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第255話 そして、妹たちを護る為に

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 俺は右手に掴んだ優羽花ゆうか
 そのまま彼女の席に降ろすと襟首から手を離した。
 まるで猫の首を掴んで運んだかの様な雑な扱いに
 優羽花ゆうかは頬を膨らませて
 不満たっぷりの表情かおで俺を睨みつけている。
 だが優羽花ゆうかのヒカリに対しての行為があんまりだったので…
 兄歴16年の俺としては見て見ぬふりは出来なかった。
 多少強引でも対処せずに居られなかったのである。

「さてと…
待たせてしまって申し訳ないミリィ。
見ての通り優羽花こいつは授業の途中からずっとこの有様だったから
ミリィの魔法授業を全然聞いていなかった。
それに多分…ヒカリのことに気を取られて
それまで聞いていた魔法の事も全部忘れていると思う。
優羽花ゆうかは頭の使い方は余り器用じゃないからなあ。
だから、手間を取らせて悪いんだが
最初からもう一度授業をしてくれないかな?
俺も復習がてら、一緒に受けるからさ」

 俺は頭を下げてミリィにお願いした。

「ふふっ、そんなことかい兄君様あにぎみさま
ボクにとってはお安い御用だよ。
むしろこの世界エゾン・レイギスを救う
異世界の勇者様であるユウカに
魔法の授業を何度も出来るなんてこと…
魔法学者であるボクとしては願ったり叶ったりだよね!
だから、そんなに仰仰ぎょうぎょうしい真似は止してくれないかい?」

 ミリィは喜んで快諾してくれた。

「ありがとうミリィ。
ほら優羽花ゆうか
お前も彼女に礼を言うんだぞ?」

「あ…うん。
ありがとうミリィさん、
ごめんね迷惑かけて」

「あはは、全然迷惑じゃないよ!
さっきも言った通りボクはむしろ大歓迎さ!
それじゃあ魔法の授業を今日の分の最初から再開するよ。
教科書の5ページを開いてくれるかな?」

 ミリィは水を得た魚の様に生き生きと、
 魔法についての教鞭きょうべんを始めた。
 彼女は本当に魔法の指導をするのが好きなんだなあと俺は思った。

「…なるほど、そうなんだ」

 優羽花ゆうかは真剣な表情かおでミリィの講話を聴いている。
 あまり難しい話を聞くのは苦手な我が妹ではあるが
 ミリィに対して悪いと思っていることも手伝って、
 初回の授業の時とはうって変わって
 ひたすら真面目に授業を受けている。
 優羽花ゆうかは理解するのがゆっくりなだけで頭が悪い訳では無い。
 この世界のこと、魔法の事をしっかりと理解してくれるだろう。

「んー、
慧河けいがおにいちゃん。
優羽花ゆうか
がんばれー」

 ヒカリは俺の隣の席に座って両手を挙げて俺たちを応援している。
 この世界を護る精霊としての冷静沈着な様相では無く、
 見た目通りの幼い少女の立ち振る舞い。
 どこか楽し気な感じである。

 さて…俺も復習だな。
 俺が元居た元の世界、地球の日本における歴史、仕組み、物理法則と同様に…
 この世界の歴史、仕組み、魔法の仕組み…
 常識の知識として俺の頭の中に落とし込むのだ。
 俺がこれから先、この世界エゾン・レイギスで生き残る為に。
 そして、かけがえのない大切な妹たちを護る為に!

 ここに居る妹たち。
 優羽花ゆうか
 ミリィ、
 ヒカリ。

 この城に居る妹たち。
 ポーラ姫、
 姫騎士団プリンセスナイツのシノブさん、
 カエデ、
 モミジ、
 イチョウ、
 クレハ、
 シダレ、
 イロハ、
 ツツジ。

 最後に…元の世界に居る妹。
 静里菜せりな

 俺はこの異世界の知識を学び、
 そして魔法を修得して、
 この世界で生き残る力を得るのだ。

 そして…愛しい妹たちを護る!
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