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彼女&彼Side
彼女Side 30 エピローグ
しおりを挟む———一世一代の告白を終えた私はそのまま逃げ出してしまおうかと思った。
でも荷物は教室に置きっぱなしの上、明日からの夏休みの課題を持って帰らないといけなかったので、恥を忍んで教室に戻った。
案の定、教室中はお祭り騒ぎでみんなからは囃し立てられるわ、揶揄わられるわ、とりあえず山林のところに真っ先に行った。
「アンタ、嘘ついたわね!?転校なんてしないじゃない!」
山林は両手を後ろ頭に回して、椅子の背もたれに寄りかかって笑った。
「え?俺、転校するなんて言った?」
「だって東京行ったらもう会えないって!」
「会えないかもしんないよ、とは言ったよ。飛行機落ちるかもしんないじゃん?」
ニヤ、と笑う。
「ま、でも感謝してよ。ああでも言わないと、佐藤、小林の事好きなの認めたがらないで…ぐえっ」
私が山林の襟を掴んで首元を締め上げたので、ヤツは最後まで言い終える事が出来なかった。
「アンタ、殺す!」
隣で久住くんが「まぁまぁ」と間に入った。
「佐藤、こえー…小林は一体どこが良かったんだろな…」
村山が隣の堤に小声で言っていたのが聞こえた。
「は?」ギロっと睨む。
村山は口を押さえて慌ててつぐんだ。
かくして、小林が戻ってくるまでの間、小林きっと弱みを握られて佐藤と付き合いだしたんじゃないか、とまことしやかに囁かれることとなった。
教室の窓から見える青空には一筋の飛行機雲。
今頃、小林は空港に向かう車の中で同じ空を見上げているのだろうか。
———これはニセモノの恋人ごっこから始まった私たちの嘘のようなホンモノの恋の話。
———完———
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