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第七章 秘伝と任されたもの
380 視えた!
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そういえば、前にも挨拶に行く前に来られたことがあったなと高耶は内心、苦笑していた。もう驚くこともない。
《おや。驚いてはくれないのか》
「いつでも心の準備はしておりますので」
《ははっ。なるほど》
「ご挨拶が遅れました。秘伝高耶と申します」
《ああ。会えて嬉しいよ。我らの中では、君は有名だからね》
「有名……」
気になる話だったが、あえて深く聞かないことにする。この神の話し方からすると、悪い意味ではないだろう。
この神の見た目は落ち着いた四十代くらいの男性だろうか。先日も会った土地神とは違い、はっきりとした人の姿をしている。
だからこそ、宮司達は突然現れた神に口を半開きにしてきょとんとした表情を見せた。確実に人にはあり得ない姿をしていた方が理解がしやすかったかもしれない。
そんな考えが、宮司達へ視線を移した高耶から見て取れたのだろう。
《ふっ。もっと分かりやすい姿の方が良かったか》
「っ、いえ……」
《なに。特に姿に拘りはないのだがな。さすがに奇抜な姿では、この者達に妖だと思われる可能性もあるだろう?》
「そうですね……なくはないかと」
神の存在を否定できずにいるが、妖の存在を信じている者は多いだろう。そこに、人ではない奇抜な姿で現れれば、逆に恐怖心から視えないと自己暗示をかけてしまいかねなかった。
今回は、視えるようにしたいのだ。更に自己暗示をかけられてはいけない。
「……視える……」
《うむ。視えているだろう。視たいと、視えるようになるかもしれないと、お前は先ほど思っていた。これにより、視る為の準備ができたのだ。覚悟ができたのだ》
「覚悟……」
《人とは、神でも妖でも視えぬものが突然視えたら、理解できないものとして脳が拒否反応を示す。これによって、視えていても視えないと錯覚するものなのだよ》
「……はあ……」
いきなり、神から脳の働きについての話が来て、宮司達は混乱した。
だが、高耶には慣れたことだ。身近にサイエンス系の話に興味津々な土地神がいるのだから。
《お前達はそれなりに力を感じ取れるだろう。私を神だと理解しているはずだ》
「っ、貴方様が、神であることは感じておりますっ」
そう言って、宮司は深く頭を下げた。体を伏せ過ぎて、もはや床にへばりつくようだった。とっても体が柔らかそうだ。
そんな的外れなことを考えているのは高耶だけではなく、達喜達も感心して他人事のように宮司を見ていた。
そして、そんな宮司の後ろでは、二人の補佐達が未だにボケっと神を見上げて座っていた。
《やはり、素質があっても、認められるかどうかは人によるようだな。ふむ……興味深い……》
「「ぐっ」」
「っ、神力が強過ぎますっ」
興味を持ち過ぎて、配慮が消えたようだ。神力は、人には強すぎるため、ここに現れた時からかなり抑えてくれていた。それが噴き出すようにして強まったのだ。慌てて指摘する。
《おっと。すまないねえ。人の前に出るのは不慣れなんだ。これくらいならば大丈夫だと聞いたんだけどね》
誰にだろうと疑問に思っても口にはできなかった。深みにハマりそうだと感じたのだ。
《私よりも君の方が、制御できているようだ》
「いえ……」
《あまり長居をするのも良くないな》
そう結論付け、神は宮司に目を向ける。神気に驚いて顔を上げていた宮司は、緊張に顔を少し強張らせる。そんな宮司に笑みを見せた。
《ふふふっ。まあ、なんだ……今後は目を閉じることなく、受け入れるべきことを正しく見定めていってくれ》
「っ、はいっ!! お言葉、胸に刻みますっ」
神気に怯え、ガタガタと震えていた二人の補佐達も、顔色を悪くしながら、宮司と一緒に顔を床に伏せていた。
次の瞬間には、神は高耶の方へと視線を一度向け、目元を和ませて見せてから、その姿を消した。神域に帰ったらしい。
そこでようやく、達喜達も息を吐いていた。
「やっぱ、とんでもねえわ……」
そんな感想が出るほど、達喜達も緊張していたようだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
《おや。驚いてはくれないのか》
「いつでも心の準備はしておりますので」
《ははっ。なるほど》
「ご挨拶が遅れました。秘伝高耶と申します」
《ああ。会えて嬉しいよ。我らの中では、君は有名だからね》
「有名……」
気になる話だったが、あえて深く聞かないことにする。この神の話し方からすると、悪い意味ではないだろう。
この神の見た目は落ち着いた四十代くらいの男性だろうか。先日も会った土地神とは違い、はっきりとした人の姿をしている。
だからこそ、宮司達は突然現れた神に口を半開きにしてきょとんとした表情を見せた。確実に人にはあり得ない姿をしていた方が理解がしやすかったかもしれない。
そんな考えが、宮司達へ視線を移した高耶から見て取れたのだろう。
《ふっ。もっと分かりやすい姿の方が良かったか》
「っ、いえ……」
《なに。特に姿に拘りはないのだがな。さすがに奇抜な姿では、この者達に妖だと思われる可能性もあるだろう?》
「そうですね……なくはないかと」
神の存在を否定できずにいるが、妖の存在を信じている者は多いだろう。そこに、人ではない奇抜な姿で現れれば、逆に恐怖心から視えないと自己暗示をかけてしまいかねなかった。
今回は、視えるようにしたいのだ。更に自己暗示をかけられてはいけない。
「……視える……」
《うむ。視えているだろう。視たいと、視えるようになるかもしれないと、お前は先ほど思っていた。これにより、視る為の準備ができたのだ。覚悟ができたのだ》
「覚悟……」
《人とは、神でも妖でも視えぬものが突然視えたら、理解できないものとして脳が拒否反応を示す。これによって、視えていても視えないと錯覚するものなのだよ》
「……はあ……」
いきなり、神から脳の働きについての話が来て、宮司達は混乱した。
だが、高耶には慣れたことだ。身近にサイエンス系の話に興味津々な土地神がいるのだから。
《お前達はそれなりに力を感じ取れるだろう。私を神だと理解しているはずだ》
「っ、貴方様が、神であることは感じておりますっ」
そう言って、宮司は深く頭を下げた。体を伏せ過ぎて、もはや床にへばりつくようだった。とっても体が柔らかそうだ。
そんな的外れなことを考えているのは高耶だけではなく、達喜達も感心して他人事のように宮司を見ていた。
そして、そんな宮司の後ろでは、二人の補佐達が未だにボケっと神を見上げて座っていた。
《やはり、素質があっても、認められるかどうかは人によるようだな。ふむ……興味深い……》
「「ぐっ」」
「っ、神力が強過ぎますっ」
興味を持ち過ぎて、配慮が消えたようだ。神力は、人には強すぎるため、ここに現れた時からかなり抑えてくれていた。それが噴き出すようにして強まったのだ。慌てて指摘する。
《おっと。すまないねえ。人の前に出るのは不慣れなんだ。これくらいならば大丈夫だと聞いたんだけどね》
誰にだろうと疑問に思っても口にはできなかった。深みにハマりそうだと感じたのだ。
《私よりも君の方が、制御できているようだ》
「いえ……」
《あまり長居をするのも良くないな》
そう結論付け、神は宮司に目を向ける。神気に驚いて顔を上げていた宮司は、緊張に顔を少し強張らせる。そんな宮司に笑みを見せた。
《ふふふっ。まあ、なんだ……今後は目を閉じることなく、受け入れるべきことを正しく見定めていってくれ》
「っ、はいっ!! お言葉、胸に刻みますっ」
神気に怯え、ガタガタと震えていた二人の補佐達も、顔色を悪くしながら、宮司と一緒に顔を床に伏せていた。
次の瞬間には、神は高耶の方へと視線を一度向け、目元を和ませて見せてから、その姿を消した。神域に帰ったらしい。
そこでようやく、達喜達も息を吐いていた。
「やっぱ、とんでもねえわ……」
そんな感想が出るほど、達喜達も緊張していたようだ。
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