女神なんてお断りですっ。

紫南

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1ー04 これでも楽しんでます

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再編集2018.9.9

ーーーーーーーーーー

ルクスは、始めから森の中央辺りにいた。それも、ティアの姿も見える高い木の上で、完全に気配を消してだ。

森全体を見渡す事ができ、全員の気配もしっかりと把握していたルクスは、三バカが捕まり、ザランが倒れる所も見えていたのだ。

「三バカ達のアレはもう病気だな……ザランさんは……三バカ達が回収してくれたか」

手加減なしのマティの猛攻にザランが動けなくなった事を、ティアが気付いていたらしい。

既に戻っていた三バカ達に、ザランの回収を指示しているのが見えたのだ。

「まったくマティの奴……確かにザランさん相手なら、手加減をほとんどしなくてもいいが……今日のは少し、はしゃぎ過ぎだな」

勿論、マティが本気になれば一瞬だろう。その実力は、伝説と呼ばれるディストレアのそれだ。まだ生まれて十年も経っていないが、体は既に成体の大きさ。

成熟した思考や経験が足りないとは言え、ティア仕込みの魔術と戦闘センスが、それを補って余りある実力としていたのだ。

「ベル様達は……スタミナ切れだと?お袋……本当に変わったな……」

実はクレアは昔、胸の病いを患っていた。幼い頃からのものらしく、ギルドに勤めていた頃も、天気の悪い日は辛い時もあったと言う。

ただ、それ程重いものではなく、その頃はまだクレア自身、体調でその日の天気が分かると、冒険者達にも重宝される特技のようなものになっていた。

酷くなったのは、ルクスが生まれてからだ。天気が悪い日は、寝込んでしまう時もあった。

その為ルクスには、怒ると怖いが、少し体の弱い母親という認識だったのだ。

「あの変態エルフ……もっと早く薬を寄越せばいいものを……っ」

恐らく、時期的にはティアが冒険者ギルドに登録した頃だろう。シェリスが、クレアへと薬を贈ったのだ。

これは誰も知らない事実だが、この薬は実は、シェリスがティアへと新薬の調合を教える為に試しに作った物で、効能の確認などの目的で、たまたまクレアへと贈った物だった。

しかし、お陰でクレアの病いは完治し、何を思ったのか冒険者になった。そう。クレアは既にAランクの実力あるパーティを作っているが、実は冒険者になって数年なのだ。才能があったのだろう。

ゲイルと結婚するまで、クレアはサルバの冒険者ギルドでシェリスを支える優秀なギルド職員だった。荒くれ者を上手にあしらい、時にそんな冒険者達を拳で黙らせる。そんな頼りある職員だったのだ。多くの冒険者を見定めてきた能力か。戦闘センスは並ではなかったらしい。

「あの体力は親父並みだな……いや、良いことなんだが……」

昔よりも遥かに生き生きとしているクレアの様子に、息子としては嬉し限りだが、家庭的な母のかつての姿を思い出すと、その変化に複雑な心境になってしまうルクスだ。

「あれじゃぁ、親父が負けるだろうな」

夫婦喧嘩をしても、口だけで負けていたゲイルを思い出して、気の毒にと、ルクスは頭を振った。

そんな、変わってしまったクレアから、意識をティアの居る草原へと向けたルクスは、大きく翼を広げるフラムを確認していた。

《とんでる~》
《ぱたぱた~》
《おちない?》
「……フラムがあんなに大きくなるなんて、聞いてない……」

ルクスは、ティアを乗せて舞い上がるフラムを見て落ち込む。

《しらなかったの?》
《おしえられてない?》
《ざんね~ん》
「くっ、お前ら、あっち行ってろ!」

いつの間にか集まって来ていた精霊達の声に気付き、ルクスは眉を寄せた。

《きゃ~っ》
《やつあたり~》
《おとなげない~》
「お前らなぁっ」

完全にからかいに来ただけの様子の精霊達に、そうと分かっていても構ってしまうルクスだ。

その時、ルクスの居る木の真下から声が聞こえた。

《ルクスはっけ~ん》
「っ、マティっ、いつの間に……ティアの友達はどうした?」

いつの間にか、本来の大きさから小さくなっていたマティが来ていたのだ。

「それに……なんで小さいんだよ……」

大きければ、近くに来ると目でも確認出来た筈だ。

《キルシュとアデルを追いかけるのは、この大きさの方がやりやすかったんだもん》

どうやら、大きいままだとキルシュとアデルを追いかけるには小回りが利かなかったという事らしい。

「怪我させてないだろうな?」
《むぅ……大丈夫だもん。マティの肉球は、とっても優しいんだからね》
「いや……ザランさんが見事にそれではたかれていなかったか……?」
《えへへ。サラちゃんにはちょっと強過ぎた。木にあんなにめり込んじゃうなんて……ドンマイ》
「………」

今のは、ルクスにはティアの声で聞こえた気がした。


(最近……本当に似て来たよな……)


飼い主に似ると言うが、似すぎだと再認識する今日この頃だ。

「おや。マティちゃんに負けたねぇ」
《あ、クレアママ。サラちゃんと、キルシュとアデルは捕まえたよ~》

そうマティが報告する方向から、クレアが楽しそうに姿を見せた。

「それは凄い。あの子達はよく逃げたみたいだねぇ」
《うん。キルシュはバテバテだったよ?アデルはすばしっこいから、すっごく楽しかった》
「あはは。体力は違うだろうね。キルシュって子は、良い経験になったね」
《アデルが引きずってったしね》

そんな経験も良いよねなどと言うマティに、ルクスは微妙な顔をしていた。はたして、走り回るなどという経験もろくにしてこなかった貴族の子息は、今頃どうしているのだろうか。その心境を思うとキツいお遊びになったなと苦笑する。

「さて、残るはお前だけだね。後数分だし、さっさと決めさせてもらうよ」
《下りてこ~い》

ルクスはこの状況に初めて、猛獣に追い詰められる獲物の気持ちを知ったのだった。

ーーーーーーーーーーー

それは、マティがザランを見つけ、楽しい会話をしていた頃だ。

フラムの背に乗っていたティアは、飛行に問題はなさそうだと、鞍の具合も確かめながら、着地するようにフラムへと声を掛けた。

「フラム。鞍を着けて、痛い所とかもないね?」
《ない。かっこいい?》
「うんうん。こんなカッコいい鞍を着けてるドラゴン、フラムしかいないよ?」
《むふぅ》

大満足のフラムは、着地の態勢に入った。しかし、ここで問題が起きた。


(うん?)


急速に地面へと降下する中、ティアはその予感に咄嗟に備えた。

《あれ?》

フラムも、いつもとは違う感覚に戸惑っていたようだ。だが、その違和感に気付いた時には、地面はもうすぐそこだった。

「あ、あっ、ちょっ」
「あ、危ないっ」
「勢い良過ぎっ!」

つい先ほど戻って来た三バカ達が、慌てて距離を取る。次の瞬間には、フラムがドンッと、地面を見事に窪ませて着地した。

「うわっと」

乗っていたティアも、その振動に、体が完全に宙に浮いた。

「「「ティア様ッ!」」」

それを見て焦ったのは三バカ達だ。三人は反射的に受け止めなくてはと、疲れた足をもつれさせながらも走り出す。しかし、ティアはあっさりと風の防御魔術で自身を覆い、更にその下に小さな竜巻を作り出すと、優雅に地面へと着地した。

「え……」
「あ……」
「あぁ~……」

ティアがこのような事で、抜かる筈がなかった。

三バカ達は、役に立てなかった事に少し残念そうに肩を落とす。しかし、ティアはそんな三人の事など見てはいなかった。

「う~ん……もしかして……フラム。もう一度飛んで、着地してみて」
《はい……》

今度はティアを乗せずに飛び立ったフラムを見上げ、用心の為に風の結界を再び展開して身を守る。

その時、ザランが倒れた事に気付いた。


(うん? 死にかけ?)


その弱り具合に、より詳細な状況を知る為、森へと目を向ける。

《あ》
「うん?」

しかし、上空から発せられた声に、視線を戻されたティアは、予想通りの結果に身構える事になった。

地が揺れ、またしても新たな窪みを作ってフラムが着地したのだ。

《あれ?》
「あ~……やっぱり、小さい体の時と感覚が違うか……」
《うぅ……》

度重なる失敗に、フラムは落ち込む。悔しさに感情が昂ぶったフラムは、体を光り輝かせると、そのまま一気に小さくなる。そして、いつもの小さな姿になったフラムは、ティアへと縋り付いた。

《キュ~ゥ~っ》
「あらら……よしよし。やっぱり、見え方が違うのかな?いつもは上手に降りられるもんね?」
《キュキュっ》

いつもは出来るのに出来ない。それがもどかしいと泣いてしまったのだ。

「う……うらやましい……」
「叩かれるのもイイけど……」
「やっぱり撫でられる方も……」

そんなおかしな視線を感じたティアは、フラムが降りてくる前の事を思い出す。

「あ、サラちゃん……」

弱り切ったザランの気配を感じ取ったティアは、三バカ達へ指示を出す。

「三バカちゃん。サラちゃんが死にかけてるから、コレを飲ませて、ここまで引きずってらっしゃい」
「「「へ?」」」

ティアは、アイテムボックスから取り出した一番性能の低いFランクの回復薬の瓶を三バカ達へと放った。ザランの様子から、それで何とかなるだろうと判断したのだ。

完全に回復させてしまっては意味がない。

それを受け取ったトーイが、何故かと尋ねた。

「マティがあんまり手加減しなかったみたい。サービスしたのね。フルセットメニューをお見舞いしたみたいだから」
「「「ふ、フルセット……」」」

ゴクリと喉を鳴らした三人は、目を妖しく輝かせていたが、既に視線を腕の中にいるフラムへと戻していたティアは気付かない。

「そう。『ベしっ、ベチャっ、プチっ』の三コンボね」

ペしっと腕を振るって、ベチャっと木か石に叩きつけた後、ずり落ちて来た所を逃がさないようにプチっと前足で地面に縫い付ける。

これが、マティのとっておきの三コンボ技だった。

「「「……素晴らしい……」」」

そんな三バカ達の呟きは、ティアの耳に正確には届かなかった。

「うん?まぁ、そう言う事だから、回収して来て」
「「「お任せくださいっ」」」

自分達も既に体力の限界が近いのだが、ティアに頼まれれば動かない訳にはいかないと、三バカ達は森へと駆け出していった。

「……別に走らなくてもいいのに……」

どうも、自分をいじめるのが本当に好きらしい。

「ま、いっか。それじゃぁ、フラム。着地の練習しよう。大丈夫。今度は私が乗ってタイミングを言ってあげるからね」
《キュ~……》

まだ時間はあると確かめた後、ティアは再び大きくなったフラムに乗り、着地の練習を始めた。

「あっ……アデルとキルシュも頑張ってるみたいだよ?フラムも頑張ろうね」
《はい。ふらむがんばる》

マティの次なる獲物がアデルとキルシュになった事を察知したティアは、一度森へと目を向け、エールを送るのだった。

ーーーーーーーーーーー

少し時は遡る。
三バカ達の援護で逃げる事が出来たキルシュは、案外広い森の中で迷子になっていた。

「あっちが広場か……?」

どっちを向いても木や草が生い茂る森でしかない。

キルシュには、気配を読む事も出来ない。更に、がむしゃらに走り回った為、方向もよく分からなくなっていたのだ。

「……確か……こっちの方にアデルが……」

無意識の内に探していたのはアデルの姿だった。

同年代であり、たった数日だが、気負わず話す事が出来るようになった相手。

キルシュにとって、アデルとティアは、初めて出来た友だった。

その時、カサコソと音が聞こえた。

アデルかと思ったキルシュは、その音の方へと、大分重くなった足を進める。

「あっ」

しかし、覗き込んだ先にいたのはアデルではなく、ホーンラビットだった。

三匹のホーンラビットが、草を食んでいたのだ。キルシュは、そっと後退する。

しかし、そうして踏みしめた落ち葉の音に、ホーンラビットが、長く伸びた耳を震わせた。

ホーンラビットはFランクの魔獣だ。そう、ランクは低くとも魔獣である事には変わりない。そして、とても臆病だった。

物音や、気配に敏感に反応し、逃げていくというのが普通だが、時にストレスを爆発させ、体当たりをして来る事がある。

風の属性を持つホーンラビットは、その足に風の力を発動させ、驚くべき跳躍力を生み出すのだ。

この時のホーンラビットは、まさにそのストレスを爆発させる限界にまで来ていた。

森には、最強と呼ばれるディストレア。そして、高ランクの冒険者が数名。結界によって閉じられた空間に、異常な程の力ある者達が集まるこの状況。

臆病なホーンラビット達は、密かに逃げ惑っていたのだ。

そこにキルシュという人族が現れた事で、パニックを起こしていた。

突然、体を小さく震わせ、ホーンラビット達が勢いよく飛び跳ねる。

「うわっ!」

目で追えない程の速さ。小さな一抱え程の大きさのボールが、木や地面にめり込む勢いで不規則にキルシュの周りを飛び回る。

問題なのは、小さいが三つ程額の所に生える角だった。間違いなく当たれば、ただでは済まないだろう。

辛うじて避けるキルシュも、その場から逃げ出す事が出来ない。必死で避けていても、体が冷えていく感覚。これ程の危機的状況に陥ったのは初めてだった。

そんな悲鳴を上げる余裕さえないキルシュの耳に、その声は届いた。

「伏せてっ!」
「っ!?」

キルシュは、はっとして、そのまま倒れるように地面に伏せる。

すると、どこからともなく飛んで来たアデルが、キルシュの前に降り立つと、持っていた木の棒で次々にホーンラビットを跳ね返した。

「ラスト~ぉぉぉっ」

角に当たったのか、三回目はカキンと音が響いた。

「はっ、急がなきゃ」

飛んでいったホーンラビットを見送っていたアデルは、こんな暇はないと、ホーンラビットが飛んでいった方へと駆け出した。

「なっ……お、おい。アデル!?」

地面に伏せた事で、服が汚れていたが、そんな事を気にする暇もなく、突然走り出したアデルにキルシュは慌てる。

ここで再び見失うのは心細かったのだ。

すると、キルシュの呼び掛けに、アデルが振り返らずに答えた。

「キルシュも、その辺に引っかかってるロープがあるでしょ?持って来て」
「え?」

そう言われて目を向けた先には、木の枝にかけられた幾つものロープがあった。

「な、なぜこんな所に……?」

それもこの辺りの木にだけ引っ掛けられているのだ。

訳が分らないながらも、キルシュはその内の二本を手に取り、アデルの方へと向かった。

「あ、持って来てくれた?ありがとう。あと二匹も縛っちゃうから、こっちを持ってて」
「……え……」

そう言ってアデルから渡されたのは、手足を器用にロープで縛られ、失神したままのホーンラビットだった。

「まさか……」

キルシュが持ってきたロープを受け取ったアデルは、先ほど跳ね返した事で失神しているホーンラビットを見つけ、同じように縛り上げていく。

「はい。キルシュ。こっちも持って」
「あ、あぁ……」

呆気なく吊るされるホーンラビットを、恐る恐る受け取る。

「な、なぁ……なんか、手慣れてないか?」

手早く流れるようにホーンラビットを縛っていくアデルに、キルシュは頬を引きつらせながら尋ねた。

「え?そう?これでもまだ、出来るようになって一週間も経ってないんだよ?」
「は?」

出来たと言って、アデルが最後の一匹を吊るし上げて、得意気な表情で見せた。

「ティアがね。こうやって獲るって教えてくれたの。この辺にはホーンラビットが多いから、ロープをあそこに用意しておいてくれてね。マティちゃんのご飯になったり、ギルドで売るんだって」
「……そうか……」

話し振りから、これがいつも通りの習慣のようなものだと知ったキルシュは、どう返せばいいのか分らなかった。

「結び方も、ティアのとっておきを伝授してもらったんだぁ。凄いでしょ?」
「……あぁ……はい……」

アデルは既に立派に、ティアに染まっているのだ。

キルシュは、スルスルと木に登って行くアデルを呆然と見上げる。

手足を縛り、逃げられなくした三匹のホーンラビットを、木の中程の高さの所に括り付けると、アデルは準備万端とそのまま降りて来る。

「よしっ。これで、マティちゃんとの鬼ごっこが終わったら、回収するだけ」
「……保管場所……なのか?」

当たり前のようにアデルが行動するのを見て、キルシュは半ば呆れながら訊ねた。

「この辺の魔獣は、ホーンラビットだけだし、ティアの結界で、空からの侵入もないから、あそこが一番安全で、邪魔にならないの」
「……全部確認済みなんだな……」

アデルの言い様から、どうやら、ティアの指示ではなく、この数日の経験から導き出したベストポジションなのだと理解した。

「あ」
「あ?」

その時、突然動きを止めたアデルに、キルシュがどうしたのかと尋ねようとしたのだが、その答えは明白だった。

《キルシュとアデルはっけ~んっ》
「なっ」

そこに現れたのは、普段のサイズと同じくらいの子狼姿のマティだった。

「うわぁっ、キルシュ走るよっ。あのサイズのマティちゃんはすっごくすばしっこいからねっ」
「いや……だが……」

大きなサイズの時よりも、無害に見えるのだ。突進されたとしてもそうダメージはないだろうと思える。

《あ、カチカの実だぁ。これ美味しいんだよね》
「え……」

そう言って、マティはアデルとキルシュを放って、足下に落ちていたカチカと呼ばれる硬い殻で覆われた木の実を落ち葉の中から器用に前足を使って掘り出す。

「キルシュ~。今のうちだよ~」
「いや、そんなに慌てる必要は……」

その時、あり得ない程硬い物が割れる音が響いた。

《むぐ……おいひぃ……》
「……あ、アデル……あれは、カチカの実だよな……」
「うん。市場で、筋肉ムキムキのおじちゃんが、斧で真っ二つにするやつだよ」
「……今、ものすごく簡単に歯で砕かなかったか……?」
「マティちゃん、歯が丈夫だから、噛まれたら痛いよ?」
「………」

むぐむぐと、その大きめの実を美味しそうに頬張るマティに、キルシュは表情を引きつらせる。

「あれは、あんなに大きな実なのか……」
「あ、それ、びっくりだよね。売ってるのって、割れちゃって小さいもん」

噛まれたら大変な事になると知ったキルシュは、少々現実逃避を試みていた。

それは、恐怖の為か、はたまたその無害そうな姿の為か、二つの全く異なる印象の為に混乱し、どうしても足を踏み出せずにいたのだ。

《む。鬼ごっこ忘れてた》

マティには、少し集中力が足りない。

「あ、き、キルシュ行くよっ」
「あ、あぁ……っ」

こうしてしばらくマティから逃げ回るのだが、背後から体当たりを受けたキルシュは、そのまま地面にダイブし、背中にマティの足跡を付けられて呆気なく捕まる。

その足の速さで健闘したアデルも、魔術で追い詰められ、捕まる事になった。


キルシュ。
アデル。

失格。


つづく
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