元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第五章 王家と守護者と誓約

221 ここだけらしいですよ

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コウヤは受け取ったギルドカードを順番に処理していく。

「ではせつめい説明しますね」
「お願いします……」

突っかかっていた冒険者も居なくなっているので、小さな声ではあるが態度が良くなっていた。テンキにどんなことをされたのかは聞かない方が良いだろう。

「このけんしゅう研修は、となりにありますくすりや薬屋とのていけい提携です。なので、ほかのギルドとはないよう内容ことなる異なるでしょう」
「ここだけ……」
「異なるって……聞いたことねえけど……」
「ん? あるはずですけどね? あ、けんしゅう研修じゃなくてさいしゅこうしゅう採取講習っていう言うかもしれません」
「……いや、それもない……」
「う~ん?」

どうしてだろうかとコウヤは首を捻った。採取講習は、冒険者ギルドの行う講習の一つだ。きちんと認められたものだった。

そこで、聞いていたマイルズが口を挟む。

「コウヤさん、コウヤさん。講習をしっかりやってるギルドって、ここだけらしいですよ。戦闘講習も採取講習も、他の講習全般的に、ほとんど形骸化っていうか、あってないような状態になってます。ここに居ると、講習の重要性が分かるんですけどね~」

他の職員達も、うんうんと頷いていた。

「それに、職員でもコウヤさんみたいに規約とか全部読んでる人居ないですからね? 皆さんラッキーですよ? 他のギルドと違って、ここの実績は本物です。その実績の半分以上は、このコウヤさんの手が入ってますからね。関わり持てて良かったですね~」

突っかかってでしたけどねと笑いながらマイルズは去っていった。

「……」
「……そう……なんだ……」
「こんなちっさいのに……」
「んっと?」

なんだか不憫な子を見るような目で見られた。苦労してるんだなという声も聞こえる。そんな自覚はないので意味が分からないコウヤだ。

「その……せつめい説明つづけますね?」
「お願いします」

きちんと答えが返ってくるので、問題ないかと続けた。

「このけんしゅう研修ごだんかい五段階あって、はじめてのみなさんはしょきゅうへん初級編です」

初級、中級、上級、特級、一級の五段階。因みに、特級からは討伐も絡んでくるという、採取でも難度はかなりのものになる。これはCランク以上でないと受けられない。

特級を受けた冒険者達は、ゲンもそうだが、薬屋がガチの戦闘職にしか見えなくなるという。本当に結構な難度になるのだ。

それを思うと初級編はとっても可愛らしい。ゲンたちにとってはお散歩でしかない。

あさ、ひる、ばん朝、昼、晩とあって、こんかいはひるですね。きちんとごうかく合格みとめ認められたかたまんぷくいっぷくてい満腹一服亭でのおゆうしょくお夕食かくやす格安ていきょう提供されます!」
「え……夕食?」
「格安?」
「それ、真面目に研修受けたらってこと?」
「はい! なので、がんばってくださいね」

信じられないという表情。だが、外から来た冒険者にはありがちだ。ユースールで登録した冒険者達は『うわ~、お得じゃん。やっぱコウヤ最高』で終わる。コウヤが考案したことはバレバレらしい。

「では、おひるお昼ひとつめのかね一つ目の鐘なるころ鳴る頃に、あちらのつうろ通路にある『研修室1』におねがいします」
「わ、わかっ、わかりました」
「あ、ありがとう……」

その時、男たちのお腹が鳴った。彼らは栄養状態も良くなさそうだ。採取依頼を避けていたEランクでは、それほど稼げるものではない。その上パーティだ。懐具合も切迫しているのだろう。ならばと、賑わい出した売店を指差す。

「ふふ。よかったらあのばいてん売店やすい安いおひるごはんがでる出るので、みてみて見てみてくださいね」
「え……」

そろそろ、昼以降に出ようとする冒険者達が並びはじめていた。同じように朝にもお弁当が並ぶ。これも他のギルドにはない仕組みだ。

はやくならぶ早く並ぶといいのがかえます買えますよ」
「あ、ああ」
「行ってみるか」
「俺、鐘を気にしとくから、見てきてくれよ」
「お、おう」
せきとり席取りしといたほうがいいですよ」
「わ、わかった」

コウヤは微笑ましげにそんな彼らを見送った。

小さくなっていても、コウヤはコウヤなのだと誰もが頷く。



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