47 / 99
第47話 強気な姿は維持する
しおりを挟む
『一週間の仕事が始まる月曜日。年中無休で働いているから、月曜日が来ても落ち込まなくて、ラッキィイイイイイ!! って言ったら、どうする?』
「それをラッキーという時点で、大分キテおるぞ?」
『大丈夫さ。カンがグシャグシャになるところを見て、精神落ち着かせてるから。それはそうと、ヤカン。どうだい、ヤカンの身体方の様子は? 結構、時間経ってるけど身体に変化はあるかい?』
「空き缶が悲鳴を上げて潰れている映像を見て、精神を落ち着かせている時点で、大分精神的に病んでいるではないか。それに我はヤカンだが、ヤカンではない』
『哲学かな?』
「ただの訂正ヤカン」
『なんだかんだかやけに落ち着いて話をしているけど、勇者はまだまだそのままって感じなの?』
イチカとカンは、割とまったりと余裕を持ちながら、いつもの緩い会話をしていた。
「勇者はまだ必死に我を魅了しようと、踊っているぞ」
〝勇者〟天翔龍はカンを、〝魔王ヤカン〟と認識したまま、仲間の美女達同様に自身のチートスキルである〝魅惑〟で、手駒にしようとしていた。
そして勇者の〝魅惑〟の術は、天翔龍の〝踊り〟が発動条件であった様で、カンの目の前で言葉では言い表せられないような、独創的でダサい踊りを続けていた。
『どうやら、ヤカンには勇者のチートである魅了の香りが、一切効かないみたいだね。さて、何故だろう?』
「まさか、某野菜戦士の親友の様に、鼻がないから効かないみたいな事をいわぬだろうな。それと、我の名はカンだからな」
『……』
「図星なのヤカァアァアアアン!?」
『は!? 何の話してたっけ。カンだかヤカンだが、よくわかんない事になっている君、教えてくれないかな?』
「これほど酷い話の変え方も無いぞ。その為に、酷い事を言うのをやめような」
『どうでも良いけど、ヤカンの水大丈夫? そろそろ空焚きになりそうだし、そっちの話を進めるとかなんとかしなよー』
「軽いな!? そしてその指摘は、的確につき、本当に水が無くなるヤカァアアン!?」
空焚きとなる事を恐れ、焦り出すカン。
一方、カンが自身の魅了の香りに反応しない事から勇者は若干焦りながらも、引き続き香りを放出する踊りを続けた。
その為、カンの中のお湯はどんどん蒸発していき、本当に空焚きになる直前となっていた。
「のう、勇者よ。そろそろ良いかの? 我は、空焚きにじきになりそうなんだが? 諦めて、魔王軍幹部及び取り巻きの美女達の洗脳を解くのだな」
「……何でだよ! 何で僕の魅了の香りが、ヤカンに効かないんだよ!」
「ふっ、そんな事なら分かりきったことだ」
カンは勇者に対して、まるで全てを悟っているかのように声を出した。
「魔王に、不思議な踊りが効くと思うな!」
『いやいや、〝ヤカン〟だからでしょ』
「確かに……魔王に即死魔法が効かないように、魅了なんていう術が効くわけがない……そんなこと、RPGの常識じゃないか……ハハハ……僕は何て間抜けだったんだ」
踊りをやめた勇者は、思わず乾いた笑いを口からこぼす。
カンはその様子を見て、この戦いに勝ったと何故か思ってしまった。勇者は、ほんの少し恥をかいただけであっただけだと言うのに。
「そうであろう。分かったなら、先ずは我の下の火を止めるのだ。そろそろヤカンの底が黒くなってきそうなのだ」
「やはり魔王には、小細工無しの勇者の全力、即ち〝会心の一撃〟がお約束だよね……みんな! 僕に力を!」
「ん? 心が折れた訳では、なかったのか?」
勇者は叫びながら、天高く聖剣を掲げた。そして聖剣に向かってハーレムメンバー達は、何も言わずに自身の魔力を注ぎ始めた。
そして、全ての魔力を注ぎ込んだ者から順にその場に倒れこんでしまった。
「お主、一体何を……」
「勇者の一撃と言ったら、仲間の力を合わせたものがお約束でしょ? 浪漫だよねぇ、こう言うのってさ」
カンに向けて嗤う勇者。
「仲間はその代わりに、全員倒れておるようだが? しかも泡吹いている者や、吐血している者すらいるではないか」
「当たり前だろ? 全部の魔力を捧げるように、命令したんだから」
勇者は笑いながら、仲間をまるで道具としてしか見ていないかのように、言い捨てた。
『召喚されて、そこまで間もない上に、特にそっちの世界で闇堕ちイベントは、その勇者君には発生されていないみたいだね。と言うことは、初めからから、既に堕ちていたみたいだよ。カミペディア情報ね』
「貴様……」
イチカの言葉がまるで聞こえていないかの如く、カンは目の前の勇者に集中していた。
そして、その怒りを表す如く、ボディはカタカタを震えていた。
「それが勇者のすることかぁあああ! 腐れ外道がぁぁあああ!?」
「勇者だからね! 僕は、この世界においての救世主! 何をしたって、許される! 今度は、跡形もなく消しとばしてやる! そうすれば、耐えられないでしょ!」
勇者は、聖剣に集めた仲間の魔力を天に向かい放った。すると天より激しい雷が聖剣に落ちた。
「これで終わりだぁあああ! 〝雷鳴轟光覇王天撃〟!」
勇者の渾身の一撃を前にして、カンは呟く。
「魔王のヤカンを……舐めるなよ?」
そして、勇者の一撃は振り下ろされる。
「それをラッキーという時点で、大分キテおるぞ?」
『大丈夫さ。カンがグシャグシャになるところを見て、精神落ち着かせてるから。それはそうと、ヤカン。どうだい、ヤカンの身体方の様子は? 結構、時間経ってるけど身体に変化はあるかい?』
「空き缶が悲鳴を上げて潰れている映像を見て、精神を落ち着かせている時点で、大分精神的に病んでいるではないか。それに我はヤカンだが、ヤカンではない』
『哲学かな?』
「ただの訂正ヤカン」
『なんだかんだかやけに落ち着いて話をしているけど、勇者はまだまだそのままって感じなの?』
イチカとカンは、割とまったりと余裕を持ちながら、いつもの緩い会話をしていた。
「勇者はまだ必死に我を魅了しようと、踊っているぞ」
〝勇者〟天翔龍はカンを、〝魔王ヤカン〟と認識したまま、仲間の美女達同様に自身のチートスキルである〝魅惑〟で、手駒にしようとしていた。
そして勇者の〝魅惑〟の術は、天翔龍の〝踊り〟が発動条件であった様で、カンの目の前で言葉では言い表せられないような、独創的でダサい踊りを続けていた。
『どうやら、ヤカンには勇者のチートである魅了の香りが、一切効かないみたいだね。さて、何故だろう?』
「まさか、某野菜戦士の親友の様に、鼻がないから効かないみたいな事をいわぬだろうな。それと、我の名はカンだからな」
『……』
「図星なのヤカァアァアアアン!?」
『は!? 何の話してたっけ。カンだかヤカンだが、よくわかんない事になっている君、教えてくれないかな?』
「これほど酷い話の変え方も無いぞ。その為に、酷い事を言うのをやめような」
『どうでも良いけど、ヤカンの水大丈夫? そろそろ空焚きになりそうだし、そっちの話を進めるとかなんとかしなよー』
「軽いな!? そしてその指摘は、的確につき、本当に水が無くなるヤカァアアン!?」
空焚きとなる事を恐れ、焦り出すカン。
一方、カンが自身の魅了の香りに反応しない事から勇者は若干焦りながらも、引き続き香りを放出する踊りを続けた。
その為、カンの中のお湯はどんどん蒸発していき、本当に空焚きになる直前となっていた。
「のう、勇者よ。そろそろ良いかの? 我は、空焚きにじきになりそうなんだが? 諦めて、魔王軍幹部及び取り巻きの美女達の洗脳を解くのだな」
「……何でだよ! 何で僕の魅了の香りが、ヤカンに効かないんだよ!」
「ふっ、そんな事なら分かりきったことだ」
カンは勇者に対して、まるで全てを悟っているかのように声を出した。
「魔王に、不思議な踊りが効くと思うな!」
『いやいや、〝ヤカン〟だからでしょ』
「確かに……魔王に即死魔法が効かないように、魅了なんていう術が効くわけがない……そんなこと、RPGの常識じゃないか……ハハハ……僕は何て間抜けだったんだ」
踊りをやめた勇者は、思わず乾いた笑いを口からこぼす。
カンはその様子を見て、この戦いに勝ったと何故か思ってしまった。勇者は、ほんの少し恥をかいただけであっただけだと言うのに。
「そうであろう。分かったなら、先ずは我の下の火を止めるのだ。そろそろヤカンの底が黒くなってきそうなのだ」
「やはり魔王には、小細工無しの勇者の全力、即ち〝会心の一撃〟がお約束だよね……みんな! 僕に力を!」
「ん? 心が折れた訳では、なかったのか?」
勇者は叫びながら、天高く聖剣を掲げた。そして聖剣に向かってハーレムメンバー達は、何も言わずに自身の魔力を注ぎ始めた。
そして、全ての魔力を注ぎ込んだ者から順にその場に倒れこんでしまった。
「お主、一体何を……」
「勇者の一撃と言ったら、仲間の力を合わせたものがお約束でしょ? 浪漫だよねぇ、こう言うのってさ」
カンに向けて嗤う勇者。
「仲間はその代わりに、全員倒れておるようだが? しかも泡吹いている者や、吐血している者すらいるではないか」
「当たり前だろ? 全部の魔力を捧げるように、命令したんだから」
勇者は笑いながら、仲間をまるで道具としてしか見ていないかのように、言い捨てた。
『召喚されて、そこまで間もない上に、特にそっちの世界で闇堕ちイベントは、その勇者君には発生されていないみたいだね。と言うことは、初めからから、既に堕ちていたみたいだよ。カミペディア情報ね』
「貴様……」
イチカの言葉がまるで聞こえていないかの如く、カンは目の前の勇者に集中していた。
そして、その怒りを表す如く、ボディはカタカタを震えていた。
「それが勇者のすることかぁあああ! 腐れ外道がぁぁあああ!?」
「勇者だからね! 僕は、この世界においての救世主! 何をしたって、許される! 今度は、跡形もなく消しとばしてやる! そうすれば、耐えられないでしょ!」
勇者は、聖剣に集めた仲間の魔力を天に向かい放った。すると天より激しい雷が聖剣に落ちた。
「これで終わりだぁあああ! 〝雷鳴轟光覇王天撃〟!」
勇者の渾身の一撃を前にして、カンは呟く。
「魔王のヤカンを……舐めるなよ?」
そして、勇者の一撃は振り下ろされる。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
落ちこぼれ魔女のリーサとラスボスのミーニャ
小松広和
ファンタジー
どうしようもなく弱い魔法使いのリーサと異世界で最も強いラスボスのミーニャの話です。共通点の全くない両極端な二人の交流を書いてみました。
では二人に自己紹介をして貰いましょう。まずは落ちこぼれ魔女のリーサから。
「初めまして。レベル15の魔法使いをしておりますリーサと申します。持ち前のドジがたたってどのパーティーからも必要とされなくなってしまいました。私はこの異世界で生きていけるのでしょうか? とても不安です」
次にラスボスのミーニャです。
「私はこの異世界で一番の実力者であり権力者のミーニャだ。ボスではないぞ。ラスボスだから間違えないように。言っておくがごつい体格のモンスターを想像されては困る。すらっとした美人だ。もちろん第2形態もない。それで勝てるのかって? 大丈夫だ。なぜ大丈夫かはこの小説を読めばわかる。ではよろしく」
「キュピー!」
あ! これはリーサのペット的存在のクロシッポですね。「よろしく」と言ってます。
とても気楽に読める作品ですので、ぜひよ読んでみてください。
黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。
【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。
「私ね、皆を守りたいの」
幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/20……完結
2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位
2022/02/14……アルファポリスHOT 62位
2022/02/14……連載開始
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる