81 / 475
第五章 王家と守護者と誓約
222 これで最後ですか……
しおりを挟む
コウヤが小さくなって五日目の朝。
目を覚ましたコウヤは大きく伸びをして体の調子を確認する。
「うん! あすにはもどれるかな」
反動として小さくなったのは、神気によるものだ。一気に神気を高めたことで、コウヤの体の中にある神気の調整が難しくなってしまっていた。それを落ち着かせるためにも、小さな体になるしかなかったのだ。反動とはいえ、自衛が働いた結果だ。だが、それも予想通り終わりそうだ。
《今日も出勤されるのですか?》
テンキが連日小さな体でギルドの仕事をこなすコウヤを少し心配する。実際、休みがなかったからだろう。
「うん。みんな『明日も来るよなっ。来てくれるよなっ』って、ねんおししてきてたし。はやくかえってきてくれるから、おそくなることもないしね」
冒険者達が早く帰ってくることで、ピーク時間も早くなり、本来の勤務時間よりも早く上がれていたのだ。もちろん、早くなっても、帰れるという時間には白夜部隊の送迎担当が来ていた。お陰で本当に早く帰れていたのだ。勤務時間が短くなったことと、教会推奨の睡眠時間により、コウヤの体調はすこぶる良い。
《……あれは、主を自分達の子どものように思っているからですよ……前からそういうのはありましたけどね……》
「ん?」
テンキがぶつぶつと言っているのは、よく聞こえなかった。
ジザルスがコウヤの袖を手が出るように巻き上げる。着替えを手伝ってくれることにも慣れたコウヤだが、小さな手が出てきて、崩れそうになる神官たちの様子には慣れない。
それはそれと置いておいて、コウヤは嬉しそうに続ける。この五日間、皆同じ反応なのだから仕方がない。
「さあ、出来ましたよ」
「はい! ありがとうございます!」
「っ、これで最後ですか……大司教様たちの落ち込みようも分かりますね……」
「どうかしました?」
「いいえ。では朝食に行きましょう」
「はい!」
この日は日が暮れるにつれて、周りの人の元気がなくなっていくのだが、コウヤには知る由もなかった。
◆ ◆ ◆
六日目の朝。元に戻ったコウヤがギルドに向かうのにルディエがついてきていた。
「なんか歩くの久しぶり~」
ずっと抱きかかえられて送迎されていたため、この目線も久しぶりだ。
「……」
「どうしたの? ルー君」
じっと見上げてくるルディエに気付き、コウヤは声をかける。因みに元に戻ったことで、腰の後ろにはパックンがついており、その上にテンキとダンゴが三段重ねになっている。コウヤにくっ付いているのが安心するらしい。
「っ、異常とか……ない?」
「ああ。心配してくれたの? ありがとう。大丈夫だよ。調子はとってもいいから」
「そう……」
そうして話している間にも、コウヤに目を向ける住民達はなんだかホッとしたような表情を見せる。もちろん、ちょっと残念そうでもあった。
「ふふ。町の人達にも心配かけたみたいだね」
「……さすがにあれは、ビックリするから」
「あはは。そういえば、昨日は凄い落ち込んでたばばさま達が、今日はすっかり回復してたけど、あれはなんだったのかな?」
寝る時など、完全にお通夜状態だった。あんなに落ち込んだ様子のベニ達をコウヤは見たことがない。今は若い姿だから良かったが、これで老婆の姿だったらちょっとどころではなく心配するレベルだ。
だが、今朝起きて挨拶をしたら、いつも通りの様子だった。それは神官達も同様だ。
「あ~……うん。『次がある!』だって」
「次?」
「王都の……教会でまたやるでしょ?」
「あっ。そっか……うん。そうだね。あるかも」
納得した。王都の教会のお披露目の時にも神降ろしの儀式をするのだ。そこでまた同じことになるだろう。加減も分かったので、今度は三日くらいで戻りそうだが。
「まあ、次の目標があるってのはいいことだよねっ」
「……兄さんらしいよ……」
コウヤはいつでも前向きだ。
************
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
目を覚ましたコウヤは大きく伸びをして体の調子を確認する。
「うん! あすにはもどれるかな」
反動として小さくなったのは、神気によるものだ。一気に神気を高めたことで、コウヤの体の中にある神気の調整が難しくなってしまっていた。それを落ち着かせるためにも、小さな体になるしかなかったのだ。反動とはいえ、自衛が働いた結果だ。だが、それも予想通り終わりそうだ。
《今日も出勤されるのですか?》
テンキが連日小さな体でギルドの仕事をこなすコウヤを少し心配する。実際、休みがなかったからだろう。
「うん。みんな『明日も来るよなっ。来てくれるよなっ』って、ねんおししてきてたし。はやくかえってきてくれるから、おそくなることもないしね」
冒険者達が早く帰ってくることで、ピーク時間も早くなり、本来の勤務時間よりも早く上がれていたのだ。もちろん、早くなっても、帰れるという時間には白夜部隊の送迎担当が来ていた。お陰で本当に早く帰れていたのだ。勤務時間が短くなったことと、教会推奨の睡眠時間により、コウヤの体調はすこぶる良い。
《……あれは、主を自分達の子どものように思っているからですよ……前からそういうのはありましたけどね……》
「ん?」
テンキがぶつぶつと言っているのは、よく聞こえなかった。
ジザルスがコウヤの袖を手が出るように巻き上げる。着替えを手伝ってくれることにも慣れたコウヤだが、小さな手が出てきて、崩れそうになる神官たちの様子には慣れない。
それはそれと置いておいて、コウヤは嬉しそうに続ける。この五日間、皆同じ反応なのだから仕方がない。
「さあ、出来ましたよ」
「はい! ありがとうございます!」
「っ、これで最後ですか……大司教様たちの落ち込みようも分かりますね……」
「どうかしました?」
「いいえ。では朝食に行きましょう」
「はい!」
この日は日が暮れるにつれて、周りの人の元気がなくなっていくのだが、コウヤには知る由もなかった。
◆ ◆ ◆
六日目の朝。元に戻ったコウヤがギルドに向かうのにルディエがついてきていた。
「なんか歩くの久しぶり~」
ずっと抱きかかえられて送迎されていたため、この目線も久しぶりだ。
「……」
「どうしたの? ルー君」
じっと見上げてくるルディエに気付き、コウヤは声をかける。因みに元に戻ったことで、腰の後ろにはパックンがついており、その上にテンキとダンゴが三段重ねになっている。コウヤにくっ付いているのが安心するらしい。
「っ、異常とか……ない?」
「ああ。心配してくれたの? ありがとう。大丈夫だよ。調子はとってもいいから」
「そう……」
そうして話している間にも、コウヤに目を向ける住民達はなんだかホッとしたような表情を見せる。もちろん、ちょっと残念そうでもあった。
「ふふ。町の人達にも心配かけたみたいだね」
「……さすがにあれは、ビックリするから」
「あはは。そういえば、昨日は凄い落ち込んでたばばさま達が、今日はすっかり回復してたけど、あれはなんだったのかな?」
寝る時など、完全にお通夜状態だった。あんなに落ち込んだ様子のベニ達をコウヤは見たことがない。今は若い姿だから良かったが、これで老婆の姿だったらちょっとどころではなく心配するレベルだ。
だが、今朝起きて挨拶をしたら、いつも通りの様子だった。それは神官達も同様だ。
「あ~……うん。『次がある!』だって」
「次?」
「王都の……教会でまたやるでしょ?」
「あっ。そっか……うん。そうだね。あるかも」
納得した。王都の教会のお披露目の時にも神降ろしの儀式をするのだ。そこでまた同じことになるだろう。加減も分かったので、今度は三日くらいで戻りそうだが。
「まあ、次の目標があるってのはいいことだよねっ」
「……兄さんらしいよ……」
コウヤはいつでも前向きだ。
************
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
342
お気に入りに追加
11,119
あなたにおすすめの小説


【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。