって、中央付近の町のあった場所へと降りて行っていた。多くの者は、想定通り王都や町があった場所に降りたようだ。そこから放射線状に散っていくはずだ。
魔獣や魔物の出てきた迷宮は島の南の方。漁師の集落は島の東だ。
集落の冒険者達には、光の玉が転がされて行った北の方へ舟で回ってもらうことになる。彼らが海に出ている間に、集落付近はしっかりとキレイにしておくつもりだ。
コウヤは空中で指示を出す。
「ダンゴは迷宮の方に向かってくれる? そのまま迷宮の状態の確認を頼むよ」
《分かりました、でしゅ!》
返事をしながら、ダンゴは人化した。同時に、パックンも人化した。
《僕は?》
「パックンは、南へ海岸沿いに回って西へ抜けてくれる? 今回はかなり、はぐれが居るみたいだから」
《は~い》
本来、迷宮から解き放たれた魔獣は、人の多い方を目指す。だから、町へ向かうのだが、今回は全ての避難を終えていた。取り残されていた光の玉の中には人が入っていたが、それほど大人数ではない。だから、きちんとそちらへ全て向かったという保証はなかった。
無駄にリアルを求めるプロ意識高めの精霊達のお陰で、集団で暴走していく中にも、はぐれが出ることが極稀にある。
今回は特に、向かう方向が確定されなかった可能性が高く、一部は町のあった北ではなく、南に向かったようだった。精霊達の意思もあり、島全体を呑み込む意図があったので、確実に迷宮の南側にも展開していた。
リクトルスの指示の下、中央に降りた冒険者達によって、集団暴走後の掃討戦が行われる。通常ならば、迷宮から町の方へと扇型に広がっていくため、迷宮の後方は気にする必要がない。しかし、今回は別だ。その部分をコウヤ達は担当する。
「ビジェもパックンと南沿いからお願い」
「了解しました。西で合流ということでいいですか?」
ビジェが確認する。
「うん。俺とニールで直進ながら掃討していく」
「分かりました」
着地すると同時に、指示を受けたダンゴとパックン、ビジェがそれぞれの方向へ駆け出した。
残ったのはニールとコウヤだ。
「集落の方は俺が見て回る。ニールは先に森へ入って。あと、剣を渡しておく」
コウヤは、ニールの戦いぶりを見てこれを決めていた。亜空間から取り出したのは、長剣。だが、幅は一般的な長剣より少し細い。差し出すと、ニールは思わず膝を突き、吸い寄せられるかのように手を伸ばした。
それを見て、コウヤはこの引き合わせは正解だなと笑みを浮かべる。
「っ……これは……?」
「神剣なんだ。聖剣は少し我儘で、剣の方に主を合わせようとする。我が強いんだ。けど、これは選んだ主の力を高めて、剣の方が相応しくなろうとする」
だから、選ばれれば聖剣よりも扱いやすい。ただし、一つだけ剣としては問題があった。
「ただ、神剣は人を斬れない」
「斬れない……?」
「うん。嫌がるんだ。斬ろうとしても、人体は通り抜けるよ。代わりに魔力や気力を奪うから昏倒するし、全く使えないわけじゃないんだけど、騎士とか冒険者には不向きでね」
「……なるほど」
騎士は時に暴漢や盗賊などを相手にしなくてはならない。冒険者も同じ。だから、この世界では神剣を作る者、知っている者は居ない。
「ニールなら使いこなせるかなって思ったんだ。良かったら、もらってくれる?」
「これを……私に……承知いたしました。ご期待に沿えてみせます。ただ……ひとつだけ……」
「うん?」
言いにくそうにするニールに、何かなと首を傾げて見せた。
「いいよ。なあに?」
「っ……お許しいただけるのなら……王やベニ様方のいらっしゃる場所で、改めて受け取りたく思います」
「あ~、そっか。うん。いいよ。なら、今度改めてね。今は、とりあえず使ってみて」
「はい!」
そうして、ニールは剣を持って森へ入っていった。
残ったコウヤは、集落の方に向かう。
「さてと、掃除しますか」
掃討戦が始まった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
●活動報告にてご報告がございます●
この後、0:10分頃に上げます。
お待ちくださっていた皆様へ◎
よろしくお願いします◎
向かうのは、テンキと光の玉を回収するために降りた漁師達の集落の辺り。その南寄りだ。
先に降りて行った冒険者達は、着地地点を調整できる者によって、中央付近の町のあった場所へと降りて行っていた。多くの者は、想定通り王都や町があった場所に降りたようだ。そこから放射線状に散っていくはずだ。
魔獣や魔物の出てきた迷宮は島の南の方。漁師の集落は島の東だ。
集落の冒険者達には、光の玉が転がされて行った北の方へ舟で回ってもらうことになる。彼らが海に出ている間に、集落付近はしっかりとキレイにしておくつもりだ。
コウヤは空中で指示を出す。
「ダンゴは迷宮の方に向かってくれる? そのまま迷宮の状態の確認を頼むよ」
《分かりました、でしゅ!》
返事をしながら、ダンゴは人化した。同時に、パックンも人化した。
《僕は?》
「パックンは、南へ海岸沿いに回って西へ抜けてくれる? 今回はかなり、はぐれが居るみたいだから」
《は~い》
本来、迷宮から解き放たれた魔獣は、人の多い方を目指す。だから、町へ向かうのだが、今回は全ての避難を終えていた。取り残されていた光の玉の中には人が入っていたが、それほど大人数ではない。だから、きちんとそちらへ全て向かったという保証はなかった。
無駄にリアルを求めるプロ意識高めの精霊達のお陰で、集団で暴走していく中にも、はぐれが出ることが極稀にある。
今回は特に、向かう方向が確定されなかった可能性が高く、一部は町のあった北ではなく、南に向かったようだった。精霊達の意思もあり、島全体を呑み込む意図があったので、確実に迷宮の南側にも展開していた。
リクトルスの指示の下、中央に降りた冒険者達によって、集団暴走後の掃討戦が行われる。通常ならば、迷宮から町の方へと扇型に広がっていくため、迷宮の後方は気にする必要がない。しかし、今回は別だ。その部分をコウヤ達は担当する。
「ビジェもパックンと南沿いからお願い」
「了解しました。西で合流ということでいいですか?」
ビジェが確認する。
「うん。俺とニールで直進ながら掃討していく」
「分かりました」
着地すると同時に、指示を受けたダンゴとパックン、ビジェがそれぞれの方向へ駆け出した。
残ったのはニールとコウヤだ。
「集落の方は俺が見て回る。ニールは先に森へ入って。あと、剣を渡しておく」
コウヤは、ニールの戦いぶりを見てこれを決めていた。亜空間から取り出したのは、長剣。だが、幅は一般的な長剣より少し細い。差し出すと、ニールは思わず膝を突き、吸い寄せられるかのように手を伸ばした。
それを見て、コウヤはこの引き合わせは正解だなと笑みを浮かべる。
「っ……これは……?」
「神剣なんだ。聖剣は少し我儘で、剣の方に主を合わせようとする。我が強いんだ。けど、これは選んだ主の力を高めて、剣の方が相応しくなろうとする」
だから、選ばれれば聖剣よりも扱いやすい。ただし、一つだけ剣としては問題があった。
「ただ、神剣は人を斬れない」
「斬れない……?」
「うん。嫌がるんだ。斬ろうとしても、人体は通り抜けるよ。代わりに魔力や気力を奪うから昏倒するし、全く使えないわけじゃないんだけど、騎士とか冒険者には不向きでね」
「……なるほど」
騎士は時に暴漢や盗賊などを相手にしなくてはならない。冒険者も同じ。だから、この世界では神剣を作る者、知っている者は居ない。
「ニールなら使いこなせるかなって思ったんだ。良かったら、もらってくれる?」
「これを……私に……承知いたしました。ご期待に沿えてみせます。ただ……ひとつだけ……」
「うん?」
言いにくそうにするニールに、何かなと首を傾げて見せた。
「いいよ。なあに?」
「っ……お許しいただけるのなら……王やベニ様方のいらっしゃる場所で、改めて受け取りたく思います」
「あ~、そっか。うん。いいよ。なら、今度改めてね。今は、とりあえず使ってみて」
「はい!」
そうして、ニールは剣を持って森へ入っていった。
残ったコウヤは、集落の方に向かう。
「さてと、掃除しますか」
掃討戦が始まった。
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読んでくださりありがとうございます◎
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この後、0:10分頃に上げます。
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よろしくお願いします◎
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