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コレ……って、『買い物』なんだよね?

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 一般的に見て、それなりに関係のある者が二人、街に繰り出して店を回るのは『デート』と言うらしい。

 といっても、ポルカにそれらしい経験はない。
 下界でポルカに言い寄る男など居なかったし、妖精ジルと偽装結婚した後もそんな甘酸っぱいことをした覚えはない。近所の八百屋へ『買い出し』に行ったのがせいぜい……

 だった筈、なのだけれど。

「あ、あのサ、ジル」
「何だ」
「コレ……って、『買い物』なんだよね?」

 カウンターに行儀よく積みあげられた服やアクセサリーの山が出来上がっている。それは良い。問題は、それら全てが女物で、どれもポルカの寸法に合わせた代物だと言う事だ。

「どっからどう見ても『買い物』だろうが。何か文句あんのかよ」
「いや、だってこれ、高価そうなモンばっかじゃないサ。アタシはてっきり、通りの八百屋で白デイゴンが安売りだからソッチにいくんだとばかり……」

 『ちょっと近所の八百屋へ』みたいなノリで、何だか物凄く高級そうな服屋に連れてこられたポルカは、余りの場違い感にブルブルと震えていた。
 こんな所に来ると分かっていたなら、絶対に家から出なかった…出たとしても、せめて一張羅の白いワンピースくらいは着てきたはずである。間違っても、白い半袖シャツに青いオーバーオールなんて格好なんかしなかった。

 ――ハッ!もしや、これも『報復』の一貫かい!?

 場違いな格好で引きずり回して、思いっきり恥をかかせる……所謂、『精神攻撃』。なるほど、ポルカには効果抜群である。肉体的に乱暴されるよりも心が辛い!
 そうと分かれば、ポルカがやる事は簡単だ。即ち、精神面でも大の字で伸び伸びになり、ジルの報復すべてを受け入れる……『まな板の上のポルカ』を実践するのみ。

 一人納得し、うんうん頷くポルカを横目で見つつ――ジルは服の山から一着のワンピースを取り出した。

「コレは着て行くので、妻の服に合うアクセサリーと髪型を見繕って頂けますか」
「はい、畏まりました」
「え? くびっ……ネックレスがあるし充分じゃないかい?」

 ポルカの首には、この前ジルに着けられた首輪、もといネックレスがぶら下がっている。髪型はまぁ分かるけれど、この上でアクセサリーなんぞ着けたらゴテゴテしすぎではないだろうか?
 しかし、ジルは見る間に不機嫌そうな顔になる。一方で、先程からポルカの服を見繕ってくれている美人の店員さんは朗らかに微笑んだ。

「そうならないようにするのが、私共の腕の見せ所でございます。必ずや、愛らしい奥様に似合いのアクセサリーを見立ててご覧にいれますわ」
「……ありがとう。宜しく頼みます」
「はい、お任せください。それでは奥様、別室で髪とお化粧も致しましょう」

 何故か不機嫌オーラの若干薄れたジルを置き去りに、ポルカは別室へ連れて行かれたのだった。


 ――ほどなくして。


「準備が整いました。さ、こちらへどうぞ、奥様」
「は、ハイッ!!」

 店員の影からギクシャクした動きで現れたポルカを凝視し、ジルは物凄い表情でコチン!と硬直した。

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