どうしよう、俺の公子様がXXに。

小夜時雨

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公子、実に公子様。

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 なんだ、と友人タイザーが言うまでもなく、発狂するかのようにもんどり打つ筋肉質な男。
元凶は、寝台から転げ落ちるかのように床にうっつぶし、おおぉん、おぉん、と泣いていた。
 本当に、鳴いている……。獣人もここまで悲しげな声を出すとは……と、僕はどこか冷静なようでいて混乱した面持ちでいたらしい、タイザーが青ざめた顔でいることすら気づいていなかった。

 3P仲間の一人であった、貴族然とした男もまた、何やら恐れ慄いた獣人らしくない態度で、寝台の上にて呆然としている。身綺麗だった服装は、いささか激しい運動に乱れてはいたが、長々としていた髪ですら落武者のように垂れて、耳すらも怯えるかのようにしてぶら下がっていた。おかしいな、夜会でははっきりとぴんと、自信満々にびしっと決まった髪型ですら毛先の先まで撫であげて立ってすらいたのに。見やれば、無事だった股間もぶらりと力なくぶら下がっている。

 「……あぁ、うるさい。
  騒々しい」

 発した言葉は、間違いなく公子の麗しい声だ。
 まったくもって力強い、この場の誰よりもはっきりとした物言いだった。
 支配者たる公子は、ぺっ、と口の中に広がった澱みを吐き出したものらしい、白濁混じりの血液を、床へと容赦なく吐露した。
 
 衣づれの音のみで、素っ裸で寝台から立ち上がる彼の、その純白な姿。
あまりにも非現実的なほど、美麗かつ、どこか異質めいた空気を醸し出していた。
 体のあちこちに、つい先ほどの交わりの跡があるが……、吸われて赤く広がった模様や、胸元の飾りにある噛まれた跡、内腿に流れていく性液が、まるで一筋の涙のように……流れていった。
 
 さらには彼は、まっすぐに。

 「え、あ、え? あ?」

 タイザーは、驚きの声をあげる。
なんせ、窓辺のほうへ……、降り立つように、こちら側へ、向かってきたものだから。
 
 とてつもなく、強い視線は、室内の光から、月の夜の光によって、あらわになった。
僕が見惚れた、あのエメラルドの瞳が……、僕を射抜いていたのだ。
 
 (あ……)

 刹那、足の裏が、逃げ出したがっていた。

 (あー……食べられる?)

 たらり、と冷や汗が背中を、悪寒が走ったからだ。
ぞくぞくとした冷ややかさは、何も公子の視線だけじゃなく、彼の姿、彼の意思。
 そのすべてが、僕に向かっているから、そう感じてしまうのだろう。

 何やら威圧感さえ感じる彼から、僕は果たして逃げられるのだろうか?

 だが、つん、とした彼の乳首に、えもいれぬ色香をみてとった僕は、ふいに、なぜ、僕は彼とこうして見合わなければならないのかとも思った。

 彼は、淫乱だ。

 なんでかわからないが、こうして、いく人もの男ばかりと交わっている。
不特定多数と。
 
 多分だが、彼はわかっていたのだ。
こうなることを。

 (どうして、こんな選択を?)

 あのとき、彼のすべてを奪った責任を、と迫られるかもしれなかった。
 多分、あの出来事は、彼にとって衝撃的だったことだろう。
 
 咄嗟の判断は、あの時も、この時も。同じ。

 タイザーは、僕の腕を引っ張った。

 「お、おい、逃げるぞ!」
 「……っ」

 そうだ。
僕は、デバガメにしにきたのだ。
 情けない獣人なのだ、それなのにこのままでいては……友に迷惑がかかってしまうかもしれなかった。
 
 「リヒ……ごふっ」

 彼は僕の名前を出しそうになったので、ついうっかり喉元を片手で締めてしまったが、衝撃的だったので許して欲しい。意外と僕は冷静でいるようで、冷静でないのかもしれない。

 「行くぞっ」

 はっとしたタイザーは、僕と共に、駆け足でその場を逃げ出した。
逃走する姿、まさしく獣人らしくない、しょうもない後ろ姿であったことだろう。
 
 それでも。
 彼は、僕に追ってきた。

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