80 / 455
第五章 王家と守護者と誓約
221 ここだけらしいですよ
しおりを挟む
コウヤは受け取ったギルドカードを順番に処理していく。
「ではせつめいしますね」
「お願いします……」
突っかかっていた冒険者も居なくなっているので、小さな声ではあるが態度が良くなっていた。テンキにどんなことをされたのかは聞かない方が良いだろう。
「このけんしゅうは、となりにありますくすりやとのていけいです。なので、ほかのギルドとはないようがことなるでしょう」
「ここだけ……」
「異なるって……聞いたことねえけど……」
「ん? あるはずですけどね? あ、けんしゅうじゃなくてさいしゅこうしゅうっていうかもしれません」
「……いや、それもない……」
「う~ん?」
どうしてだろうかとコウヤは首を捻った。採取講習は、冒険者ギルドの行う講習の一つだ。きちんと認められたものだった。
そこで、聞いていたマイルズが口を挟む。
「コウヤさん、コウヤさん。講習をしっかりやってるギルドって、ここだけらしいですよ。戦闘講習も採取講習も、他の講習全般的に、ほとんど形骸化っていうか、あってないような状態になってます。ここに居ると、講習の重要性が分かるんですけどね~」
他の職員達も、うんうんと頷いていた。
「それに、職員でもコウヤさんみたいに規約とか全部読んでる人居ないですからね? 皆さんラッキーですよ? 他のギルドと違って、ここの実績は本物です。その実績の半分以上は、このコウヤさんの手が入ってますからね。関わり持てて良かったですね~」
突っかかってでしたけどねと笑いながらマイルズは去っていった。
「……」
「……そう……なんだ……」
「こんなちっさいのに……」
「んっと?」
なんだか不憫な子を見るような目で見られた。苦労してるんだなという声も聞こえる。そんな自覚はないので意味が分からないコウヤだ。
「その……せつめいつづけますね?」
「お願いします」
きちんと答えが返ってくるので、問題ないかと続けた。
「このけんしゅうはごだんかいあって、はじめてのみなさんはしょきゅうへんです」
初級、中級、上級、特級、一級の五段階。因みに、特級からは討伐も絡んでくるという、採取でも難度はかなりのものになる。これはCランク以上でないと受けられない。
特級を受けた冒険者達は、ゲンもそうだが、薬屋がガチの戦闘職にしか見えなくなるという。本当に結構な難度になるのだ。
それを思うと初級編はとっても可愛らしい。ゲンたちにとってはお散歩でしかない。
「あさ、ひる、ばんとあって、こんかいはひるですね。きちんとごうかくとみとめられたかたはまんぷくいっぷくていでのおゆうしょくがかくやすでていきょうされます!」
「え……夕食?」
「格安?」
「それ、真面目に研修受けたらってこと?」
「はい! なので、がんばってくださいね」
信じられないという表情。だが、外から来た冒険者にはありがちだ。ユースールで登録した冒険者達は『うわ~、お得じゃん。やっぱコウヤ最高』で終わる。コウヤが考案したことはバレバレらしい。
「では、おひるのひとつめのかねがなるころに、あちらのつうろにある『研修室1』におねがいします」
「わ、わかっ、わかりました」
「あ、ありがとう……」
その時、男たちのお腹が鳴った。彼らは栄養状態も良くなさそうだ。採取依頼を避けていたEランクでは、それほど稼げるものではない。その上パーティだ。懐具合も切迫しているのだろう。ならばと、賑わい出した売店を指差す。
「ふふ。よかったらあのばいてんでやすいおひるごはんがでるので、みてみてくださいね」
「え……」
そろそろ、昼以降に出ようとする冒険者達が並びはじめていた。同じように朝にもお弁当が並ぶ。これも他のギルドにはない仕組みだ。
「はやくならぶといいのがかえますよ」
「あ、ああ」
「行ってみるか」
「俺、鐘を気にしとくから、見てきてくれよ」
「お、おう」
「せきとりしといたほうがいいですよ」
「わ、わかった」
コウヤは微笑ましげにそんな彼らを見送った。
小さくなっていても、コウヤはコウヤなのだと誰もが頷く。
************
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
「ではせつめいしますね」
「お願いします……」
突っかかっていた冒険者も居なくなっているので、小さな声ではあるが態度が良くなっていた。テンキにどんなことをされたのかは聞かない方が良いだろう。
「このけんしゅうは、となりにありますくすりやとのていけいです。なので、ほかのギルドとはないようがことなるでしょう」
「ここだけ……」
「異なるって……聞いたことねえけど……」
「ん? あるはずですけどね? あ、けんしゅうじゃなくてさいしゅこうしゅうっていうかもしれません」
「……いや、それもない……」
「う~ん?」
どうしてだろうかとコウヤは首を捻った。採取講習は、冒険者ギルドの行う講習の一つだ。きちんと認められたものだった。
そこで、聞いていたマイルズが口を挟む。
「コウヤさん、コウヤさん。講習をしっかりやってるギルドって、ここだけらしいですよ。戦闘講習も採取講習も、他の講習全般的に、ほとんど形骸化っていうか、あってないような状態になってます。ここに居ると、講習の重要性が分かるんですけどね~」
他の職員達も、うんうんと頷いていた。
「それに、職員でもコウヤさんみたいに規約とか全部読んでる人居ないですからね? 皆さんラッキーですよ? 他のギルドと違って、ここの実績は本物です。その実績の半分以上は、このコウヤさんの手が入ってますからね。関わり持てて良かったですね~」
突っかかってでしたけどねと笑いながらマイルズは去っていった。
「……」
「……そう……なんだ……」
「こんなちっさいのに……」
「んっと?」
なんだか不憫な子を見るような目で見られた。苦労してるんだなという声も聞こえる。そんな自覚はないので意味が分からないコウヤだ。
「その……せつめいつづけますね?」
「お願いします」
きちんと答えが返ってくるので、問題ないかと続けた。
「このけんしゅうはごだんかいあって、はじめてのみなさんはしょきゅうへんです」
初級、中級、上級、特級、一級の五段階。因みに、特級からは討伐も絡んでくるという、採取でも難度はかなりのものになる。これはCランク以上でないと受けられない。
特級を受けた冒険者達は、ゲンもそうだが、薬屋がガチの戦闘職にしか見えなくなるという。本当に結構な難度になるのだ。
それを思うと初級編はとっても可愛らしい。ゲンたちにとってはお散歩でしかない。
「あさ、ひる、ばんとあって、こんかいはひるですね。きちんとごうかくとみとめられたかたはまんぷくいっぷくていでのおゆうしょくがかくやすでていきょうされます!」
「え……夕食?」
「格安?」
「それ、真面目に研修受けたらってこと?」
「はい! なので、がんばってくださいね」
信じられないという表情。だが、外から来た冒険者にはありがちだ。ユースールで登録した冒険者達は『うわ~、お得じゃん。やっぱコウヤ最高』で終わる。コウヤが考案したことはバレバレらしい。
「では、おひるのひとつめのかねがなるころに、あちらのつうろにある『研修室1』におねがいします」
「わ、わかっ、わかりました」
「あ、ありがとう……」
その時、男たちのお腹が鳴った。彼らは栄養状態も良くなさそうだ。採取依頼を避けていたEランクでは、それほど稼げるものではない。その上パーティだ。懐具合も切迫しているのだろう。ならばと、賑わい出した売店を指差す。
「ふふ。よかったらあのばいてんでやすいおひるごはんがでるので、みてみてくださいね」
「え……」
そろそろ、昼以降に出ようとする冒険者達が並びはじめていた。同じように朝にもお弁当が並ぶ。これも他のギルドにはない仕組みだ。
「はやくならぶといいのがかえますよ」
「あ、ああ」
「行ってみるか」
「俺、鐘を気にしとくから、見てきてくれよ」
「お、おう」
「せきとりしといたほうがいいですよ」
「わ、わかった」
コウヤは微笑ましげにそんな彼らを見送った。
小さくなっていても、コウヤはコウヤなのだと誰もが頷く。
************
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
応援ありがとうございます!
91
お気に入りに追加
10,922
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。