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第七章 秘伝と任されたもの
381 神らしい
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今回のことで、神職関係者で集まり、連盟との付き合い方について話し合うことになったようだ。
「必ず! 必ず! 全面的にご協力できるようにしてみせます!」
ものすごい意気込みを感じた。そうして帰り道だ。
「高耶、お前、マジで神だわ」
「……なんですか、いきなり」
達喜が訳のわからないことを言い出した。その顔が気に入らんと言うように、達喜が背中を叩く。
「あのなあっ。いくら夢咲家でも、あそこまで言われねえんだよ! 協力的になるって言ってもだなあっ」
「っ、お、落ち着いてください」
どうやら、まだ好意的だと感じる夢咲家の達喜からしても、今回の宮司の対応は良かったようだ。
「大体、神が直で来るとか、普通ねえからなっ!」
「あ~、まあ、そうですよね……」
「なんだその気のねえ返事は! これが異常だと分かってねえだろ! 喚びもしねえのに突然現れるとか普通はねえんだよ!」
「いや、さすがに、いきなり現れてご挨拶するのは、最近になってですから」
「あるんじゃねえかっ」
興奮しっぱなしだ。伊調が見兼ねて声をかける。
「落ち着いてください。達喜殿。御当主にはあれが普通なのですよ。神々も、ご友人やお孫さんに会いに来ているようなものなのでしょう」
「……っ、納得できそうになってんだけど……」
「納得されませ」
「くっ、だってよお、あまりにも非常識だろ」
「神とは、理不尽で非常識なこともあり得るものですよ」
「……納得した……」
「それはよおございました」
高耶としては納得し難いものだったが、達喜や他の者達も納得したようだった。
そんな中、新たな疑問を感じた者がいた。
「気になっていたのですが、伊調さんは、なぜ高耶君のことを御当主と呼ぶのですか? もちろん、当主であることに変わりはありませんが、それならば、夢咲の方もそう呼ばれますよね?」
親しくないからとか、そう言った答えはないだろうと雛柏教授は不思議そうにしていた。
「ああ。そうですね。お名前を呼ぶのも畏れ多いと感じてしまうからです」
「……本当に神なのですか?」
「ええ。御当主は、間違いなく神気をまとっておられますから」
「……高耶君……すごいね。今からでも僕も御当主様って呼ぼうかな……」
「不自然なのでやめてください……」
そんな話をしている後ろでは、勇一と律音が荷物を抱えて静かについてきている。それを振り返り、達喜は顔を顰める。
「それにしても、この量を調べるのか……」
「各家の方の封印の調査と一緒に調べてもらった方がよさそうですね」
預かった資料は、本の形になっている。それを大きな旅行カバン五つに分けて持っていた。
「手伝おうか」
内二つを両肩にかけている律音に声をかける。勇一の方は三つだが、涼しい顔をしているので、余裕がありそうだ。なにより、これくらい持てる力があることは分かっている。しかし、律音は少しよたついていた。
「え、いえ。そんなっ。頑張ります!」
「いや。さすがに重いだろう……」
「いえいえっ! これでバランスもとれていますのでっ」
「そうか……なら、早めに扉を繋げられる場所に行こう」
「っ、はい!」
どうも、律音も高耶を神聖視しだしたように思えた。勇一も、更に高耶に頭が上がらなくなっている。
「で? 高耶のお目当ての資料はありそうなのか?」
「どうでしょう……早急に確認します」
そこで雛柏教授と伊調が手を上げる。
「あ、僕も手伝おうか。そんな資料、滅多に見られないからねえ」
「我々も、お手伝いさせていただきます」
「ありがとうございます。お願いします」
ここで遠慮してはいけないというのは、高耶も分かるようになっていた。その資料は、達筆な行書や草書体で書かれたものもあり、慣れた者でなければかなりの時間がかかるだろう。雛柏教授や伊調達ならば心強い。
実は、こうした書体が読めなくて、各家の資料整理が滞っているのだ。この業界でも、そうした時代の流れと共に苦手になる、出来なくなることが出てきている。
こうして、まずは資料の整理にかかったのだが、高耶の役に立てるからと、清掃部隊の者も協力してくれたお陰で、一週間でまとめることができた。
「信じらんねえ……あの量を……それも、この文字を……」
「得意な者を集めましたからなあ」
「いやあ、久し振りに頭を使いましたわ」
「お前ら、何その才能、なんで隠してんの!?」
「「秘伝の御当主以外に使われるとか、いやなんで」」
「高耶! お前、マジでいい加減にしろよ!」
「なんで怒られているのかわかりません……」
なんだか理不尽に怒られた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「必ず! 必ず! 全面的にご協力できるようにしてみせます!」
ものすごい意気込みを感じた。そうして帰り道だ。
「高耶、お前、マジで神だわ」
「……なんですか、いきなり」
達喜が訳のわからないことを言い出した。その顔が気に入らんと言うように、達喜が背中を叩く。
「あのなあっ。いくら夢咲家でも、あそこまで言われねえんだよ! 協力的になるって言ってもだなあっ」
「っ、お、落ち着いてください」
どうやら、まだ好意的だと感じる夢咲家の達喜からしても、今回の宮司の対応は良かったようだ。
「大体、神が直で来るとか、普通ねえからなっ!」
「あ~、まあ、そうですよね……」
「なんだその気のねえ返事は! これが異常だと分かってねえだろ! 喚びもしねえのに突然現れるとか普通はねえんだよ!」
「いや、さすがに、いきなり現れてご挨拶するのは、最近になってですから」
「あるんじゃねえかっ」
興奮しっぱなしだ。伊調が見兼ねて声をかける。
「落ち着いてください。達喜殿。御当主にはあれが普通なのですよ。神々も、ご友人やお孫さんに会いに来ているようなものなのでしょう」
「……っ、納得できそうになってんだけど……」
「納得されませ」
「くっ、だってよお、あまりにも非常識だろ」
「神とは、理不尽で非常識なこともあり得るものですよ」
「……納得した……」
「それはよおございました」
高耶としては納得し難いものだったが、達喜や他の者達も納得したようだった。
そんな中、新たな疑問を感じた者がいた。
「気になっていたのですが、伊調さんは、なぜ高耶君のことを御当主と呼ぶのですか? もちろん、当主であることに変わりはありませんが、それならば、夢咲の方もそう呼ばれますよね?」
親しくないからとか、そう言った答えはないだろうと雛柏教授は不思議そうにしていた。
「ああ。そうですね。お名前を呼ぶのも畏れ多いと感じてしまうからです」
「……本当に神なのですか?」
「ええ。御当主は、間違いなく神気をまとっておられますから」
「……高耶君……すごいね。今からでも僕も御当主様って呼ぼうかな……」
「不自然なのでやめてください……」
そんな話をしている後ろでは、勇一と律音が荷物を抱えて静かについてきている。それを振り返り、達喜は顔を顰める。
「それにしても、この量を調べるのか……」
「各家の方の封印の調査と一緒に調べてもらった方がよさそうですね」
預かった資料は、本の形になっている。それを大きな旅行カバン五つに分けて持っていた。
「手伝おうか」
内二つを両肩にかけている律音に声をかける。勇一の方は三つだが、涼しい顔をしているので、余裕がありそうだ。なにより、これくらい持てる力があることは分かっている。しかし、律音は少しよたついていた。
「え、いえ。そんなっ。頑張ります!」
「いや。さすがに重いだろう……」
「いえいえっ! これでバランスもとれていますのでっ」
「そうか……なら、早めに扉を繋げられる場所に行こう」
「っ、はい!」
どうも、律音も高耶を神聖視しだしたように思えた。勇一も、更に高耶に頭が上がらなくなっている。
「で? 高耶のお目当ての資料はありそうなのか?」
「どうでしょう……早急に確認します」
そこで雛柏教授と伊調が手を上げる。
「あ、僕も手伝おうか。そんな資料、滅多に見られないからねえ」
「我々も、お手伝いさせていただきます」
「ありがとうございます。お願いします」
ここで遠慮してはいけないというのは、高耶も分かるようになっていた。その資料は、達筆な行書や草書体で書かれたものもあり、慣れた者でなければかなりの時間がかかるだろう。雛柏教授や伊調達ならば心強い。
実は、こうした書体が読めなくて、各家の資料整理が滞っているのだ。この業界でも、そうした時代の流れと共に苦手になる、出来なくなることが出てきている。
こうして、まずは資料の整理にかかったのだが、高耶の役に立てるからと、清掃部隊の者も協力してくれたお陰で、一週間でまとめることができた。
「信じらんねえ……あの量を……それも、この文字を……」
「得意な者を集めましたからなあ」
「いやあ、久し振りに頭を使いましたわ」
「お前ら、何その才能、なんで隠してんの!?」
「「秘伝の御当主以外に使われるとか、いやなんで」」
「高耶! お前、マジでいい加減にしろよ!」
「なんで怒られているのかわかりません……」
なんだか理不尽に怒られた。
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