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三章

34.拘束プレイは誰とする?

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「それで、体調はどうなのです?」
「はあ、あの日の花粉の影響で、まだ少し湿疹が…。でも薬が効いて良くなってきています、他は問題ありません。」
 そうなのだ。あの日大量の花粉を浴びて皮膚のかゆみに数日苦しんだ。でも、ヒューゴの薬のおかげでもう殆ど治ってきている。
「湿疹以外は問題ないのでしょう?でしたらそろそろ、豊穣祭の準備を再開しましょう!」
「そ、そんな…無理です!部屋を出るなと言われたのに…。」
 テレーズ様は、俺の部屋の応接室で勝手にお茶を飲んでいる。今、陛下に誰とも会うな部屋からも出るなと言われていて子供たちとも会えないのだが…。       
 俺の返事を聞いて、テレーズ様は乱暴にティーカップを置いた。そして苛立ち、テーブルをバン、と叩く。

「あなた、自分の潔白を証明しようとは思わないのですか?」
「潔白とは…?」
「貴方はデュポン公爵夫人と、姦通していると言われています。」
「えーーーーーっ?!」

 訳が分からず俺が動揺していると、テレーズ様は俺にずい、と詰め寄った。
「健気にあなたの潔白を信じている王女達のために、なんとか潔白を証明しようと思わないのですか?!いつまでもぼーっと日々を過ごして、情け無い!」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい!まず、なぜそんな話になったのか、理解に苦しみます!」
「治療にあたったヒューゴをはじめ、デュポン公爵家やイリエスの手の者たちがデュポン公爵夫人に尋ねたそうです。なぜあそこで倒れたのか…何か心当たりはあるのか、と。しかしデュポン公爵夫人は“アルノー殿下にしか話せない”の一点張りだとか。」
「え、私?!なぜ?!」
「知りません!それで、デュポン公爵もあなたとの仲を疑っておられる。そんな中、こそこそと一人で出かけて、死にかけた。邪魔になったデュポン公爵夫人に、殺されかけたと思われても仕方ありません。」
 
 俺は絶句した。本当に訳が分からない。そんなことあるはずがない!俺は抱かれない花嫁どころか抱いたこともない花嫁なんだぞ…!
 しかしそう言えるはずもなく沈黙していると、テレーズ様はふふん、と鼻を鳴らした。

「私はアルノーがそんなこと出来ない、ということは分かっています。王女達…子供でも分かるのですから。しかし、恋は盲目と言います。」
「はあ…よくわかりませんが、テレーズ様は私を信じていただける、ということでしょうか?」
「そんな生易しい意味ではありません。」

 テレーズ様は手を上げて、テレーズ様付きの召使を呼びよせた。何やらこそこそと指示を出している。

「今日のあなたの様子を見て決めようと思っていました。」

 テレーズ様の合図で、部屋の扉が開き、女性が入って来た。その女性はかなり痩せてしまっているが、なんと…、デュポン公爵夫人だった。

「デュポン公爵夫人?!」
「私が立ち会います。ここで話しなさい!」
「テレーズ様…!」
 テレーズ様はデュポン公爵夫人を応接室の椅子に座らせた。デュポン公爵夫人は俯いて少し震えていたが、やがて決心したように口を開いた。
「テレーズ様、どうか私をアルノー殿下と二人にしてください。神に誓って、姦通など致しておりません。」
「二人にしろ、だなんて言って、どうしてそれが信じられるとお思いなのですか?」
「信じられないのはごもっともです。なぜなら私も、王太后テレーズ様を信じられないからです。」
「何ですって?!」
 デュポン公爵夫人の発言に、テレーズ様はまたテーブルをバン、と叩いた。俺はその音に緊張してピシッと背筋を伸ばす。

「テレーズ様だけではありません。アルノー殿下以外は信じられないのです。私は王妃様、側妃様達が亡くなられたときに後宮に関わった、すべての人を疑っています。」

 テレーズ様はデュポン公爵夫人の発言に目を見開いた。そして少し考え込んだ後、もう一度召使を呼びつけた。

「この者たちを縛りなさい。」
「ええっ?!」

 俺だけでなく、テレーズ様の召使も驚いていたが、テレーズ様は有無を言わさず俺とデュポン公爵夫人を椅子に縛り付けた。

「このまま話しなさい。時刻は正午の鐘が鳴るまでといたします。」
 テレーズ様はそういうと席を立って部屋を出て行った。
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