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第254話 幼いドヤ顔

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「…痛あっ!?
いきなり何するのよ、お兄っ!」

 俺に不意に頭を小突かれた我が妹、優羽花ゆうか
 突っ伏していた机から
 がばっと顔を上げると抗議の声を上げた。

「そりゃあ、お前…
ヒカリが優羽花ゆうか本気ガチ泣きに困っていたから
止めるために小突いたに決まっているだろう?」

「ヒカリちゃんはそんなあたしに困っているなんて事言わない!」

「…優羽花ゆうか
わたしはけっこう困っている…」

髪から肌、
着ている服まで白づくめの幼い少女の姿をした
光の精霊ヒカリは、ぼそりと反論の言葉を上げた。
彼女はこの世界エゾン・レイギスを護る精霊の一柱ひとはしらとしての
いつもの冷静沈着な態度は崩してはいないものの、
その表情かおからは明らかに優羽花ゆうか辟易へきえきしていると見て取れた。

「え、ええっーー!?
そうなの?
ヒカリちゃあん!
ああっ…あたしを嫌いにならいでえええーーー!!」

ヒカリの言葉に
おもむろに動揺して絶叫する優羽花ゆうか
…ちょっと慌てすぎなんじゃないですか優羽花ゆうかサン!?

優羽花ゆうか
光の精霊は光の勇者と連なるそんざい、
勇者である優羽花ゆうかをきょひすることはない」

「ああっ…ヒカリちゃあん!
あたしを許してくれてありがとおおっーー!!」

優羽花ゆうかはそう言ってヒカリに抱き付いた。

「ああ…ヒカリちゃんのほっぺ柔らかい…すりすり…
ああ…ヒカリちゃん良い匂い…すーはー、すーはー…」

 ヒカリを抱きしめて堪能しまくっている我が妹の姿に
 兄ながらドン引きである。
 …おい!
 いい加減そこまでにしておくんだ優羽花ゆうかよ。

 ちなみにヒカリが死んだ魚の様な目で
 優羽花ゆうかを見ている事については、
 兄の情けで言わないでおこう。

 俺はこのままではキリが無いと判断し、
 少々強引なのは承知の上で
 優羽花ゆうかの襟首を掴んで強引にヒカリから引き剥がした。

「…ぐえっ…
ちょっ…何するのよお兄い!」

 俺に襟首を掴まれながらも
 じたばた手足を動かして猛抗議の声を上げる優羽花ゆうかをよそに
 俺はヒカリに目線を移した。

「…ごめんなヒカリ。
俺の妹が迷惑掛けて」

「もんだいない。
”妹”の相手をするのも”姉”のやくめ」

 そう言葉を述べるとヒカリは自信たっぷりのドヤ顔で笑った。
 それはセカイを護る精霊としての
 いつもの冷静沈着な表情かおでは無く、
 見た目通りの子供らしい表情かお
 微笑ましいなあと俺は感じた。
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