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第46話 勇者に認められたのだから夢叶った?
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『ヤカンは何故か、とても丈夫なイメージがあるよね。あの昔ながらの、ラグビーとかでよく見たヤカンは、力強さすら感じるよ』
「勇者パーティーに、囲まれたヤカァアアン!? ヤカンも逃げられることは出来やしないヤカァアアン!?」
『結構乱暴にガンガン叩いても、空き缶よりは凹みにくい上に、多少凹んだ程度なら問題ないわけで。と言うことは、カン。これは〝成功〟と言えるのではないだろうか』
「成功とは、一体!? ちょ!? そんな事より、勇者よ、先ずは剣を置くのだ! 取り巻きの美女達も、ハンマーを構えるのを止めるのだ! 槍なんて、もってのほかなのヤカァアアン!?」
『明らかに空き缶一個から、ヤカン一個が出来る気がしないんだけど、そこは流石〝魔王〟の面目躍如と言ったところかな。なんだかんだと、魔改造を成し遂げたみたいだね』
「ピーーーーー!?」
カンは、完全に勇者のハーレムパーティーに囲まれ、各々から武器を突きつけられながらも、どうしてもヤカンの本能から逃れられず、湯が沸いたことを知らせずにはいられなかった。
その鳴き声、汽笛の如し。
「抗えぬヤカンの本能!? ピーーー!」
「ピーピー煩いよ!」
「ならばピーをピーしたらピーではないか!」
「うわぁ……何を今言おうとしたのさ……ヤカンのくせに変態だ……」
カンはなんの躊躇いもなく、会話の中で〝ピー〟を〝ピー〟して〝ピー〟と叫ぶ為に、勇者はドン引きした。
ハーレムの女性達も、完全に気持ち悪い物を見る目でカンを見ていた。
そして、そんな目線に晒されればさらさるほど、カンは気持ちが昂り、〝ピー〟を連呼していた。
『ピーをピーして興奮するなんて、ピーもピーだね』
「我の名前が入りそうなところまで、ピーで隠すでないわ! どんな興奮の仕方か、ピー過ぎて伝わらんわ!」
そんな時、カンに世界からの声が届く。
"カンは、美少女や美女達から蔑むような目線を得た!"
"カンの常時発動M型が、Lv.8にレベルアップした!"
"カンの魔沼ヨゴレの呪いが、Lv.2レベルアップした!"
「……嘘ヤカァアアアアン!? 美女から蔑まされると、我のレベルが上がった!? 世界にすら認められると言うことは、これが我の性質なのヤカァアアン!?」
「……うわぁ……何か言ってる。マジで気持ちわるぅ」
カンの突然のカミングアウトにより、勇者達はますますカンから離れていった。
しかし、ふと、勇者がカンのヤカンボディに文字が書いてある事に気付いた。
「ん? なになに?……M? どこかで確か……は!?」
「我のボディの表記に気がつくとは、ゲスっても勇者だな。くくく、ふはははは!」
わなわなと震え出す勇者、そして何故か高笑いするヤカン。その様子を見て、困惑するハーレム構成美女達。
まさに、現場はカオスである。
「魔王ぉおおお! 今度はヤカンへと姿を変えて、僕の隙をつく作戦かぁ!」
「その通りだと言っておこう。そして我は、今もさっきも隙だらけなヤカァアアン!? ピー!」
『ピーピーと某有名軟体モンスターの如く叫んでいるけども、全然可愛くないからね? それはそうと、風は物凄いエネルギーを持っているんだよね。そんな風の化身とも言える風龍の力を多少なりとも見につけているカンは、一体何をビビっているのだろうか』
呆れるイチカ。
『ピーピー言わずにヤカンらしく、コーヒーでもさっさと淹れてほしいものだよ。なんて役立たずなヤカンだよ』
「ピー! 火をピーしてくれないと、そのうち空焚きになってピーしてしまう! イチカにツッコミ入れる暇なんて、今の我にはないヤカァアアン!?」
『カンさぁ、そろそろ大声で放送禁止用語を連発するのやめなよ。会話の所々にピーというヤカンのお湯が沸いたような音を入れるこっちの身にもなってくれる? 結構面倒なんだよ、カンの〝ピー〟に見せかけて、こっちでも同じ効果音をカンの言葉に被せるのさぁ』
「悪意の塊の様な男だな!? そもそも、そんな紛らわしいことをする方が、頭おかしいヤカァアン!」
カンが、勇者からイチカへと意識を向けている隙に、勇者はその手に聖剣を召喚していた。
「さぁ、魔王ヤカン! お前を倒して、もっとハーレムを増や……もとい、世界に平和を取り戻す!」
「気持ち良いくらいに、本音がダダ漏れではないか。勇者なら、少しは外聞も気にせぬか」
カンが勇者の欲に呆れていると、ふと勇者のハーレムパーティの美女達と目が合った。実際には、カンに目はない為、一方的にカンが見ているだけだが。
結果としてカンは、全員の瞳が虚ろであることに気がついた。
「おい、勇者よ。その者たちはまさか……」
「ふふ、流石魔王だね。もう気付いちゃったのかい? そうさ、この子たちは、僕の魅了のチート能力でハーレムパーティなったのさ!」
両腕を広げ、カンに対して誇らしげに、そしてゲスい笑い顔を勇者は作った。
「本物のゲスやッカァアアアン!?」
「あ、そうだ。 別にヤカンはいらないけど、魔王も魅了してしまえば、この世界は全部、僕の者じゃないか!」
この時の勇者の顔は、己の欲望に溺れるように嗤っていた。
「勇者が、堕ちてるパターンやカァアアアン!?」
「魔王ヤカン! この魅了の香りで、君も僕に堕ちるんだね!」
「ヤカンが名前になっとるヤカァアアアアアン!?」
召喚された勇者が持っていたスキル"魅了の香り"が発動し、辺り一帯に甘ったるい匂いが立ち込めたのだった。
「勇者パーティーに、囲まれたヤカァアアン!? ヤカンも逃げられることは出来やしないヤカァアアン!?」
『結構乱暴にガンガン叩いても、空き缶よりは凹みにくい上に、多少凹んだ程度なら問題ないわけで。と言うことは、カン。これは〝成功〟と言えるのではないだろうか』
「成功とは、一体!? ちょ!? そんな事より、勇者よ、先ずは剣を置くのだ! 取り巻きの美女達も、ハンマーを構えるのを止めるのだ! 槍なんて、もってのほかなのヤカァアアン!?」
『明らかに空き缶一個から、ヤカン一個が出来る気がしないんだけど、そこは流石〝魔王〟の面目躍如と言ったところかな。なんだかんだと、魔改造を成し遂げたみたいだね』
「ピーーーーー!?」
カンは、完全に勇者のハーレムパーティーに囲まれ、各々から武器を突きつけられながらも、どうしてもヤカンの本能から逃れられず、湯が沸いたことを知らせずにはいられなかった。
その鳴き声、汽笛の如し。
「抗えぬヤカンの本能!? ピーーー!」
「ピーピー煩いよ!」
「ならばピーをピーしたらピーではないか!」
「うわぁ……何を今言おうとしたのさ……ヤカンのくせに変態だ……」
カンはなんの躊躇いもなく、会話の中で〝ピー〟を〝ピー〟して〝ピー〟と叫ぶ為に、勇者はドン引きした。
ハーレムの女性達も、完全に気持ち悪い物を見る目でカンを見ていた。
そして、そんな目線に晒されればさらさるほど、カンは気持ちが昂り、〝ピー〟を連呼していた。
『ピーをピーして興奮するなんて、ピーもピーだね』
「我の名前が入りそうなところまで、ピーで隠すでないわ! どんな興奮の仕方か、ピー過ぎて伝わらんわ!」
そんな時、カンに世界からの声が届く。
"カンは、美少女や美女達から蔑むような目線を得た!"
"カンの常時発動M型が、Lv.8にレベルアップした!"
"カンの魔沼ヨゴレの呪いが、Lv.2レベルアップした!"
「……嘘ヤカァアアアアン!? 美女から蔑まされると、我のレベルが上がった!? 世界にすら認められると言うことは、これが我の性質なのヤカァアアン!?」
「……うわぁ……何か言ってる。マジで気持ちわるぅ」
カンの突然のカミングアウトにより、勇者達はますますカンから離れていった。
しかし、ふと、勇者がカンのヤカンボディに文字が書いてある事に気付いた。
「ん? なになに?……M? どこかで確か……は!?」
「我のボディの表記に気がつくとは、ゲスっても勇者だな。くくく、ふはははは!」
わなわなと震え出す勇者、そして何故か高笑いするヤカン。その様子を見て、困惑するハーレム構成美女達。
まさに、現場はカオスである。
「魔王ぉおおお! 今度はヤカンへと姿を変えて、僕の隙をつく作戦かぁ!」
「その通りだと言っておこう。そして我は、今もさっきも隙だらけなヤカァアアン!? ピー!」
『ピーピーと某有名軟体モンスターの如く叫んでいるけども、全然可愛くないからね? それはそうと、風は物凄いエネルギーを持っているんだよね。そんな風の化身とも言える風龍の力を多少なりとも見につけているカンは、一体何をビビっているのだろうか』
呆れるイチカ。
『ピーピー言わずにヤカンらしく、コーヒーでもさっさと淹れてほしいものだよ。なんて役立たずなヤカンだよ』
「ピー! 火をピーしてくれないと、そのうち空焚きになってピーしてしまう! イチカにツッコミ入れる暇なんて、今の我にはないヤカァアアン!?」
『カンさぁ、そろそろ大声で放送禁止用語を連発するのやめなよ。会話の所々にピーというヤカンのお湯が沸いたような音を入れるこっちの身にもなってくれる? 結構面倒なんだよ、カンの〝ピー〟に見せかけて、こっちでも同じ効果音をカンの言葉に被せるのさぁ』
「悪意の塊の様な男だな!? そもそも、そんな紛らわしいことをする方が、頭おかしいヤカァアン!」
カンが、勇者からイチカへと意識を向けている隙に、勇者はその手に聖剣を召喚していた。
「さぁ、魔王ヤカン! お前を倒して、もっとハーレムを増や……もとい、世界に平和を取り戻す!」
「気持ち良いくらいに、本音がダダ漏れではないか。勇者なら、少しは外聞も気にせぬか」
カンが勇者の欲に呆れていると、ふと勇者のハーレムパーティの美女達と目が合った。実際には、カンに目はない為、一方的にカンが見ているだけだが。
結果としてカンは、全員の瞳が虚ろであることに気がついた。
「おい、勇者よ。その者たちはまさか……」
「ふふ、流石魔王だね。もう気付いちゃったのかい? そうさ、この子たちは、僕の魅了のチート能力でハーレムパーティなったのさ!」
両腕を広げ、カンに対して誇らしげに、そしてゲスい笑い顔を勇者は作った。
「本物のゲスやッカァアアアン!?」
「あ、そうだ。 別にヤカンはいらないけど、魔王も魅了してしまえば、この世界は全部、僕の者じゃないか!」
この時の勇者の顔は、己の欲望に溺れるように嗤っていた。
「勇者が、堕ちてるパターンやカァアアアン!?」
「魔王ヤカン! この魅了の香りで、君も僕に堕ちるんだね!」
「ヤカンが名前になっとるヤカァアアアアアン!?」
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