63 / 117
第五章その6 ~やっと平和になったのに!~ 不穏分子・自由の翼編
不是の襲来2
しおりを挟む
「そら、こういうのもあるぜ!」
不是の叫びと共に、凄まじい力を帯びた光弾が、広範囲にばら撒かれた。
肩の拡散砲から射出されたそれは、眼下の車両もテントも無差別に攻撃していく。
雨のように降り注ぐ、しかし1発1発が凄まじく重い攻撃。
必死に防ぐ誠だったが、機体の電磁シールドは、敵の攻撃で見る間に乱れていく。根本的に属性添加機の出力が違うのだろう。
不是の機体の顔が……その口の部分が可変して開き、まるで笑っているかのように見えた。
「理解したか? 俺は生まれ変わったんだ! 俺が支配者だ、俺こそが新しい神なんだよ!」
「ふざけるなっ!」
誠は必死に回避しながら、攻撃の僅かな間隙を縫って銃をもたげる。
発射した弾丸は、不是に向かって一直線に突き進んだ。
射撃にエネルギーを振り分けている不是の機体は、防御がおろそかになっているはず。
だが今にも着弾すると思われた瞬間、弾丸は音を立てて砕けていた。
不是の機体の前方、何も無かったはずの空間に、どす黒い盾のような物が現れていたのだ。
「防御壁!? 何だ、どこから……」
誠はそこで言葉を失った。
黒い殻のように硬質化したそれは、不是の機体の肩あたりから弧を描いて伸びていたのだ。まるで魔物が、巨大な翼で自らを守るようにだ。
明らかに機体に内蔵された機構ではない、歪で不規則な形状だった。
不是は勝ち誇ったように言い放つ。
「言っただろ出来損ない、俺が新しい神だ! 魔王の細胞が宿ったんだ、もう俺に勝てるヤツなんざいねえ!」
「ディアヌスの細胞を……取り込んだのか」
誠は全身の痛みに耐えながら、荒い呼吸で言葉を返す。
「そんな事して、無事に済むと思ってるのか」
「知るかよ、こんな宝があるのに、使わない方がおかしいだろうが! お前は指を咥えて見てろ、俺が新しい支配者になる! 何でもかなう、何でも作り出せるんだからな……!」
不是はあざ笑うように答えた。
「勿論まだ奥の手もあるぜ。お前のためにとってあるんだ、今からそれを使ってやろうか?」
「…………っ!」
誠はさすがに焦っていた。
とっておきの力。それがハッタリでないなら、今の自分のコンディションで、そして仲間達の状況で、防ぎきれるとは思えない。
(このままじゃ全滅する……!)
だが、誠が覚悟を決めかけたその時だった。
不是の機体の外部拡声器から、何者かの声が聞こえたのだ。
『……遊ぶな不是、貴様の任は細胞の奪取だ。筋書きを崩すな』
いかにも冷静そうな……けれどまだ歳若い男の声だった。
どこかで聞いた事があるような気もしたが、その時の誠は消耗が激しく、とても記憶の糸を辿るような余裕が無かった。
声は淡々と用件を告げる。
『さっさと戻れ。そろそろ女神どもがやって来るぞ』
「くそがっ……!」
不是は露骨に苛立った様子で舌打ちすると、仕方なく機体を浮上させる。それから配下に怒鳴りつけた。
「お前ら、さっさと引き上げるぞっ!」
数瞬の後、炎上する野営地の彼方から、航空輸送機が浮上するのが見えた。
上向きの力場で垂直上昇する輸送機は、下部に何かを懸架していた。
銀色の球のような格納容器……つまり細胞を隔離するため、急ごしらえで被せていたカプセルである。
容器からは、引きちぎられた幾本もの鋼線が垂れていたが、それが上向きの力場を浴びて、不気味に揺れ動いていた。
「いい所だったが、ここまでにしといてやるよ。続きは今度、俺がこの世界を支配してからだ」
不是の人型重機は見る間に高く舞い上がっていく。
配下の機体も次々飛び上がり、その後を追っていった。
「ま、待てっ……!」
誠は後を追おうとしたが、そこで再び激痛が襲った。
「ぐっ……!!!」
浮上しかけた機体が止まる。追撃どころではない。
隊員達も消耗が激しく、これ以上の戦闘は不可能だった。
禁忌の細胞を持ち去る強奪者を、為す術無く見送るしかなかった。
やがて遅れる事数分、女神の佐久夜姫が転移してきた時には、一帯には襲撃者の気配すら無かったのだ。
「……強敵だったみたいだけど、みんなよく戦ってくれたわ。おかげで死者が出なかったし、上出来から上ね」
佐久夜姫は誠達を気遣ってくれたが、その表情は曇っていた。
「臨時政府の方も、同時に襲われてたのよ。あっちは囮だったみたいだけど……念のためお姉ちゃんが見張ってるから」
「それならあっちは安心やな」
難波が言うと、佐久夜姫は困ったように首を振った。
「こっちを見ててって言ったのに、ほんとしょうがない女神なの」
カノンが遠慮がちに尋ねる。
「……あの、それってお姫様に会い辛いって事ですか?」
「そうなのよ。はっきりバラすと、会うと泣いちゃうから」
佐久夜姫はそこで肩をすくめる。
無理して少し微笑んでいるのは、誠達を和ませようとしてくれたのだろう。
だが事態はそんなひと時の安らぎすら許してくれなかった。
「……っ!」
何かに気付いた佐久夜姫が虚空に映像を映すのと、映った全神連の一員が叫ぶのが同時だった。
「もっ、申し上げますっ! 全国各地に同様の細胞が、一斉に発見されました! 判明しているだけで13……まだ増加する可能性があります! 目下全力で対応にあたっておりますが……」
「何ですって……!?」
さすがの女神も驚きを隠せない。
最早事態は後戻り出来ない所まで動き出していたのだ。
不是の叫びと共に、凄まじい力を帯びた光弾が、広範囲にばら撒かれた。
肩の拡散砲から射出されたそれは、眼下の車両もテントも無差別に攻撃していく。
雨のように降り注ぐ、しかし1発1発が凄まじく重い攻撃。
必死に防ぐ誠だったが、機体の電磁シールドは、敵の攻撃で見る間に乱れていく。根本的に属性添加機の出力が違うのだろう。
不是の機体の顔が……その口の部分が可変して開き、まるで笑っているかのように見えた。
「理解したか? 俺は生まれ変わったんだ! 俺が支配者だ、俺こそが新しい神なんだよ!」
「ふざけるなっ!」
誠は必死に回避しながら、攻撃の僅かな間隙を縫って銃をもたげる。
発射した弾丸は、不是に向かって一直線に突き進んだ。
射撃にエネルギーを振り分けている不是の機体は、防御がおろそかになっているはず。
だが今にも着弾すると思われた瞬間、弾丸は音を立てて砕けていた。
不是の機体の前方、何も無かったはずの空間に、どす黒い盾のような物が現れていたのだ。
「防御壁!? 何だ、どこから……」
誠はそこで言葉を失った。
黒い殻のように硬質化したそれは、不是の機体の肩あたりから弧を描いて伸びていたのだ。まるで魔物が、巨大な翼で自らを守るようにだ。
明らかに機体に内蔵された機構ではない、歪で不規則な形状だった。
不是は勝ち誇ったように言い放つ。
「言っただろ出来損ない、俺が新しい神だ! 魔王の細胞が宿ったんだ、もう俺に勝てるヤツなんざいねえ!」
「ディアヌスの細胞を……取り込んだのか」
誠は全身の痛みに耐えながら、荒い呼吸で言葉を返す。
「そんな事して、無事に済むと思ってるのか」
「知るかよ、こんな宝があるのに、使わない方がおかしいだろうが! お前は指を咥えて見てろ、俺が新しい支配者になる! 何でもかなう、何でも作り出せるんだからな……!」
不是はあざ笑うように答えた。
「勿論まだ奥の手もあるぜ。お前のためにとってあるんだ、今からそれを使ってやろうか?」
「…………っ!」
誠はさすがに焦っていた。
とっておきの力。それがハッタリでないなら、今の自分のコンディションで、そして仲間達の状況で、防ぎきれるとは思えない。
(このままじゃ全滅する……!)
だが、誠が覚悟を決めかけたその時だった。
不是の機体の外部拡声器から、何者かの声が聞こえたのだ。
『……遊ぶな不是、貴様の任は細胞の奪取だ。筋書きを崩すな』
いかにも冷静そうな……けれどまだ歳若い男の声だった。
どこかで聞いた事があるような気もしたが、その時の誠は消耗が激しく、とても記憶の糸を辿るような余裕が無かった。
声は淡々と用件を告げる。
『さっさと戻れ。そろそろ女神どもがやって来るぞ』
「くそがっ……!」
不是は露骨に苛立った様子で舌打ちすると、仕方なく機体を浮上させる。それから配下に怒鳴りつけた。
「お前ら、さっさと引き上げるぞっ!」
数瞬の後、炎上する野営地の彼方から、航空輸送機が浮上するのが見えた。
上向きの力場で垂直上昇する輸送機は、下部に何かを懸架していた。
銀色の球のような格納容器……つまり細胞を隔離するため、急ごしらえで被せていたカプセルである。
容器からは、引きちぎられた幾本もの鋼線が垂れていたが、それが上向きの力場を浴びて、不気味に揺れ動いていた。
「いい所だったが、ここまでにしといてやるよ。続きは今度、俺がこの世界を支配してからだ」
不是の人型重機は見る間に高く舞い上がっていく。
配下の機体も次々飛び上がり、その後を追っていった。
「ま、待てっ……!」
誠は後を追おうとしたが、そこで再び激痛が襲った。
「ぐっ……!!!」
浮上しかけた機体が止まる。追撃どころではない。
隊員達も消耗が激しく、これ以上の戦闘は不可能だった。
禁忌の細胞を持ち去る強奪者を、為す術無く見送るしかなかった。
やがて遅れる事数分、女神の佐久夜姫が転移してきた時には、一帯には襲撃者の気配すら無かったのだ。
「……強敵だったみたいだけど、みんなよく戦ってくれたわ。おかげで死者が出なかったし、上出来から上ね」
佐久夜姫は誠達を気遣ってくれたが、その表情は曇っていた。
「臨時政府の方も、同時に襲われてたのよ。あっちは囮だったみたいだけど……念のためお姉ちゃんが見張ってるから」
「それならあっちは安心やな」
難波が言うと、佐久夜姫は困ったように首を振った。
「こっちを見ててって言ったのに、ほんとしょうがない女神なの」
カノンが遠慮がちに尋ねる。
「……あの、それってお姫様に会い辛いって事ですか?」
「そうなのよ。はっきりバラすと、会うと泣いちゃうから」
佐久夜姫はそこで肩をすくめる。
無理して少し微笑んでいるのは、誠達を和ませようとしてくれたのだろう。
だが事態はそんなひと時の安らぎすら許してくれなかった。
「……っ!」
何かに気付いた佐久夜姫が虚空に映像を映すのと、映った全神連の一員が叫ぶのが同時だった。
「もっ、申し上げますっ! 全国各地に同様の細胞が、一斉に発見されました! 判明しているだけで13……まだ増加する可能性があります! 目下全力で対応にあたっておりますが……」
「何ですって……!?」
さすがの女神も驚きを隠せない。
最早事態は後戻り出来ない所まで動き出していたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる