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第五章 王家と守護者と誓約
222 これで最後ですか……
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コウヤが小さくなって五日目の朝。
目を覚ましたコウヤは大きく伸びをして体の調子を確認する。
「うん! あすにはもどれるかな」
反動として小さくなったのは、神気によるものだ。一気に神気を高めたことで、コウヤの体の中にある神気の調整が難しくなってしまっていた。それを落ち着かせるためにも、小さな体になるしかなかったのだ。反動とはいえ、自衛が働いた結果だ。だが、それも予想通り終わりそうだ。
《今日も出勤されるのですか?》
テンキが連日小さな体でギルドの仕事をこなすコウヤを少し心配する。実際、休みがなかったからだろう。
「うん。みんな『明日も来るよなっ。来てくれるよなっ』って、ねんおししてきてたし。はやくかえってきてくれるから、おそくなることもないしね」
冒険者達が早く帰ってくることで、ピーク時間も早くなり、本来の勤務時間よりも早く上がれていたのだ。もちろん、早くなっても、帰れるという時間には白夜部隊の送迎担当が来ていた。お陰で本当に早く帰れていたのだ。勤務時間が短くなったことと、教会推奨の睡眠時間により、コウヤの体調はすこぶる良い。
《……あれは、主を自分達の子どものように思っているからですよ……前からそういうのはありましたけどね……》
「ん?」
テンキがぶつぶつと言っているのは、よく聞こえなかった。
ジザルスがコウヤの袖を手が出るように巻き上げる。着替えを手伝ってくれることにも慣れたコウヤだが、小さな手が出てきて、崩れそうになる神官たちの様子には慣れない。
それはそれと置いておいて、コウヤは嬉しそうに続ける。この五日間、皆同じ反応なのだから仕方がない。
「さあ、出来ましたよ」
「はい! ありがとうございます!」
「っ、これで最後ですか……大司教様たちの落ち込みようも分かりますね……」
「どうかしました?」
「いいえ。では朝食に行きましょう」
「はい!」
この日は日が暮れるにつれて、周りの人の元気がなくなっていくのだが、コウヤには知る由もなかった。
◆ ◆ ◆
六日目の朝。元に戻ったコウヤがギルドに向かうのにルディエがついてきていた。
「なんか歩くの久しぶり~」
ずっと抱きかかえられて送迎されていたため、この目線も久しぶりだ。
「……」
「どうしたの? ルー君」
じっと見上げてくるルディエに気付き、コウヤは声をかける。因みに元に戻ったことで、腰の後ろにはパックンがついており、その上にテンキとダンゴが三段重ねになっている。コウヤにくっ付いているのが安心するらしい。
「っ、異常とか……ない?」
「ああ。心配してくれたの? ありがとう。大丈夫だよ。調子はとってもいいから」
「そう……」
そうして話している間にも、コウヤに目を向ける住民達はなんだかホッとしたような表情を見せる。もちろん、ちょっと残念そうでもあった。
「ふふ。町の人達にも心配かけたみたいだね」
「……さすがにあれは、ビックリするから」
「あはは。そういえば、昨日は凄い落ち込んでたばばさま達が、今日はすっかり回復してたけど、あれはなんだったのかな?」
寝る時など、完全にお通夜状態だった。あんなに落ち込んだ様子のベニ達をコウヤは見たことがない。今は若い姿だから良かったが、これで老婆の姿だったらちょっとどころではなく心配するレベルだ。
だが、今朝起きて挨拶をしたら、いつも通りの様子だった。それは神官達も同様だ。
「あ~……うん。『次がある!』だって」
「次?」
「王都の……教会でまたやるでしょ?」
「あっ。そっか……うん。そうだね。あるかも」
納得した。王都の教会のお披露目の時にも神降ろしの儀式をするのだ。そこでまた同じことになるだろう。加減も分かったので、今度は三日くらいで戻りそうだが。
「まあ、次の目標があるってのはいいことだよねっ」
「……兄さんらしいよ……」
コウヤはいつでも前向きだ。
************
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
目を覚ましたコウヤは大きく伸びをして体の調子を確認する。
「うん! あすにはもどれるかな」
反動として小さくなったのは、神気によるものだ。一気に神気を高めたことで、コウヤの体の中にある神気の調整が難しくなってしまっていた。それを落ち着かせるためにも、小さな体になるしかなかったのだ。反動とはいえ、自衛が働いた結果だ。だが、それも予想通り終わりそうだ。
《今日も出勤されるのですか?》
テンキが連日小さな体でギルドの仕事をこなすコウヤを少し心配する。実際、休みがなかったからだろう。
「うん。みんな『明日も来るよなっ。来てくれるよなっ』って、ねんおししてきてたし。はやくかえってきてくれるから、おそくなることもないしね」
冒険者達が早く帰ってくることで、ピーク時間も早くなり、本来の勤務時間よりも早く上がれていたのだ。もちろん、早くなっても、帰れるという時間には白夜部隊の送迎担当が来ていた。お陰で本当に早く帰れていたのだ。勤務時間が短くなったことと、教会推奨の睡眠時間により、コウヤの体調はすこぶる良い。
《……あれは、主を自分達の子どものように思っているからですよ……前からそういうのはありましたけどね……》
「ん?」
テンキがぶつぶつと言っているのは、よく聞こえなかった。
ジザルスがコウヤの袖を手が出るように巻き上げる。着替えを手伝ってくれることにも慣れたコウヤだが、小さな手が出てきて、崩れそうになる神官たちの様子には慣れない。
それはそれと置いておいて、コウヤは嬉しそうに続ける。この五日間、皆同じ反応なのだから仕方がない。
「さあ、出来ましたよ」
「はい! ありがとうございます!」
「っ、これで最後ですか……大司教様たちの落ち込みようも分かりますね……」
「どうかしました?」
「いいえ。では朝食に行きましょう」
「はい!」
この日は日が暮れるにつれて、周りの人の元気がなくなっていくのだが、コウヤには知る由もなかった。
◆ ◆ ◆
六日目の朝。元に戻ったコウヤがギルドに向かうのにルディエがついてきていた。
「なんか歩くの久しぶり~」
ずっと抱きかかえられて送迎されていたため、この目線も久しぶりだ。
「……」
「どうしたの? ルー君」
じっと見上げてくるルディエに気付き、コウヤは声をかける。因みに元に戻ったことで、腰の後ろにはパックンがついており、その上にテンキとダンゴが三段重ねになっている。コウヤにくっ付いているのが安心するらしい。
「っ、異常とか……ない?」
「ああ。心配してくれたの? ありがとう。大丈夫だよ。調子はとってもいいから」
「そう……」
そうして話している間にも、コウヤに目を向ける住民達はなんだかホッとしたような表情を見せる。もちろん、ちょっと残念そうでもあった。
「ふふ。町の人達にも心配かけたみたいだね」
「……さすがにあれは、ビックリするから」
「あはは。そういえば、昨日は凄い落ち込んでたばばさま達が、今日はすっかり回復してたけど、あれはなんだったのかな?」
寝る時など、完全にお通夜状態だった。あんなに落ち込んだ様子のベニ達をコウヤは見たことがない。今は若い姿だから良かったが、これで老婆の姿だったらちょっとどころではなく心配するレベルだ。
だが、今朝起きて挨拶をしたら、いつも通りの様子だった。それは神官達も同様だ。
「あ~……うん。『次がある!』だって」
「次?」
「王都の……教会でまたやるでしょ?」
「あっ。そっか……うん。そうだね。あるかも」
納得した。王都の教会のお披露目の時にも神降ろしの儀式をするのだ。そこでまた同じことになるだろう。加減も分かったので、今度は三日くらいで戻りそうだが。
「まあ、次の目標があるってのはいいことだよねっ」
「……兄さんらしいよ……」
コウヤはいつでも前向きだ。
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